先日ある老夫婦がファイナンシャルプランナーである私のところに相談に来ました。
「そろそろ遺言を書きたいのだけど…どうしたらよいか解らないのです」とご主人。
奥さんは「そんなにお金を持っている訳ではないので、遺言なんていらないと言ったのですが主人がどうしてもときかないので…」
話を聞いてみるとご主人は遺言書を残したいと考えており、奥さんは必要ないと考えているようです。
特に奥さんは子供が3人共に仲がよく、自分たちの財産も少ないことから遺言書の必要性はないと考えていました。
近年終活の一環として遺言書が注目されています。
しかしこの老夫婦のように遺言書の必要性や書き方などを理解していない人も少なくありません。
そこで相続でモメないために重要な働きをする遺言書について説明します。
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相続でモメるケースが増加しているのを知っていますか?
相続とは亡くなった人(被相続人)の財産を配偶者や子供、親族などの「相続人」が引継ぐことで一般的には「遺産相続」と呼ばれています。
相続は法的な行為であり原則としては法律で定められた期間内に行い、相続税の納付や不動産の名義変更を実施する必要があります。
しかし現実的には相続開始により親族の意見が分かれてしまい、なかなか相続が先に進まないケースも珍しくありません。
また相続の話し合いがまとまらずに裁判所の調停や審判にまで進むことも多く、このようなトラブルは年々増加傾向にあります。
「そんなこと言っても私には遺産と呼べるだけの財産はないよ!」
と思うかもしれませんが、相続でモメるケースの3割が資産1,000万円以下。
1,000万円~5,000万円が4割となり、資産が5,000万円以下で7割を占めているのが現実。
そして5,000万円~1億円以下の高額相続では、なんと1割程度しか争いになるケースはありません。
嫌な言い方ですが「金持ち喧嘩せず」との言葉がありますが、統計だけを見てみると遺産が少ない方が相続でモメることが多いようです。
このことから「財産が少ないから、争いは起きない」と考えるのは間違った認識かもしれません。
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相続時のトラブルは遺産分割協議書を作る時に始まる
あまり知られていませんが被相続人が亡くなると、その人が保有する資産は凍結されてしまいます。
例えば銀行預金や株券などは被相続人が亡くなった時点で口座が凍結され、例え配偶者や子供などが交渉しても凍結を解除してくれません。
つまり被相続人の遺産が動かせなくなるのです。
これは相続が公平に行われるための処置で、相続人の協議が終わり「遺産分割協議書」を持参するまでは凍結が続くことに。
ただし銀行によっては「葬儀代」「火葬費用」「入院費未払い分」など故人が支払わなければならない費用については、支払い証明することで遺産分割協議の前でも一部の払戻しに応じることがあります。
しかしあくまで原則は一度凍結された口座は相続手続きが終わるまでは解除されないと覚えておきましょう。
そこで重要なのが「遺産分割協議」で作成する「遺産分割協議書」。
例えばAさんの家族の話し合いを見てみましょう。
【被相続人Aさんのケース】
長男B「父さんの残した財産は自宅と預金になるけど、全てを母さんが相続したらいいと思うけどC、やDもそれでいいか?」
次男C、長女D「それでいいよ」
長男B「解った、それならこの遺産分割協議書に分割遺産なしで署名押印してくれ」
次男C、長女D「了解!」
このケースは父親が亡くなった場合に全ての遺産を母親が相続する場合の遺産分協議の例です。
長男がリーダーシップをとって弟、妹に実質的な相続をさせずに遺産分割協議書を作成しています。
これは家族仲もよく母親想いの兄弟ならではの話ですね。
このケースでは比較的早く遺産分割協議書が作成されることから、資産凍結も短期で済むでしょう。
次に紹介するのは同じ例でもちょっと嫌な気持ちになるケースです。
【被相続人Eさんのケース】
長男F「父さんの残した財産は自宅と預金になるけど、全てを母さんが相続したらいいと思うけどG、やHもそれでいいか?」
