「来年子供が高校卒業するのだけど大学に行きたいって言っているのよ」
「家にはお金がないって言っているのに…」
「行かせたいのは山々だけど…先立つものがねぇ」
「お父さんに夜もアルバイトに行って貰おうかしら」
おやおや、なにやら気が重い話が聞こえてきましたね。
どうも高校を操業する子供の進路についてお母さんが愚痴を言っているようです。
確かに現在の日本は高校の無償化により、本来小学校から中学校までが義務教育だったのが現在では高校進学は当たり前、さらに大学や短大、専門学校への進学も普通のことになっています。
ちょっと堅い話ですが日本は日本国憲法の元で民主主義を取り入れた「立憲民主主義」国家であり、その中で人権が保護されています。
今回お話しする奨学金制度は大きく考えると人権の中の教育権に関係すること。
高校からさらに進学したい子供に教育の機会を与えて未来を切り開く制度です。
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今や高校からの進学は当たり前の時代に突入した
この立憲民主主義は「例え民主主義の多数決の論理であっても憲法で定められている権利侵害できない」との考え方で成り立っており、多数決であっても人権を侵害できません。
話が難しくなってしまいしたが、要は「日本では憲法で定められている人権をたとえ多数決であっても守らなくちゃ駄目よ!」と言う話です。
そこで問題になるのが憲法で定められている人権。
「生存権」や「生命、自由及び幸福追求権」は生きる自由と幸せを追求する権利。
「法の下の平等権」は公平な裁判を受けられる権利。
さらに「財産権」、「表現の自由」「信教の自由」など沢山の権利が認められています。
その中でも重要な権利が「教育を受ける権利(教育権)」。
これは子供に公平な教育を保障する権利。憲法26条では「必要な学習をする権利を有すること」「自ら学習できない子供は、その学習要求を充足させるための教育を…要求する権利」とあります。
本来の教育権は義務教育の小学校から中学校を想定していますが、現在では高校無償化や少子化の影響もあり高校はもはや教育権の範疇かもしれません。
そして大学や短大、専門学校への進学。これらは高校と違い無償ではありませんが、少子化の影響もあり進学率が増加しているのは事実です。
そこで重要な働きをするのが「奨学金」。
無料化されていない大学や短大、専門学校へ進学させるためには教育費用が必要です。
そうなると家庭の負担は増し、場合によっては生活に支障が出ることで、進学を諦めなくてはいけない事態も出てきます。
そこで国は憲法の精神から公的な奨学金で進学をサポートしているのです。
しかし奨学金を明確に理解せずに利用している人も少なくありません。
近年では奨学金のルールを理解していないことからのトラブルも増加傾向にあります。
そこで「独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)」が行っている奨学金制度について解説します。
奨学金は税金であり子供が初めて体験する借金行為
ファイナンシャルプランナーの私は時々奨学金についての質問を受けることがあります。
「奨学金ってどのような制度なの?」
「返済はいつから行う必要があるの?」
「返す必要はあるの?」
「返済できなかったらどうなるの?」
そこでまず感じるのが親の奨学金に対する認識を甘さ。
奨学金は国がJASSOを経由して税金で行っている事業で、あくまで返済を前提とした借金です。
そして契約を行うのは親ではなく子供。そう奨学金は高校を卒業する18歳の子供が契約する「金銭借入契約」と考えて下さい。
親としては国の制度だから甘く考えてしまうのは仕方がないことですが、「借りたお金は契約通りに返済する」この当たり前のことが前提となっている制度なので、返済ができない場合は大きなペナルティが課せられることに。
税金が投入されている奨学金。それだけに責任を持って活用することが大切です。
