寄附をして自分の選ぶ返礼品までもらえるふるさと納税が流行ってますね。
年収が高ければ高いほど多くの金額が寄附できますが、”食費はほとんどふるさと納税でまかなっている”なんて人も多いようです。
どれだけ高額納税者なのでしょうか・・・うらやましい限りですね。
私
ふるさと納税は数年前まで高還元率がウリだったため、制度に対する批判の声も多く聞かれました。
現在は見直し案が適用され寄附額の3割を超える返礼品はNGとなっています。
その結果以前に比べお得さか軽減してしまったと言われていますが、この「見直し案制度」がもたらしているメリット・デメリットを紹介したいと思います。
当初は盛り上がらなかった、ふるさと納税
ふるさと納税については当サイト節約大全でもこれまでに何度も取りあげてきました。
[SaLinkDesigner id=7290 layout=horizontal target=none]https://ecoeco-taizen.com/furusatonozei/7697.html[/SaLinkDesigner]
同制度を簡単に一言で説明すると、
【自分が応援したい自治体に寄附をすると、自己負担金2,000円を差し引いた金額が住民税から控除・減額される制度】
というものです。
地域活性化をうながすために2008年にスタートしたふるさと納税ですが、実は開始当初はあまり盛り上がっていませんでした。
しかし、近年多くの自治体が寄附のお礼として豪華な返礼品を贈るようになってから人気が爆発したわけですね。
2015年度には寄附額は全国で1,653億円にものぼり、なんと前年度比4倍。
制度が始まった2008年度の20倍以上にまで膨れ上がっています。
やはり実質2,000円を負担するだけで寄附先の特産物や家電、金券などをもらえるとあって、「そりゃ利用しないのは損だよね!」というわけです。
ふるさと納税がもたらしたメリット
ふるさと納税が具体的にどんなメリットをもたらしてるのか実際に見てみましょう。
魅力的な返礼品がもらえてうれしい
まず納税者にとって一番大きなメリットが特産品など返礼品をもらえるという点。
今までは住んでいる自治体にしか納めるしかなかった住民税(の一部)を、寄附という形で故郷など自分の好きな自治体に納めることができるようになり、さらにお礼として返礼品までもらえるようになったわけです。
実質的な負担はたった2,000円だけになるので、やはり確実にお得ですよね。
自治体の税収アップ
制度によって寄附をうまく集められた場合、自治体側にもメリットがあります。
2017年度のふるさと納税受入額データになりますが
【1位】 大阪府泉佐野市 約135億円
【2位】 宮崎県都農町 約79億円
【3位】 宮崎県都城市 約74億円
【4位】 佐賀県みやき町 約72億円
【5位】 佐賀県上峰町 約66億円
普通に考えると、地方は税収面では都市部より不利になりがち。
ですがふるさと納税制度によって特産物を返礼品をとして返すことで確実に税収額を増やすことができています。
集めた寄附金を財源に、小学校の給食や医療費を無償化するなど取り組んでいる自治体も多いようです。
名産品や自治体の宣伝になった
たくさんの寄附を集めることができた自治体は、税収がアップしただけでなく特産品や自治体自体の宣伝にもつながっているようです。
返礼品としてもらった特産物が美味しくて実際に自治体に遊びに行く人や、寄附を毎年リピートしている・・・なんて方もたくさん。
また「ふるさと納税で嬉しい返礼品がもらえる自治体」とメディアに取り上げられ、その結果寄附が殺到した!自治体もたくさんあります。
寄附で認定子ども園を無料化し、人口が増えた自治体も
寄附先として全国でも屈指の人気を誇る北海道の上士幌町では、ふるさと納税による寄附を財源にして認定子ども園を一部無料化して開設しました。
すると、それまで減少の一途をたどっていた同町の人口が増加に転じたそうです。
これなど、同制度のそもそもの目的である“地方活性化”に結びついた最たる例のひとつといって良いでしょう。
かたやデメリットも・・・
上記のように納税者や自治体にはさまざまなメリットをもたらしていますが、かたやデメリットとなる部分もあり批判の対象となっています。
それぞれに対するふるさと納税賛成派からの反論とともに見ていきましょう。
豪華すぎる返礼品で過度な寄附獲得競争につながっている
現在のようにふるさと納税が大盛り上がりしている最たる理由は、豪華な返礼品を用意している自治体があるからですが、これに対してはやり過ぎであり、“税収格差の是正”という本来の制度趣旨に外れるという批判が出ています。