次男G「ちょっと待てよ兄さん、相続は法律で決められているのだから母さん以外に俺にも権利があるはずだ。遺言書がない限り父さんの遺産の1/6は俺にも権利があると聞いている。俺は放棄なんかしないよ」
長女H「私もGと同じ意見。母さんが全てを相続しても、きっとF兄さんが使うかもしれないし…」
長男F「母さんが生活に困るから、何とか遺産分割協議書にサインしてくれ!」
G、H「一度帰って家族と相談する」
この被相続人Eさんのケースでは遺産分割協議が決裂してしまいました。
確かにGの言うように遺言書がない相続では、法定相続権として配偶者に1/2、子供に1/2(3人兄弟なので1人1/6)の権利があります。
しかし遺産を分割してしまうと配偶者である母親の生活が脅かされる可能性があります。
長男は次男と長女を説得させるために半年を費やしたそうです。
このように相続のトラブルは遺産分割協議から始まります。
そしてまとまらないことから長期化してしまうことも多く、相続人も疲弊し仲のよかった家族に亀裂が入ることも。
相続を円滑に進めることは残された家族の生活にとっても大切なこと。
そしてそれを実現する方法として遺言書が大きな働きをします。
相続におけるトラブルを防ぐ遺言書について解説します。
【この章のモメないポイント】
遺言書がない相続では民法で定められた法定相続権が有効になります。
例え少ない財産であっても平等に相続人が相続できるように規定されています。
Eさん家族のケースでは「遺産の全てを母親に相続させる」旨の遺言書があればトラブルは防げたでしょう。
遺言書は大きく3種類に分類されている
よくテレビドラマで遺言書が出るシーンがありますよね。
しがないサラリーマンの青年にある日電話が。
出てみると弁護士を名乗る男性からで、「貴方の実の父親が亡くなり、遺言で莫大な遺産を相続できます」…なんてストーリーですが、このように遺言には特定の人物に自分の財産を相続させる効力があります。
この遺言を残すのが「遺言書」です。遺言書は民法で定められた以下の3種類があります。
【遺言書の種類】
■ 自筆証書遺言
■ 公正証書遺言
■ 秘密証書遺言
まずは自筆証書遺言が無効にならないように注意点をまとめてみましょう。
自分で簡単に作成できる自筆証書遺言は無効になるケースも多い
自分で簡単に作成できることから近年人気なのが「自筆証書遺言」。
これは自分で作成する遺言書で簡単に作ることができます。
費用もかからずペンと紙、印鑑があれば作成可能で誰でも制約なく作ることができます。
自筆証書遺言の書き方は遺言書を作成する紙に、遺言の内容を細かく記載することが大切。
例えば預金であれば「○○銀行(普通)口座番号」の預金を長男に、「△△銀行(普通)口座番号」の預金を長女へ、と口座番号や預金種別まで細かく記載します。
以下のような記載でも大丈夫です。
【預金記載例】
以下の預金の合計から50%を妻○○(昭和○○年○○月○○日生)に、残り50%を長男○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。
「○○銀行 ○○支店(普通)口座番号」
「△△銀行 △△支店(普通)口座番号」
大切なのは具体的に銀行や証券会社の会社名、支店名、口座番号を明らかにして誰に相続させるかを記載することです。
曖昧に口座番号を記載していないと無効になることがありますので注意しましょう。
【遺言書が無効にならないポイント】
預金や株券、証券は預けてある金融機関、支店名、口座番号を明確に記載して、それを誰に相続させるかを正確に記載。指定した相続人には続柄、生年月日を記載すると相続人の特定が証明しやすくなります。
自筆証書遺言で不動産を相続させる場合に気を付けること
自筆証書遺言で不動産を相続させる場合は、預金と同様に明確に不動産を記載する必要があります。
単に不動産の住所を記載するのではなく、不動産登記簿に記載されている内容を正確に記載することが大切です。
【不動産記載例】
1.土地
所在:土地の住所
地番:土地の地番
地目:宅地など
地籍:土地の面積を平米で記載
2.家屋
家屋所在:家屋の住所
家屋番号:登記簿に記載されている家屋番号
家屋種類:居宅など
床面積:登記簿に記載された床面積を平米で記載
