消費税の増税がいよいよ今年の10月に迫ってきました。
考えてみると1989年に開始され当時は3%だった消費税が、1997年に5%に引き上げられ、さらに2014年の安倍内閣により現在の8%に増税されています。
そしてついに2019年10月には2%の消費税引き上げが予定されており、ついに消費税が10%と2桁になる時代が到来します。
しかし今回の増税は単なる税率のアップだけではなく、消費の低迷をさけるための景気対策として軽減税率の導入などが予定されています。
そこで今回は消費税が10%に増税される背景を探り、また導入される軽減税率の詳細を確認することで私たちの生活にどのような影響が出るのかを考えてみます。
消費増税が必要な理由
最初に「なぜ消費税の増税が必要なのか?」を考えてみましょう。
財務省のホームページの質問コーナーに記載されている「消費税の引き上げの理由」には、
今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。
日本社会の問題がまとめられているような内容で、簡単に説明すると「高齢者が増えて若者が少なくなった社会では、税の公平さを期するためには所得税や法人税ではなく実際の消費に課税する消費税が相応しい」との意味ですね。
所得税は現役世代が主に負担する税金なので、高齢者の負担は少なくなります。
高齢者が増える社会で所得税を中心とした課税をすると、現役世代の負担だけが増してしまいます。
これでは不公平な社会になってしまいますよね。
そこで消費税を中心とした課税をすることで、社会全体で税負担を担うと言う訳です。
日本は超高齢化社会に突入しており、65歳以上の高齢者が約28%と3人に1人が高齢者になっています。
このような社会で公平な税制を維持するには、消費税を増税するのが最も効率的だと考えられます。
消費税の増税をやめれば
消費増税に対して反対の声があちらこちらから聞こえてきます。
たしかに税金は少ない方がよいのは間違いありませんよね(できればなくしたい!)。
誰でも「もらうものは多く、支払うものは少なくしたい」と考えているはずです(私もそうです)。
しかし支払うものを少なくしたら、もらうものは多くなりますか?
国の予算は税金でまかなわれており、税収が少ないと「国債」「公債」を発行して借金をするしかありません。
また国は借金を少なくするために「補助金」「福祉」「公共事業」を減らす必要に迫られます。
このような社会が進めば借金の負担は次の世代に回り、補助金や福祉政策にも悪影響が出るでしょう。
私の個人的な意見としては現在の日本の福祉政策は恵まれていると思っています。
それは「子供手当」「高校無償化」「各種補助金」などの社会福祉が充実しており、さらに「幼稚園」や「保育所」の補助や無償化まで始まります。
私が子育てをしていた時代にはそのような補助はごく一部しかありませんでした(羨ましい!)。
しかしこのような社会福祉はタダでは実施できないのも事実で、結局は国の税金から支給されることになるでしょう。
そこで活用されるのが消費税であり、今回の増税もこのような教育や社会福祉を中心とした利用に限定される予定です。
「それでも消費税の増税に反対!」
「…て言うか消費税自体に反対!」
と考える人も少なくありません。
それではそのような人は教育や社会福祉が今の水準より低下してもよいのでしょうか?
例えば教育の無償化がなくなるだけでなく、健康保険の自己負担額が3割から5割に上がったらどうですか?
それこそ病院へ行くことも考えてしまいますよね。
たしかに消費税がなく社会福祉が充実した社会が一番理想ですが、現状ではそれは不可能なこと。
であれば消費税を増税して社会福祉を今まで通り充実させるか?それとも社会福祉を悪くするか?を判断しなくてはなりません。
一度味わった日本の福祉政策を逆戻りさせることは難しいでしょう。
そう…つまり消費増税を受け入れて、今まで通りの生活を維持するしかありません。
消費増税の景気への影響
それでは消費増税により私たちの生活にはどのような影響が出るのでしょうか?
消費増税が始まるとまず物の値段が高くなるのは間違いありません。
日本では「消費税が高くなると景気が悪化する」との意見がありますが、実はこれは正しい意見ではないようです。
実は所得税や法人税は景気によって得られる税収に違いがありますが、消費税は景気動向にかかわらず一定しています。
つまり消費税が上がることで消費は減っておらず、安定した消費が行われていることが分かります。
ただし実際には品物の価格が上昇することから、一定の買い控えが発生し家計への負担が増すことは間違いありません。(しかしこれが景気の悪化にはつながらないとの意味です。)
消費増税のメリット&デメリット
消費増税をすることで私たちの生活にも若干の変化が起こります。
メリットとデメリットに分けてみてみましょう。
【メリット1】社会保障の充実
一昔前から破綻が噂される公的健康保険と公的年金制度ですが、消費増税によりこれらの制度を安定化させます。
将来の年金が心配な人が多いと思いますが、消費増税により年金制度を安定させ不安のない老後が迎えられます。
【メリット2】子育て支援や少子化対策
消費増税の増収分の一部は「子育て支援」や「少子化対策」へ使われることが決まっています。
幼稚園の補助や保育園の無償化などの福祉政策も進むことから、子育て世代にとっても大きな恩恵を得られます。
日本の少子化は深刻な問題なので、安心して子供を育てられる社会を作るのに利用されます。
社会全体で子育てを支援する仕組みが消費税によって確立されます。
【メリット3】女性が働きやすい社会を作る
保育園や幼稚園の待機児童の問題が解決しない限り、女性が安心して働ける社会を構築するのは難しいでしょう。
消費増税により保育園に対する補助や働く保育士の収入格差を是正し、待機児童の解消をすすめることで女性が働きやすい環境を作ります。
高齢化が進む社会で女性の社会進出は国の政策になっています。
【メリット4】不公平な税制の回避
若者よりも預金などの資産をたくさん持っている高齢者が大勢います。
しかしリタイヤした高齢者は所得がないことから所得税や住民税が少なく、若者から見れば税制の不平等だと感じます(資産家なのに税金が少ないなど)。
消費増税をすることで税負担が均等化し、若者だけでなくリタイヤした高齢者も平等に課税され税収も安定するでしょう。
所得税を上げずに消費税のみ増税すれば、不平等な税制を一定程度抑制できます。
消費増税は広く社会から課税する平等な税制の方法です。
【メリット5】労働意欲を阻害しない
不公平な税制の社会では若者の労働意欲が阻害されると言われています。
「汗水たらして働いても税金に取られてしまう…馬鹿らしい!」
「一生懸命働いても高齢者の年金に使われる…ニートなろうかな?」
などの言葉を使ったことがありませんか?