奨学金の種類は大きく2種類あることを理解しよう
JASSOが行う奨学金制度には大きく2つの種類があります。
■ 貸与奨学金
■ 給付奨学金
貸与奨学金は奨学金を貸付ける方式で、将来返済義務が生じます。その意味では借金と同じ形式だと思って下さい。
反対に給付奨学金は返済義務がない奨学金で、経済的な理由で能力と意欲のある学生が進学を断念しないように平成29年から始められた新しい奨学金制度です。
それではこの2種類の奨学金を詳しく見てみましょう。
貸与奨学金にはさらに利息負担の有/無の2種類がある
貸与奨学金は借りた奨学金の全額を将来的に返済するのが原則。貸与奨学金はさらに2種類に分かれており、利息の有無に違いがあります。
■ 第一種奨学金:利息負担なし
■ 第二種奨学金:利息負担あり
第一種奨学金は利息負担がありません。
つまり借りた奨学金の合計を返済するだけでよく、400万円を4年間で借りた場合、返済も400万円の分割返済でOKです。
返済期間を20年としたら毎月の返済額は約16,666円ですね。
■ 400万円÷240ヶ月(20年)=16,666円(最終月16,826円)
次に第二種奨学金ですが、これは返済時に定められた利息を加える必要があります。
利息ですが奨学金貸与中は無利息で、返済が開始されてからかかります。
つまり大学等に在籍している時点では利息は必要なく、返済が開始されてから返済額に利率が加算されるのです。
第二種奨学金の利率は「利率固定方式」と「利率見直し方式」があり、奨学金を申込む時点で選択する必要がありますが、進学時に変更も可能なので状況の変化によって選択しましょう。
利率固定方式は決められた利率が返済終了まで変わらない方式で住宅ローンの固定金利と同じですね。利率見直し方式は5年毎に金利の見直しを行いますので、金利が上昇したり下降したりする可能性を考慮しなくてはいけません。
最近の金利動向ですが平成30年4月以降の金利を見てみましょう。
【利息固定方式】
■ 平成30年4月:0.22%
■ 平成30年5月:0.23%
■ 平成30年6月:0.23%
■ 平成30年7月:0.22%
■ 平成30年8月:0.33%
【利息見直し方式】
■ 平成30年4月:0.01%
■ 平成30年5月:0.01%
■ 平成30年6月:0.01%
■ 平成30年7月:0.01%
■ 平成30年8月:0.01%
利息見直し方式は原則5年間ごとに金利を変更するので変化はありませんが、利息固定方式は若干ながら上昇しているのが見えてきます。
これは日銀のマイナス金利政策が終了する思惑から、市場金利が上昇してきているのも要因ですね。
つまり利息見直し方式も次回の見直しで大幅に上昇する可能性があります。
第二種奨学金において利率の選択は将来の返済において大きなポイントになります。
現時点で利息固定方式が高くなっていますが、返済は15年間から20年間もかかり返済が開始されるのは大学を卒業する4年後です。
つまり4年先から24年先の金融状況を予想する必要があります。
そして現在の固定金利と返済が始まる4年後~24年後の見直し金利を予想しないと答えが出てこないのですね。
「安いから利息見直し方式でいいや!」
と安易な判断は禁物。
専門家に相談するなどよく検討してから選択するようにしましょう。
それでは第二種奨学金で計算した400万円を借りたケースで、固定金利方式を選択した場合の返済額を計算してみましょう。
■ 固定金利:0.33%
■ 返済期間:20年(240ヶ月)
■ 毎月の返済額:17,251円(最終17,367円)
■ 合計返済額:4,140,356円
第一種奨学金では利息がないので返済は400万円でしたが、第二種の固定金利では14万円程度の利息が付加されるのが解りますよね。
ただしこれはあくまで金利が0.33%のケース。金利が上昇すると利息も増えてきますので覚えておきましょう。
第二種奨学金の金利見通しは上昇傾向と想定される
それではこれから将来の第二種奨学金の金利はどうなるのでしょうか?