これは2019年5月までの話ですが、自治体のなかには返礼比率が5~6割は当たり前、なかには還元率が9割(!)に達するところもあったようです。
「寄附されたお金はその自治体の住民サービスのために使われるべきなのに、返礼品という形で個人に利益を還元してしまっては意味がない」
などの指摘が相次いでいました。
また寄附者のなかには返礼品として入手した商品をオークションで転売して現金化するなどの事例があり、これなどはまさに“もともとは税金であるはずのお金が結局は個人にお金で還元されてしまっているもの”といえますね。
もっともこの批判に対しては、
「たとえ返礼品が高額であっても、そのお金が地元の名産品の購入などに使われることで地域振興策となっているので意義がある(だから問題ない)」
とするいった反論も存在しています。
これについては、本来、自治体の住民サービスのために使われるべき税金が、個人に利益を還元する結果となってしまっているという批判に真正面から答える反論ではないものの、たしかに寄附先の自治体が返礼品購入を行うことでこれもひとつの地域振興策になっている側面があるのは否めません。
そのような声を受け総務省は新しいふるさと納税制度を新設、2019年6月より適用されることになりました。
新制度に追加されたルール
- 返礼品を寄附額の3割以下に抑える
- 返礼品は地場産品に限る
- 適正な募集で寄附を集める
さらにルールを無視し続けた自治体は除外を発表しました。
除外となった自治体は約1年ものあいだ、ふるさと納税制度に参加することができなくなります。
寄附する人が住む自治体は、税収が減ることになる
住んでいる場所以外の自治体に寄附をすれば、当然ながら住んでいる自治体に納められるはずだった税金が納められず、その自治体の税収は減ることになります。
このことについて、「受益者負担の原則」に反するという指摘が有識者から寄せられています。
「受益者負担の原則」は、平たく言えばその自治体の公共サービスを受ける者が、それに必要な費用を負担すべしとする考え方ですね。
普段、強く意識することはあまりないかもしれませんが、私たちが住んでいる街の公共サービスは、私たちが納める税金でまかなわれています。
ですから、その税金が減ってしまえば行政サービスが提供できなくなるおそれがあるというのは、当然といえば当然です。
実際、東京都立川市のようにふるさと納税によって入ってくるお金より出て行くお金が数十倍にのぼる自治体もでてきています。
この先、自治体によっては税収が減ったことで財源がなくなり、予定していた住民サービスができなくなる事態が現実のものになりそうです。
一部の富裕層優遇の制度になってしまっている
日本中が盛り上がっているように思えるふるさと納税ですが、実は誰でもこの制度を利用して恩恵にあずかれるわけではありません。
けっきょく、ある程度住民税を納めていないと利用ができませんし、納税額が大きければ大きいほど利用できる範囲が広がるので、“金持ち優遇の制度だ”という批判があります。
しかし、そんな声に対し高所得者は(声をひそめつつ)こう反論しています。
「住民税のうち、ふるさと納税に利用できる割り合いは決まっていて、すべてを他の自治体に寄附できるわけではない(つまり、極端なほど不公平な利益を得られるわけではない)。
また、ほとんど住民税を払っていないような層でも行政サービスの恩恵を受けており、そのサービスは自分たちが納める税金によって賄われている。貧乏人がいったい何を言っているか(怒)」
というものです。
この反論もわからなくはないですね。
私自身はたいして住民税を納められておらず、こういった富裕層の方たちが納める税金でまかなわれる行政サービスのお世話になっているわけで、「・・・ごめんなさい!」と言うしかありません。
「ふるさと納税 ⇒ 見た目の年収源」で学費節約も
さらには、制度の隙(?)を突いて本来以上に高校の学費の補助金を受けることができてしまっている件も問題になっています。
どういうことかというと、たとえば一定額以上の世帯年収があるため本来なら国や大阪府の補助金の対象外であるにもかかわらず、ふるさと納税による控除で見かけ上の世帯年収を減らすことにより多額の補助金を受けられてしまうのです。
たとえば年収980万円の世帯は本来なら補助金対象外であるところ、15万円のふるさと納税を行うことで見た目の年収が減り、結果的に38万円の補助が受けられるという仕組み。
ネット上にはこうしたノウハウを指南するサイトも複数存在する模様です。
参考元サイト:朝日新聞デジタル
これまた、前述の各種批判と同様に、「制度の本質が歪められてしまう」として問題視されています。