遺言書で不動産を指定する場合は、登記簿に記載された形式で書くことが大切です。
例えば住所の番地が「123-567」であっても登記簿的には「123番567」となっていることが多く見られます。
この場合遺言書では正しく「123番567」と記載しないと無効になる可能性が出てきます。
あくまで遺言書は正式な法的文書なので正確に書くことが大切です。
【遺言書が無効にならないポイント】
遺言書に不動産を記載する場合は、不動産の登記簿を確認してそこに掲載されている通りに記載することが大切。
なるべく省略しないで正確に記載しましょう。
作成した日付には特に注意しなくてはいけない
日本では縁起面から遺言書作成の日付を「〇月吉日」と記載する人も少なくありません。
特に高齢者の中には吉日と記載することが多いのですが、この書き方は遺言書を無効にさせます。
遺言書の作成は記載した日を正確に特定されなくてはならないので、必ず「平成〇〇年〇〇月〇〇日」と明確に書きましょう。
【遺言書が無効にならないポイント】
遺言書は縁起物として日付を「吉日」と記入する人がいます。
特に高齢者に多くこれは遺言書を無効にする書き方です。
必ず作成した日を正確に年月日で書きましょう。
自筆証書遺言では1枚の紙に2名の遺言は無効になる
この間違いも時々あるのですが民法では1枚の遺言書に複数名の遺言を記載することを禁止しています。
例えば父親の記載した遺言書の記名に父親と母親が連名で書かれている遺言書です。
夫婦で遺言書を作成する場合は、必ず別々に自筆で記載するようにしましょう。
【遺言書が無効にならないポイント】
お父さんの作成した遺言書にお母さんが便乗して名前と印鑑だけ押す遺言書があります。
これは全く無効になりますので、自筆証書遺言は自分で作成しましょう。
文字の間違いに注意!結構ハードルが高い自筆の現実
自筆証書遺言で大きな障害になるのが「誤字、脱字」。
特に普段は文字など書かない高齢者にとって、長い遺言書を誤字脱字なく最後まで記載するのは大変な作業です。
そこで「パソコンやワープロを使ってサインだけで済ませよう」
となりますが、自筆証書遺言では自筆以外の記載は一切無効になります。
パソコンが使えれば間違えても直して印刷し署名押印で済むのですが、自筆証書遺言では書き直す必要があります。
ただし自筆でも間違えても、修正印や捨て印により加除訂正することも可能です。
それでもせっかくの遺言書ですから間違わないで綺麗に書きたいですよね。
そのためには予め下書きを書いて本番ではそれを見ながらゆっくりと記載するのがよい方法です。
現在自筆証書遺言でパソコンやワープロが使用できるように法改正を検討していますが、現実的には資産目録など一部に限られる可能性が高いようです。
【遺言書が無効にならないポイント】
長い文章を間違わないように書くのは難しいですね。
何回も書き直して嫌になる人も少なくないようです。
下書きをしっかり書いてから本番を作成することで比較的楽に記載できるでしょう。
また正式な方法での加除訂正は認められているので、間違った部分に二本線と訂正印を押して欄外に「削除〇字」「加入〇字」と記載します。
捨て印も押すようにしましょう。
遺言執行者を選ばなくてはいけない
自筆証書遺言では遺言執行者を指定することが大切です。
例えばせっかく書いた遺言書を先に見つけた人物が捨ててしまったり、隠してしまったりすることはよくあることです。
そこで遺言執行者を予め指定しておいて、遺言書の存在を教えておきます。
遺言執行者の責務は遺言内容に書かれた内容を実現することで、長男などの子供でもよいし弁護士や税理士など第三者でもかまいません。
遺言で遺言執行者が定められた場合、相続財産と遺言の一切の権利を行使する権限が与えられます。
反対に遺言執行者以外では、例え相続人の一人であっても勝手な相続執行は全て無効になります。
自筆証書遺言では信頼できる遺言執行者を専任し記載することも大切です。
【遺言書が無効にならないポイント】
遺言執行者を指定しないとトラブルの元になります。
信頼のおける家族や第三者を指定してその人には、遺言書の保管先を教えるようにして下さい。
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自筆証書遺言をどこに保管する?