これははっきり言って誰も解りません。現在の日本の状況は経済対策からマイナス金利瀬策を取り入れており、この低金利政策は転換期を迎えています。
アメリカでは景気の回復から既に政策金利の上昇が始まっており、日本も近い将来マイナス金利政策を止めて金利の上昇を始めるでしょう。
奨学金の金利は法律で最大3.0%までとされていることから、理論的にはここまで上昇する可能性はあります。
3.0%まで上昇すると今の固定金利の約9倍なので、利息も9倍になってしまいますよね。
上で説明した400万円借入したケースでは138万円もの利息を返済しなくてはいけません。
しかし急激にそこまで上がることは考えられません。しかしこれからは少しずつ金利が上昇すると想定されていることを忘れないで下さいね。
ファイナンシャルプランナーとしての個人的な意見ですが、現在の状況下を前提にすると「金利の低い現在では固定金利が有利かな?」と思っています。
利息見直し方式を選択する場合は、よく考えて将来の金利上昇のリスクを理解するようにして下さい。
第一種奨学金と第二種奨学金の貸与額
利息がない第一種奨学金と第二種奨学金ですが、どちらがよいかを考えると無利子がいいのは当たり前。しかしこの2つの奨学金には利用できる貸与額と申込みに条件が付けられています。
【第一種奨学金の貸与額(最高月額)】
■ 国公立大学:45,000円(自宅通学)、51,000円(自宅外通学)
■ 私立大学:54,000円(自宅通学)、64,000円(自宅外通学)
■ 国公立短大、専修、高専:45,000円(自宅通学)、51,000円(自宅外通学)
■ 私立短大、専修、高専:53,000円(自宅通学)、60,000円(自宅外通学)
【第二種奨学金の貸与額(最高月額)】
■ 大学、短大、専修、高専:120,000円
ここで紹介したのは各奨学金の月額の最高額です。
つまり国公立大学で自宅通学の場合、第一種奨学金では最大で45,000円までが利用できます。
また私立では54,000円(自宅通学)が最大です。
自宅通学と自宅外通学では下宿代などの費用がかかることから、若干の差をつけていることが解りますよね。
最高月額まで必要ない場合は、2万円から1万円単位で利用できますので、必要な金額を申込むことができます。
第二種奨学金では学校ごとの区別はなく、原則として2万円から12万円まで1万円単位で申込むことができます。
ただし金額が増えると返済も大きくなるので、必要な金額を計算して最小限で利用することを心掛けて下さい。
第一種奨学金では足りない場合は併用も可能
説明した通り第一種奨学金の最高月額は国公立大学で45,000~51,000円。
実際にはこの金額で学費が足りないケースが少なくありません。
そこで奨学金が足りない場合には、第一種奨学金と第二種奨学金を併用することが認められています。
例えばアパートを借りて大学へ通っているAさんの場合…
■ 第一種奨学金:51,000円(毎月)
■ 第二種奨学金:30,000円(毎月)
を奨学金として借りることにしました。4年間の借入れは…
■ 第一種奨学金:2,448,000円
■ 第二種奨学金:1,440,000円
■ 合計:3,888,000円
Aさんが返済しなくてはならない奨学金は合計で3,888,000円ですが、その中の2,448,000円は無利子で、1,440,000円のみ利子が加算されます。
奨学金を併用する場合には無利子の第一種奨学金を多くすることがポイントです。
貸与奨学金の申込条件は種類によって違いがある
貸与型奨学金の第一種と第二種、併用では申込みに条件が付けられています。
【第一種奨学金の申込み目安】
■ 学力基準:5段階評価で3.5以上
■ 世帯収入(会社員):747万円以下
■ 世帯収入(個人事業):349万円以下
【第二種奨学金の申込み目安】
■ 学力基準:平均水準以上であるまたは意欲のある人
■ 世帯収入(会社員):1,100万円以下
■ 世帯収入(個人事業):692万円以下
【併用奨学金の申込み目安】
■ 学力基準:5段階評価で3.5以上
■ 世帯収入(会社員):686万円以下
■ 世帯収入(個人事業):306万円以下
第一種奨学金は利息が付かないことから条件が厳しくなっており、学力で平均3.5以上(5段階)の評価が必要です。
しかし第二種では意欲のある人でも大丈夫なので、原則誰でも申込むことができることに。
ただし第一種でも家計支持者が住民税非課税世帯の場合、条件が第二種と同程度の学力基準でも申込みできますので、該当する場合は学校に相談してみましょう。
国が応援するから勉強頑張って!返済不要の給付奨学金
家庭の経済状況で進学を諦める子供を助けるために平成29年から開始されたのが、給付奨学金制度。
この制度は特に優れた生徒で進学の意思や目的があるのに、家庭の経済的な理由により諦めなくてはいけない生徒を助けるために開始されました。
給付奨学金は返済の必要のない奨学金です。
そう…「学費をあげる」のです。
ただしこの制度を利用するには一定の条件があり、誰もが利用できるものではありません。
【給付奨学金の概要と条件】
■ 対象:大学、短大、専修、高専4年に進級を予定している
■ 家計要件:家計支持者が住民税非課税かつ資産案件を満たす。または生活保護受給中
■ 社会養護:社会的養護が必要な人(18歳時点で児童養護施設、または里親で養育)
■ 給付額:2万円~4万円(月額)
■ 一時金:社会的養護が必要な人には入学時に24万円支給
給付奨学金の申込条件は厳しく、一般の家庭では申込むことができません。
生活保護世帯や社会的養護が必要な人向けの奨学金だと思って下さい。
また給付額が最高で4万円なので学費として不足する場合があります。
その場合は貸与奨学金と併用することもできますので、申込時に相談しましょう。
奨学金の申込み方法は予約採用が原則
奨学金の申込みは「予約採用」が原則で、各高校で3年生の4月~5月を第1回、10月を第2回、翌年1月を予備回として行われます。つまり大学を受験する前に奨学金の申込みを行う必要があります。
そうして奨学金が認められると「予約候補者決定通知」が高校へ送られてきます。
特に給付奨学金は第1回でしか申込みができないので、該当する人は絶対に忘れないで申込むようにして下さい。
奨学金の申込みは高校の担当者と通す必要があり、直接JASSOに申込むことはできません。
必ず高校を通すようにしましょう。
また大学等に進学後に緊急の事態で奨学金が必要になるケースがあります。
例えば親の事故、病気やリストラで収入が減少した場合ですが、このような事態が起きたら各大学の学生課や厚生課で「緊急・応急採用の奨学金」を申込めます。
この場合でも進学している大学、短大、専修、高専を通すことを忘れないようにして下さい。
奨学金で必要な保証人と制度保証の違いは何か?
