この2、3年の間で地震や山の噴火、台風、豪雨、豪雪など、至る地域で大規模な自然災害が 頻繁に起きています。
2015年のこの夏だけでも立て続けに大きな地震に見舞われました。
8月26日 宮崎県小林市 震度4
9月12日 東京都内 震度5弱
9月12日 北海道の日高地方 震度4
9月14日 北海道の浦幌町 震度4
震度4以上の大きな地震が直近3週間で4件と集中して起きており、近いうちに巨大地震が起こるのでは?と不安を募らせる人も多いと思います。
また2015年6月には政府と損害保険各社による「地震保険料の引き上げ」が既に発表されています。
2017年から3段階に分けて値上げされ、全国平均でおよそ19%、上限でなんと50%も引き上げられる予定です。
でもこの地震保険「保険料が高い割には補償額が少ない」という不満の声が多いことをご存知でしたか?
高い保険料まで払って地震保険に入る必要があるのか?現に加入躊躇する人も少なくないようですが、地震保険の内容について十分な知識を得た上で判断したいもの。
そこで今回は、地震保険の概要と必要性、自分でできる対策などについてお話ししたいと思います。
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地震保険値上げの理由
地震保険は2014年7月に保険料の引き上げられたばかりですが、さらに2016年秋から段階的に値上げされることになりました。
値上げの理由はいくつかありますが、主に以下の3つが挙げられます。
①東日本体震災以降に加入者が増加
②東日本体震災以降の保険金支払い額の増加(1兆2,000億円超)で準備金が半減したため
③2014年、政府の地震調査委員会が首都直下地震の発生確率を大幅に引き上げたため
東日本体震災以降、地震保険への高い関心とともに加入者が増加する中、値上げは保険金の支払い余力を残しておくため、これから起こりうる巨大地震に伴う保険金の支払いに備えるための措置だと言われていいます。
そもそも地震保険って?補償は?
地震保険とは「地震によって損害を受けた建物や家財に対して補償金が支払われる保険」です。補償金は各保険会社と国が責任分担をし支払われます。
そして保険料は全国一律ではありません。地震が起きやすい地域はそうでない地域よりも高めで、建物の構造によっても変わります。たとえばマンションよりも崩壊性が高い木造住宅の方が保険料は当然高くなります。地震による損害リスクが大きいほど保険料が高くなるというしくみです。
ちなみに「地震保険料」が最も高い都道府県は、東京都・神奈川県・静岡県・千葉県・愛知県・三重県・和歌山県の7つです。
地震保険の加入条件と保険料
また、地震保険にはいくつかの加入条件や制限があります。
【加入条件】
・火災保険にセットで加入すること
地震保険のみの契約はできません。
すでに火災保険に入っている場合は地震保険を追加することができます。
【加入できる金額】
・火災保険金額の30~50%まで
・建物と家財の2つに分類されているので別々に設定する必要がある
建物 5,000万円が限度
家財 1,000万円が限度
例えば火災保険金額が3,000万円の場合、地震保険は900~1,500万円の範囲内でしか設定できないので、例えば設定額が1,500万円で地震で建物が全壊しても補償額は満額でも1,500万円しか下りません。
地震保険だけで元通りに建て直すことはできないのです。地震保険はあくまで被災後の生活の立て直し費用と考えた方がよさそうですね。
また、その家に住居として使用していることも加入条件ですので、転勤などで長期間家を空けている場合や別荘などは加入することができません。
【保険料】
保険料は損害保険料率算出機構が都道府県別で建物の構造(①鉄骨・コンクリート造か②木造か)によって「保険料率」を設定しています。
例えば東京都の保険料率(保険金額1,000円1年間につき)
①鉄骨・コンクリート造の場合 保険料率2.02
②木造の場合 保険料率3.26
【火災保険3,000万円、地震保険を最高の1,500万円に設定した場合の保険料】
現在は
①鉄骨・コンクリート造の場合 2.02×15,000=30,300円の保険料
②木造の場合 3.26×15,000=48,900円の保険料
来年2016年の秋以降最大50%の上げ幅で値上げされると・・・
①鉄骨・コンクリート造 2.02×15,000×50%=45,450円の保険料
値上げ後は15,150円もUP
②木造 3.26×15,000×50%=73,350円の保険料で
値上げ後は24,450円もUPすることになります。
このように高い保険料のわりに、家を建て直す補償額には到底届かないのが地震保険ですが、加えて損害区分も現在の「3段階から4段階へ」変更になります。
損害区分3段階から4段階変更で何が変わる?