自筆証書遺言は無事に書きました。封筒に入れて封印も大丈夫。
次に考えなくてはいけないのが保管場所です。
自筆証書遺言は自分で作成できることから誰にも知られずに保管することも多く、いざ亡くなってから見つからなくなることも。
特に家族に黙って作成して押し入れの奥にしまっていると、相続が終わって数年後に発見されることもあるでしょう。
そこで重要なのが保管場所です。
中には「遺言書の保管場所を話すとすり替えられてしまう」などの心配から、銀行の貸金庫にしまい込んでしまう人もいますが、これは少し極端な例ですね。
反対に推定相続対象者の全員に遺言書を記載したことを教えて、保管場所も話すことで不正を防止して相続時点には遺言書通りの執行が実現できると思います。
【遺言書が無効にならないポイント】
遺言書は被相続人が亡くなった直ぐに見つかるべきものです。
宝探しではないので家族には保管場所を教える方が無難です。
自筆証書遺言は裁判所の検認が必要
被相続人が亡くなってから自筆証書遺言を見つけた場合、保管者や発見者が家庭裁判所で検認の手続きを受けなくてはいけません。
検認とは家庭裁判所が遺言を確認し、内容を明確にして偽造や変造を防止するための処置です。
自筆証書遺言が封筒に入れられて封印されている場合は、封印した状態で家庭裁判所に持ち込み相続人立ち合いで開封することになります。
裁判所では遺言書の形状(書き方)や日付、署名などを確認して本人の遺言書かを検認します。
ただしその遺言書が有効か無効かの判断は検認では行いません。ここは注意ポイントです。
【遺言書が無効にならないポイント】
検認は遺言の書き方や記載方法が法的に合っているかを確認するだけで、その遺言書の有効/無効を裁判所が判断するものではありません。
しかし検認することで偽造などの不正を防止し、遺言書通りの相続ができるようになります。
自筆証書遺言の記載例を紹介しましょう
それでは自筆証書遺言が無効にならない記載例を簡単に紹介します。
ただし自筆証書遺言のフォーマットは1つではなく、必要な部分が抜けていなければ問題はありません。
例えば家族の想いを書いたり、自分の人生の感謝を記したりするのも問題ありません。ここでは一番シンプルな記載例を取り上げてみますね。
【自筆証書遺言の記載例】
遺言書
遺言者山田太郎(昭和○○年〇月〇日生)は以下の通り遺言する。
1. 私は以下の不動産を妻山田花子(昭和○○年〇月〇日生)に相続させる。
(1) 土地
所在:東京都世田谷区○○1丁目
地番:1番1
地目:宅地
地籍:200㎡
(2) 家屋
家屋所在:東京都世田谷区○○1丁目
家屋番号:1番1
家屋種類:居宅
床面積:1階99㎡
2. 私は以下の銀行預金の合計から妻山田花子に50%、長男山田一郎(昭和○○年〇月〇日生)に25%、長女山田二子(昭和○○年〇月〇日生)に25%相続させる。
(1) ○○銀行 ○○支店 普通 口座番号123456
(2) △△銀行 △△支店 定期 口座番号123456
3. 私は以下の証券会社にて保管する株券の全てを長男山田一郎に相続させる。
(1) ○○証券会社 ○○支店 口座番号123456
4. 私は遺言執行者として長男山田一郎を指定する。
平成○○年〇月〇日
東京都世田谷区○○1丁目1番1
山田太郎 印
このように自分の保有する遺産を明確にして、誰に相続させるかを記載するのがポイント。
また口座番号や普通預金、定期預金の区別を明確にすることも忘れてはいけません。
ただ単に「自分の財産の半分は妻、残りは子供で分けろ」では全く通用しないのですね。
また先程記載したように日付の記載は最も重要です。正確に記載して署名、押印して下さい。
自筆証書遺言で検認をしなかったらどうなるの?