奨学金を申込むには原則として「人的保証」が必要です。保証人は「連帯保証人」1名と「保証人」1名の合計2名が必要で、イメージとしては連帯保証人が両親のどちらか、保証人は叔父さんなど親戚が理想です。
奨学金はそれを借りる利用者(学生)に対する融資なので、債務者はあくまで学生です。
将来大人になった学生が返済を開始しますが、返済できない場合は連帯保証人が返済しなくてはなりません。
連帯保証人は「連帯して債務を返済する義務がある」ので、債務者が「いる」「いない」に関わらず返済の義務があります。
また保証人は連帯責任がないので、債務者や連帯保証人が返済できなくなった場合にのみ返済義務が生じます。
このように奨学金の申込みには保証人を2名付ける必要があるのですが、なかなか見つからない場合も多いでしょう。
そこで「機関保証」を選択することも可能です。
機関保証は「公共財団 日本国際教育支援協会」が保証人の代わりに有償で保証を請け負う制度。
機関保証を利用する場合は奨学金の申込みと同時に保証委託を申込み、採用されると機関保証が保証人の代わりになります。
機関保証に支払う保証料は毎月の奨学金の2.5%~3.5%程度で、奨学金の種類と返済期間によって違いが出てきます。
例えば第一種奨学金の月額2万円では、毎月500円程度が保証料の目安です。
このケースの場合では、毎月2万円の奨学金として振り込まれますが、実際に振り込まれるのは19,500円で保証料が差し引かれて振り込まれます。
機関保証料は毎月の奨学金から差し引かれる…ここは注意して覚えておきましょう。
奨学金が振り込まれるのは入学以後…だから入学金には利用不可
奨学金のトラブルで最も多いのは奨学金がスタートする時期。大学等に合格するとまず必要なのが「入学金」や「前期授業料」ですよね。
これらは入学式の前に支払うことが必要ですが、実は奨学金の支給は入学後に開始されます。
つまり入学金や前期の授業料に奨学金を充てることはできないのです。
これを知らずに資金繰りで困ってしまうことが多くクレームやトラブルになるのですが、奨学金はあくまで入学したことを確認してからスタートする制度です。
大学などに入学して進学届を提出することで、奨学金の振り込みが始まります。
早いケースで4月、進学届を遅れて提出すると5月スタートになることもあります。
奨学金には入学時に支払われる「入学時特別増額貸与奨学金」と呼ばれる1回目の支給日に一定額を加算して貸与する増額奨学金があります。
増額する額は10万円~50万円の中から選択できますが、実際には入学金や入学準備金に使用することは不可能です。
その理由は入学時特別増額貸与奨学金も入学後の第1回目の支給日(4月後半~5月後半)にまとめて入金されるからで、入学金の支払いには到底間に合わないからです。
「奨学金は入学後からスタートするので入学金には利用できない」
ここは重要なポイントなので覚えておきましょう。
奨学金が入学金に利用できないのならどうすればいいの?
奨学金は採用候補者決定通知が発行され受け取れることが決定しました。しかし支給開始は入学後なので入学金や前期授業料の支払いに間に合わない。このような状況の場合はどうしたらよいのでしょうか?