地震保険料の値上がりに伴い損害区分もこれまでの3段階から4段階へ改正されることになりました。
| 一部損 | 半損 | 全損 |
現在の3区分 | 5% | 50% | 100% |
26年秋以降の4区分 |
5% | 小半損 | 大半損 |
100% |
30% | 60% |
損害の割合 | 3~20% | 21~40% | 41~50% | 100% |
変更点は「半損」がさらに
「小半損」と「大半損」に区分されたことです。
例えば1,500万円の地震保険に入っていた場合、建物の損害の割合が30%だとすると、現状では50%の750万の補償を受けることができますが、変更後の保証額は450万円と300万円も少なくなってしまうのです。
逆に損害割合が50%だと現状の750万円よりも150万円多い900万円の補償額がもらえます。
実はこの損害割合、保険会社が独自に査定するものですが被害状況に応じたきめ細かい補償体制に整備されるようなのです。
地震保険には補償されないものがある
また、地震保険には補償されないものがあるので、しっかりと把握しておく必要があります。
【補償されるもの】
○ 居住用の建物
○ 門、塀、物置、石垣、車庫
○ 家電製品や棚、テーブル
○ 地震による山崩れ
○ 建物や家財の埋没
○ 噴火による建物や家財の焼失
【補償されないもの】
× 自動車
× 30万円を超える貴金属
× 30万円を超える骨董品
× 有価証券(小切手・商品券)
補償されるものは主に生活の維持に必要なものに限られるということですね。
車の水没は車両保険に危険補償特約を付帯すればカバーできます。
地震保険は入るべき?
このように補償対象や損害の度合によって地震保険の補償料には大きな開きがあるのです。また火災保険や傷害保険においては地震が原因の火災は怪我は対象外。(ただし特約を付帯すればカバーできます)万が一のとき、補償料が下りずに大変な思いをしないように、どんな補償があるのか今一度確認しておく必要があります。
最終的には「補償される額」と「支払う保険料」とのバランスを考え、本当に必要かどうかじっくり考えて判断することが重要です。
地震保険の保険料を抑えるには
保険料の高い地震保険ですが、この保険料を少しでも安くする方法はいくつかあります。
1.長期契約による保険料の割引を利用する
地震保険には最長5年までの長期契約をすることができます。例えば5年契約の場合10%程度の割引となるため保険料をおさえることができます。
2.値上げ前に契約をする
地震保険は2017年の秋以降3段階に分けて保険料の値上げが実施されます。対策として値上げ前になるべく長期(最長5年)で契約を済ませておくと保険料の節約ができます。
また火災保険でも台風などの災害で支払う保険料が増加したため、2015年10月より保険料率が改定、実質値上げされることになりました。加えて最長36年だった契約期間も最長10年に改正され10年後を超える契約が廃止になります。これも2015年9月中に長期契約へ切り替えておけば保険料の負担を軽くすることができます。
3.火災保険の補償内容を見直す
地震保険料は建物の構造と居住地(都道府県)で決まりますが、保険料は同じ構造と都道府県であればみな同一。違うのは火災保険の方で、いろいろな補償がパックになっているものがほとんどです。中には不要な補償にも支払っている場合があるため、そこを削ってその分を地震保険料に充てると負担が少なくて済みます。
4.地震保障保険との併用
本来、地震保険は火災保険に付帯するもので、単体で加入することはできません。
ですが、東日本大震災以降、地震保険の需要の高まりを受け民間会社が提供する「地震保障保険」という保険も登場し、注目を集めています。
これまでの地震保険ではできなかった単独加入ができる上、支払い基準は損害区分によって決まるのではなく、世帯人数による定額制で支払われるため、一定の保険金が受取れるというメリットもあります。(現時点では地震保険料控除の対象外ですが今後見直されるかもしれません)
地震保障保険のパイオニアであるSBI小額短期保険「Resta(リスタ)」は月額保険料が1,210円からの加入ができ、地震保険や共済とも併用することができます。補償額は最大300~900万円の5タイプから選択する方式で、地震保険の足りない部分を補えるためおすすめです。
地震保険は家の構造や地域によってちがいます。
決して安い保険料ではありませんが加入しているのといないのとでは安心感が違います。
また建築年割引や耐震等級割引なども適用されますので組み合わせ次第で保険料を安く抑えることができます。
特に地震の危険性が高い東京・神奈川・静岡・東海地方に住んでいる方は今一度住宅の備えを見直してみる必要がありそうですね。
いずれは来るだろうといわれている巨大地震、一人一人が万全の備えをしておきたいものです。