もっとも、これはあくまで既存の補助金制度とその後新たにできたふるさと納税という新制度との関係性の問題であり、ふるさと納税自体の問題とは言い難いように見えます。
予算オーバーになり家計を圧迫する可能性も・・・
ふるさと納税は実質2,000円でさまざまな返礼品をもらうことができるとってもお得な寄附なのですが・・・
ふるさと納税はいわゆる住民税の前払い制度。
今年還付した場合は翌年の5月以降の住民税で引かれます。
(ただしワンストップ特例制度を利用した方は住民税のみの控除)
実質2,000円でお肉やお米といった返礼品をもらうことができるのはうれしいですが・・・
実際は今年と来年に2回分の税金を支払っているのと同じこと。
今年の分は給与から引かれているのであまり負担をした感覚もありませんが、翌年の分の税金は実際に手持ちから支払わなければなりません。
そんな状態でふるさと納税をしてしまうものだからこそ、家計を圧迫してしまうのです。
おそらくほとんどの人が予算の中に来年分の税金を組み込んでいないかと思います。
結果的には実質2,000円で返礼品をもらえることに間違いはありません。
絶対に損をすることはありませんが・・・計画的にふるさと納税をしないと“今現在の家計”を圧迫することになってしまいます。
なぜ実質2,000円でさまざまな返礼品をもらうことができるのか?
こういった仕組みをしっかり把握してからふるさと納税をしましょう。
以上、さまざまな批判とそれに対する反論があり、いずれも「なるほど、たしかになあ」と思わされるものもあります。
あっちを立てればこっちが立たず・・・という感じですね。
いったいどうすればいいんでしょうか?
ふるさと納税は失敗制度?
ふるさと納税には上で挙げたようなデメリットと批判が存在するわけで、これだけを見ていると、「国の制度としてはいささかバランスを欠いていて、失敗なんじゃないの?」という見方もできそうです。
でも、その一方で、メリットの項目で述べたように同制度のおかげで喜んでいる人もたくさんいるわけですよね。
これって、ふるさと納税を積極的に活用できない個人や、寄附競争で負け組となってしまった自治体の立場から見ればデメリットの側面が大きくなるし、逆に、同制度を積極活用できている個人や寄附獲得競争でうまくいっている自治体にとってはメリットのほうが大きいわけ。
つまりふるさと納税というのは、まるでコインの裏表のように、現状置かれた立場によって見方がどうしても異なってしまう制度だということです。
じゃあそんな制度はやめたほうがいいのかというと、それもまた極端。
どんなものでもそうかもしれませんが、最初からすべての人にとって都合のいいルールや制度というのはなかなかありません。
粗を探せばキリがないですよ。
だったら、粗探しよりも徐々にでもいいからみんなが幸福になれる最適解を探っていくことのほうが大事なんじゃないの?と思います。
見直し案によって返礼品は寄附額の3割までになった
メリットがある反面、デメリットや様々な意見によりふるさと納税制度自体の見直しが行われました。
その結果、2019年6月より返礼品は寄付額の3割までというルールが厳格化されたのです。
現在は寄附を行うと寄附額の3割程度の返礼品しかもらうことができないため、過度な寄附獲得競争は落ち着きました。
見直しによって一時期寄附を停止していた大阪府泉佐野市や佐賀県みやき町なども現在は寄附を再開しています。
正しいルールによって節税対策ができるようになったので、より利用しやすくなったのではないでしょうか。
ふるさと納税で広がる寄附の精神
ちなみに、ふるさと納税が始まった当初からの狙いである“寄付の精神”が純粋に実現した事例もちゃんとあるんですよ。
2016年4月に起きた熊本地震の際には、被災地支援として36億円もの寄付がこの地に寄せられ、しかも多くの人が返礼品を辞退しました。
寄附文化が盛んとはいえない日本において、これだけの寄附がふるさと納税だけで集まったというのは特筆すべきことでしょう。
災害は悲しい出来事ではありましたが、このような利用のされ方は大変望ましいですよね。
また、当サイトのライターのうまえもん(@h_emon_)は引退後の競走馬を支援するプロジェクトへの寄附を行いました。
これなども、非常に社会性が高い寄附のあり方といえるでしょう。
このように、ふるさと納税で行われる寄附のすべてが返礼品目的というわけではなく、こういった思いのもとに行われるものもあります。
今後、同制度を利用したさらにたくさんのプロジェクトが現れることでしょう。
そういったプロジェクトにあなたも寄附という形で参加することで、納税しながらちょっとした社会貢献ができるかもしれませんよ!