自筆証書遺言が見つかり勝手に開封すると5万円以下の過料処分を受ける可能性があります。
あくまで封印された自筆証書遺言が対象ですが、あくまで開封は家庭裁判所で行わなくてはいけません。
勝手に開封すると後々偽造を疑われてしまい、遺言書が無効になる可能性もありますので注意しましょう。
検認の方法ですが簡単に説明すると以下の通りです。
1. 被相続人(遺言者)の生まれてから死亡するまでの戸籍を準備する
2. 相続人全員の戸籍謄本を準備
3. 家庭裁判所で検認の申立書を提出(手数料800円)
4. 家庭裁判所から検認期日通知書が送付される
5. 当日遺言書を持参し相続人立ち合いで開封
6. 家庭裁判所から検認済証明書が発行される
家庭裁判所から検認済証明書が発行されることで、銀行預金の凍結解除や不動産の名義変更が可能になります。
しかし相続人が多いケースでは戸籍謄本を集めるだけで数ヶ月かかることもあり、検認済証明書が発行されるには半年程度の期間が必要なことも少なくありません。
相続開始の可能性がある場合は早めに準備することも大切ですね。
【遺言書が無効にならないポイント】
検認が行われ検認済証明書が発行されると、遺産分割協議書がなくても遺産の凍結は解除され資金の移動や不動産の名義変更が可能になります。
遺言書がある場合は必ず検認を行いましょう。
検認のいらない公正証書遺言
遺言の中で唯一家庭裁判所の検認が不必要なのが「公正証書遺言」。
これは遺言を公正証書と呼ばれる公的な文書にして公証人役場に保管してもらう遺言書です。
公正証書とは本人ではない第三者(公証人)が作成した公的文書のこと。
公証人が作成した文書は公文書となるので、裁判などの紛争が起きても強い効力を発揮します。
公正証書遺言のよい点は遺言者が自分で遺言書を記載する必要がなく、口頭で話した内容を公証人が作成してくれます。
公証人は法務大臣に任命された法律のプロなので、法律に則った正確な遺言書を作成してくれます。
公正証書遺言を作成するには公証人以外に2名の証人が必要です。
この証人には厳しい規定がありますので誰もがなれるものではありません。
【承認になれない人】
■ 未成年者
■ 推定相続人やその配偶者、直系血族
■ 公証人の配偶者、4親等以内の親族
■ 公証役場の職員
■ 遺言書の内容が理解できない人
最も多いのが友人や弁護士、税理士にお願いすることですが、見つからない場合には公証役場で紹介してくれます。
公正証書遺言が検認の必要がない理由は、公証人が作る遺言書でありさらに2名の証人がいることで信ぴょう性が格段と上がるからです。
【遺言書が無効にならないポイント】
自筆証書遺言と比べて検認の必要もなく紛失することもないのが公正証書遺言。
公証役場は各地にありますので、利用する場合は問い合わせて予約する方が無難です。
また家族には公正証書遺言を作成したことを教えることも大切です。
自筆証書遺言よりも確実だが費用がかかるのが難点
公正証書遺言は公証人が作成し公証役場で保管されることから、紛失や偽造の心配はありません。
また口頭で作成できることから文字が書けなくなった高齢者でも遺言書を作成することができます。
ただし自筆証書遺言であれば何回も書き直しできますが、公正証書遺言は費用がかかることから毎年のように書き直しするのも難しいかもしれません。
【公正証書遺言の手数料】
■ 財産100万円まで:5,000円
■ 財産200万円まで:7,000円
■ 財産500万円まで:11,000円
■ 財産1,000万円まで:17,000円
■ 財産3,000万円まで:23,000円
■ 財産5,000万円まで:29,000円
■ 財産1億円まで:43,000円
■ 財産1億円~3億円:1億円を超える部分の5,000万円毎に13,000円