入学までにかかる費用のサポートとしてはいくつか考えられますが、その中でもオススメできる方法を紹介します。
【国の教育ローンを利用する】
日本政策金融公庫が行っている「教育一般貸付(国の教育ローン)」は、最高350万円まで低金利で借入することができます。
金利は現在1.76%の固定金利で、申し込みから約20日で入金されます。
インターネットからでも申し込めるので、入学に必要な金額を借りるのにオススメです。
ただし奨学金と違い国の教育ローンは申込者(親)の借入れになるので、返済は借入れの翌月から開始されます。(返済猶予期間はなし)
【入学時特別増額貸与奨学金を担保にする】
奨学金を申込む時に入学時特別増額貸与奨学金を10万円~50万円まで申込めますが、実際の振り込みは入学後。
そこでこの入学時特別増額貸与奨学金を担保に融資を受ける方法があります。
それが労働金庫の「入学時必要資金融資(つなぎ融資)」。
これは国の教育ローンが利用できない場合で、入学時特別増額貸与奨学金の支給が決定した人が利用できる融資。
入学時特別増額貸与奨学金を担保に原則として同額を借入れすることができます。
つなぎ融資で借入れたお金は、入学時特別増額貸与奨学金が支給された時点で返済すれば大きな利息負担もありません。
借入れには条件がありますので気になる人は労働金庫に相談してみましょう。
【生活福祉資金貸付】
各都道府県市町村の社会福祉協議会が行っている融資が「生活福祉資金貸付」。これは低所得者や生活保護者に対する支援が目的の融資制度です。
その中に「教育支援資金」の融資もあり50万円までの借入れが低金利や無利息でできます。
【母子父子寡婦福祉資金貸付金】
20歳未満の子供を扶養している配偶者のいない母子父子寡婦に貸付けられる資金制度が「母子父子寡婦福祉資金貸付金」。
各都道府県市町村の福祉窓口で受付けられており、就学支度資金として38万円~59万円を借入れることができます。
進学前には沢山のお金が必要になります。
「受験費用」「交通費」「宿泊代」「施設使用料」「入学金」「前期授業料」…など考えただけでもため息が出てしまいますよね。
奨学金は入学以後にしか支給されないので、様々な融資を利用して資金に困らないように早めに手配することが重要です。
また入学後に入学時特別増額貸与奨学金を第1回目の奨学金と共に受け取った場合、そのお金で金利の高い教育ローンを返済することを忘れてはいけません。
奨学金の返済が始まるのは卒業して7ヶ月後から
奨学金の返済は貸与終了後の翌月から数えて7ヶ月後の10月から始まります。(卒業を3月として)
返済額は奨学金の総額により最長で20年間で、毎月指定口座から差し引かれることに。
返済方式は「定額変換方式」に加えて「所得連動返還方式」があり、これは毎年の所得に応じて返済額が変わる新しい返済方式です。
返済方式は奨学金の申込み時に選択しますが、後日進学届で変更することも可能です。
よく考えて選択するようにしましょう。
奨学金のルールを破ると支給の中止や即時返済も
奨学金を借りることは原則として学業をしっかり行うことが条件です。
例えば出席日数が足りなかったり、成績が悪く留年してしまったりした場合、真面目に勉強していないと判断されて奨学金を打切られてしまうことがあります。
またそのような場合にはペナルティとして即時返金を求められ、それまで借入れした奨学金の全額を返済しなくてはいけません。
これは貸与奨学金だけでなく給付奨学金も同様。
卒業まで順調に進めば返済の必要ありませんが、留年などの問題が発覚すると奨学金の停止と全額返済を求められることになります。
また奨学金には毎年の報告などのルールがあり、それを怠ることでも同様の処置が取られることになるでしょう。
「それなら進学先での成績が悪かったら奨学金を打切られてしまうの?」
そんなに怖がることはありません。
特に成績が優秀である必要はなく、真面目に取り組んでいるかがポイントなので必要以上に気にすることはありません。
奨学金を利用する際にはルールを破らないようにして、普通に学校に通い勉強すればよいのです。
困った!返済ができなくなったらどうなるの?