返礼品にヤクルトレディーが登場
ふるさと納税の本来の趣旨のひとつとして、“ふるさとを思う気持ちを納税(寄附)という形で表現する”というものがあります。
それに関連して、先日以下のようなニュースが飛び込んできました。
「ふるさと納税 返礼品に「ヤクルトレディー」 栃木・小山」
栃木県小山市は2017年4月20日、「ヤクルトレディー」による1人暮らしの高齢者らを対象とした「見守り活動」を、新たにふるさと納税の返礼品に設定すると発表した。両親など家族を小山市に残して遠方で暮らす人に利用を呼びかけ、地域が主体となる高齢者の見守り活動を推進する狙いがあるという。
引用元:毎日新聞ウェブサイト2017.04.21付
なるほど、ヤクルトレディというのは本来はその名のとおりヤクルトの配達が仕事ですが、戸別訪問することによって、結果的に高齢者宅の様子うかがいという副次的な役目を果たしている面もありますよね。
上記の栃木県小山市の試みは、この副次的な役目をむしろ前面に押し出し、離れて暮らす家族の心配を和らげようとするもの。
実際、これまでにもヤクルトレディの訪問による見守り活動によって、具合が悪くて倒れていたお年寄りを救出できたケースもあるそう。
この栃木県小山市のふるさと納税がすごいところは、
寄附(納税)する人にとっては、自分の代わりに離れて暮らす両親を見守ってくれて助かる
高齢者は定期的に訪ねてくれる人がいることで安全・安心である
自治体(小山市)の税収が増える
返礼品提供企業(ヤクルト)は契約者が増える>
というように、関係する4者みんなが幸福になることです。
今回の記事でふるさと納税のデメリットや批判をいくつか紹介しましたが、この栃木県小山市のケースは今後のふるさと納税のあり方に一石を投じるものになるかもしれませんね。
返礼品を送らないふるさと納税
岩手県北上市は、2017年9月1日からふるさと納税の返礼割合を3割以下にするほか、市民からの寄附には返礼品を送付しないことに変更すると発表しています。
また、高額返礼品についても2018年4月から取りやめるとのこと。
2017年春からの一連の総務省の見直し要請に応じた形となっています。
北上市は2016年度に県内で最高の約7億2,000万円の寄附を受けており、ふるさと納税によって最も潤っている自治体のひとつといえるわけですが、そんな同市の方針変更は今後、他の自治体にも大きな影響を与えるかもしれません。
まとめ
今回の記事では、ふるさと納税にまつわる負の側面にスポットを当てて紹介してきました。
しかし、ふるさと納税開始以前は、全国の自治体がこぞって積極的に納税を誘うようなマーケティング施策を行うことなどありませんでしたし、納税者側としても自分で納税先を選べるなんてことはなかったわけです。
返礼品が豪華になり過ぎたりと、本来の制度趣旨からちょっとずれてしまった面もあるものの、それさえ同制度の盛り上げに一役買ったのは事実でしょう。
なにかと硬直的なこの国の行政において、これがきっかけで国民が納税について関心を持つようになってきたという、ふるさと納税の功績は否定できません。
まだまだ改善の余地がある同制度ですが、今後の運用でさらなる最適化が進み、より多くの人にとって幸福をもたらす制度に育つことを願いましょう。
⇒ CMでもおなじみのふるさと納税サイト「さとふる」はこちら
[SaLinkDesigner id=5795 layout=horizontal target=none]https://ecoeco-taizen.com/furusatonozei/7697.html[/SaLinkDesigner]