■ 財産3億円~10億円:1億円を超える部分の5,000万円毎に11,000円
■ 財産10億円~:1億円を超える部分の5,000万円毎に8,000円
ここで示された手数料以外に「遺言加算」「出張費」「証人手数料」などが加算されることがあります。
【遺言書が無効にならないポイント】
公正証書遺言には手数料がかかります。また入院中や歩けない人には出張して作成するサービスもありますが、出張費などの費用が加算されます。
遺言書を書き直したい場合にはその都度費用がかかりますので、修正や変更が多い人は注意が必要。
また公正証書遺言を作成しても作成日付の新しい自筆証書遺言が見つかれば、新しい方が有効になることを覚えておきましょう。(遺言書の優劣はない)
公証役場に存在を証明してもらう秘密証書遺言
例えばせっかく作成した遺言書が亡くなった後で見つからずに効力を発揮できないことがあります。
そのような事態を防ぐのが秘密証書遺言。
この遺言は公正証書遺言と違い、遺言書の中身を公証人に見せる必要はありません。
遺言書の存在のみを公証人に証明して貰うのが目的になります。
その意味ではあくまで内容を秘密にしたいが、遺言書の有無は公にしたい人に有効な遺言書と言えるでしょう。
自筆証書遺言との大きな違いは代筆やパソコンでの作成が認められていること。
ただし署名は自筆で行い押印も必要です。
秘密証書遺言が完成したら封印して公証役場に持参します。
その場合公正証書遺言と同じく2名の証人が必要です。
公証役場では公証人と証人の前で本人確認が行われ、遺言書の封筒を封紙し遺言者の申述や提出日などを公証人が記載して証人、遺言者で封印を行います。
これで公証役場が遺言書の存在は証明できますが、中身は確認していないので内容の証明はできません。
全ての作業が終了したら秘密証書遺言は持ち帰り自分で保管することになります。
また費用も一回につき11,000円かかりますので、証人を集めることを考えると少しハードルが高いように感じますね。
【遺言書が無効にならないポイント】
パソコンや代書が認められていますが、署名は自筆で捺印も必要です。
また内容も自筆証書遺言と同様に詳細に記載しなくては無効になります。
秘密証書遺言も無効になる危険性があった
秘密証書遺言は公正役場で存在を証明できますが、中身は秘密なので内容についての証明はできません。
また内容が未確認なので自筆証書遺言と同じく家庭裁判所の検認が必要です。
記載内容は自筆証書遺言と同じく書き方を間違いえることで無効になる危険性があります。
また検認を怠ると同じく過料に処されることになりますので注意して下さい。
簡単に考えると自筆証書遺言なら代筆やワープロは認められないのですが、秘密証書遺言では認められている程度の違いかもしれません。
最終的に家庭裁判所の検認が必要なのであれば、公証役場の「存在のみの証明」の意義は薄いと考えられるからです。
特に誰にも知られたくない内容で公正証書遺言を利用できない事情があり、かつ自筆証書遺言を作成できない事情がある人のみ利用する遺言だと思います。
実際には利用者数は少なく、実効的な遺言方式ではありません。
【遺言書が無効にならないポイント】
自筆証書遺言と同じく被相続人や相続人の戸籍謄本などがなくては検認申請ができません。
基本的には自筆証書遺言と同じ手順になると覚えておきましょう。
遺言書が有効でも遺留分を侵害できないことを覚えておこう
遺言書で全ての財産の分配を明記しても「遺留分」の権利を侵害することはできません。
例えば妻、長男、次男、長女の4人が法定相続人のケースでは、「預金を妻50%、長男50%で相続させる」との遺言書を作成した場合、残された次男や長女は不平等になります。