奨学金は税金で賄われており、給付奨学金以外は返済しなくてはいけません。
しかし現状でも一部の人に未払いが起きており、最近では社会問題の一つに上げられています。
返済が滞ってしまった場合のケースは、保証の形態で違いが出ます。
【人的保証のケース】
返済が停止した時点で連帯保証人に対して返済を請求します。
さらに連帯保証人が返済を行わない場合には、保証人に対しても請求が行くことになります。
保証人に法的な措置が取られる場合もありますので安易に考えてはいけません。
【機関保証のケース】
JASSOからの一定の督促を無視して支払いが行われない場合、機関保証会社が債務を負担して債権がJASSOから機関保証会社へ移管されます。
以降は機関保証会社との返済交渉に移りますが、法的措置を取られることから債務整理が必要になることもあります。
返済ができなくなったらまずはJASSOに相談するのが必須。
電話がかかってきても無視をしたり、督促状を読まなかったりすると取り返しの付かないことになってしまいます。
金融ブラックとして登録されることになりますので、必ずJASSOに連絡をとって返済計画の変更などの対策を考えて貰うようにしましょう。
各大学の学費サポートを検討することも大切
各大学や専修専門学校では入学後の学費サポートとして、授業料の免除など独自の奨学生制度を行っていることがあります。
例えばある国立大学では保護者の所得によって授業料が安くなったり、免除されたりします。また私立大学では「給費生試験」により、最大で4年間合計800万円の学費を給付する大学もあります。
各大学で実施されている授業料免除や大学の奨学金制度は、各大学のホームページなどに記載されているので内容を確認して条件にある場合は申込みや試験を受けることも大切です。
返済は長いから…覚悟して奨学金を利用する
奨学金の返済は最長で20年。
22歳で大学を卒業したら返済が終わるのは42歳です。その頃には結婚もしていて子供の受験が始まっているかもしれません。
そのくらい20年とは長い期間です。最近では奨学金があることで結婚が破談になったり、返済が行き詰まったりする話をきくことがあります。
長い人生の中の20年間。
借りる時は18歳の子供かもしれませんが、返済を開始するのは20歳を過ぎた大人になってからです。
長い返済を覚悟して奨学金を利用して下さい。
ライフプランを考えて奨学金を利用してはどうですか?
ライフプランとはファンナンシャルプランナーがよく利用する手法で、自分の将来設計を組み立てる作業です。
【ライフプランの一例】
・22歳で卒業/就職(年収300万円)
・奨学金返済開始(20年:400万円)
・26歳一時金で奨学金100万円返済
・28歳で結婚(年収500万円)
・29歳で車の購入
・30歳で第一子誕生
・38歳で自宅購入
・続く…
このように自分の将来設計を組み立てて、そこに奨学金の返済を加えるのです。
ライフプランはこれからの人生設計を組み立てるのに重要。
将来を考えて活用してみてはいかがでしょうか?
自分への投資が奨学金…絶対に無駄にしてはいけない
奨学金の原資は税金です。つまり国民が若者の学業を応援する制度で、返済された奨学金はそのまま次の世代の少額に組み込まれます。
その意味では奨学金はぐるぐると回っており、次の世代にバトンタッチされる資金だと思って下さい。
厚生労働省の「平成29年賃金構造基本統計調査」では大学卒と高校卒では50歳前半で約20万円の賃金差があります。
月額なので年収では240万円もの差があることになります。ボーナスを加えるとさらに差が開く可能性も。
もちろん高校卒であっても高賃金で働いている人や、特殊技能を持っている人は沢山います。
これはあくまで統計上の話であって誰もが該当する話ではありません。
しかし興味のある分野があり大学などで勉強したり資格を取得したりしたい場合は、「自分への投資」として奨学金を利用して進学することも大切です。
ただし絶対に無駄にしないようにしたいですね。
奨学金は親の節約のためでなく子供の未来を開くツール
保護者の中には奨学金は子供が返済するものなので、一種の節約行為と考えている人も少なくありません。
確かに奨学金は保護者の負担を最大限に減らしてこどもを進学させることができます。
しかし全てを奨学金に押し付けると返済で困るのは子供です。
そのためには必要最低限の金額だけを奨学金に頼るのが理想と言えるでしょう。
【奨学金を利用した就学モデル】
■ 親からの仕送り:5万円(月額)
■ アルバイト代:6万円(月額)
■ 自分の貯金取り崩し:1万円(月額)
■ 奨学金:3万円(月額)
■ 合計15万円(月額)
このモデルでは親からの仕送りで5万円があれば、奨学金は3万円で済み4年間で144万円の借入になります。
144万円であれば繰り上げ返済を利用すれば、10年もかからずに返済可能ですよね。
このように保護者も努力してそれでも届かない金額について、最終補填額として奨学金を利用するのが本来の姿ではないでしょうか?
奨学金は子供の未来を切り開くツールです。
ただし無理をすると未来を破壊してしまう危険性もあることを忘れてはいけません。
上手に利用して明るい未来を築き上げましょう。
老後に備えてお金の知識を身につけよう!
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奨学金制度が変わる!?変更後によるメリット・デメリットについて言及!
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