そこで遺留分として一定の財産は遺言の内容に関わらず、全ての法定相続人が相続できように認められています。
この例では法定相続人として妻、長男、次男、長女の4人です。
相続の遺留分は法定相続の1/2なので遺言書で妻と長男のみと記載されていても、1/12が次男、長女の遺留分になります。
■ 法定相続:妻1/2、子供1/2(3人なので1人1/6)
■ 遺留分計算方法:遺留分は1/2なので1/6×1/2=1/12
■ 遺留分:1/12
遺留分は自動的に貰えるものではなく、相続人に対して遺留分減殺請求権を行使することで効力を発揮します。
遺言書を作成する場合には、どの方式で作成するにしても遺留分の存在を考慮する必要があります。
遺留分を考慮に入れなかったことで、せっかく作成した遺言が意味をなさなかったり、相続人同士で争いが起こったりすることがあります。
限定した相続をさせたい場合には、遺言書にその理由を記載してモメごとが行らないような配慮も必要です。
【遺言書が無効にならないポイント】
遺留分は民法で規定された権利で何者も侵害することはできません。
遺言書を作成する場合には遺留分を念頭に記載することも大切です。
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遺言書がないことで大きなトラブルを抱えることもある
遺言書がないことで大きなトラブルに巻き込まれることがあります。
特に不動産の場合では相続税を支払うために売却したいのですが、遺産分割が確定しないことで売却できないことがあります。
そうなると相続人の誰かが自分の資産で相続税を納付する必要があり、家計を圧迫する要因に。
また相続のモメごとで仲のよかった家族が疎遠になってしまうこともあるでしょう。
相続が長引くことで起こる問題を見てみましょう。
【遺産の分配が遅くなり裁判まで】
遺言書がないことで相続人が自分の権利を主張し遺産分割協議がまとまらなくなります。
その場合は家庭裁判所で調停を行い、それでもまとまらない場合は審判まで進むことに。
そうなると数年もかかることもあり、相続人の疲弊や生活への悪影響が出てきます。
【相続税の控除の問題】
相続は原則として10ヶ月以内に相続税の申告をする必要があります。
つまりそれまでには遺産分割協議がまとまる必要があるのです。
しかし遺言書がなく相続が長期化することで期限が過ぎてしまい最悪では相続税の控除を受けられなくなることもあります。
【不動産の売却ができない】
不動産の相続がまとまらないと名義変更ができないことから売却することはできません。
長期化することで修繕費や固定資産税だけがかかることになり、遺産を減少させる要因になります。
【家族仲が悪くなる】
今まで仲のよかった兄弟姉妹が相続をきっかけに疎遠になることは珍しくありません。
酷いケースでは互いに憎みあって絶縁するケースもあります。
このように相続のやり方によっては被相続人が望まない結果を招くことに。
遺言書は何回も書き直すことが可能で、日付が新しいものが有効とされます。
生涯で1回ではなくさまざまな人生の中で、それに合った内容に書き直すこともできます。
今ではなく自分が死んだ後のトラブルを防ぐ意味でも、遺言書は大切な役割を果たすのです。
海外では数億円もの遺産をペットの犬に残す富豪も話題になりました。
そこまでは無理としても家族に迷惑の掛からない「優しさのある遺言書」を作成したいですね。
せっかく作成しても無効では意味がありません。
ポイントを押さえて無効にならない遺言書。
さっそく挑戦してみてはいかがでしょうか?
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