このような状況にならないためには、社会全体で平等に税負担をすることが必要です。
今回の消費増税は若者の労働意欲を阻害しない税制度と言えます。
【メリット6】外国人からも徴収できる
現在の日本には年間を通して多くの外国人が訪れています。
また2020年のオリンピック開催により、これからも外国人の観光客が増加するでしょう。
消費税は日本で消費するものに対して課税されるので、観光で訪れた外国人に対しても課税します。
これにより外国人に対するサービスの財源にしたり、税収をアップさせたりする効果が見込まれます。
【メリット7】脱税がしにくい税制
誰でも税金は少ない方がよいと考えていますが、中には悪品な手段で課税を逃れる「脱税」に手を染める人もいます。
脱税の手口はあくまで所得を減らし経費を増やすことですが、消費税ではこの方法が使えないことから脱税がしにくい税金だと考えられています。
消費税は脱税を防ぎまじめな人が損をしない税金ではないでしょうか?
このように所得税や法人税ではなく消費税を増税することは、社会にとってメリットがたくさんあります。
また消費税の増税分は使用方法をくぎ付けした「福祉目的税」の位置づけであり、「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」とされています。
これらの福祉政策は我々国民が受けるもので、今回の増税も福祉政策を強化するための物だと考えてもよいのではないでしょう?
消費増税のデメリット
次に消費増税で発生するデメリットを考えてみます。
【デメリット1】低所得者が苦労する
公平な税制度をもたらすはずの消費税ですが、低所得者にとっては生活を圧迫する原因になるかもしれません。
例えば1万円の品を購入した場合、税込みで10,800円から11,000円になり200円の値上がりです。
200円の価値をどのように考えるかにもよりますが、200円あれば食パンを2斤買えることから決して少ない金額ではありません。
いくら平等な税制であっても低所得者が苦労する世の中には問題があります。
今回の消費増税ではこの問題に対して後述する軽減税率で対応していますが、平等な社会は低所得者にとっては平等にならないことも理解したいですね。
【デメリット2】少子化の加速
消費増税は少子化対策の一環とメリットで紹介しましたが、反対に少子化を加速させる可能性も秘めています。
これは消費増税により景気が悪化した場合に起こる問題ですが、経済の悪化がデフレを促進させて収入を減らします。
このような社会では子供を満足に育てられないとの思いから、少子化が進む危険性も排除できません。
消費増税と景気の悪化はリンクしないと考えられていますが、あくまで想定であり現実ではどうなるか分かりません。
【デメリット3】駆け込み需要とその反動
消費税が増税される場合には必ず駆け込み需要が発生します。
駆け込み需要とは消費税がアップする前にさまざまな商品を購入することで、前回の増税時には液晶テレビが飛ぶように売れて各電気店の売り上げは大きく伸びました。
このように駆け込み需要は小売店の売り上げを伸ばすので悪くはありませんが、その後に訪れる「駆け込み需要の反動」には十分注意しなくてはなりません。
駆け込み需要がひと段落し消費税が増税されたら、今度はお金を貯めて商品を買い控える人が増加します。
これが駆け込み需要の反動と呼ばれるものの正体。
消費増税前に購入したことで購買意欲が減るのは仕方がないことですが、小売店にとっては一気に売り上げが下がるので死活問題です。
特に体力のない中小企業は反動が原因で倒産し失業者が増加、そして景気も悪化する負のスパイラルに入ってしまうことも考えられます。
消費増税にはこのような状況を引き起こす可能性があり、最大のデメリットはやはり景気を悪化させる懸念があることです。
しかしここで十分に理解してもらいたいことは「景気は私たち消費者が作り出す」側面が大きいこと。
つまり消費増税により消費を抑える人が増えれば景気は悪化、変わらない生活を続ける人が多ければ景気が悪化することはありません。
- メリットを理解していない=>将来が不安=>消費を控える=>景気の悪化
- メリットを理解している=>将来の不安がない=>消費意欲がある=>景気が活況
このように消費増税のメリットを理解していると将来的な不安が解消され今まで通りの生活を送れますが、メリットを理解していないと不安からお金を使わずに貯金してしまいます。
みんながこのような状況になると物は売れなくなり、企業の売り上げは低下してしまうでしょう。
そして回りまわって従業員の解雇や給与の削減など、結局は私たちの元へ帰ってきます。
そうならないように消費増税のデメリットだけに目を向けないで、メリットを十分理解して10月の増税を迎えたいですね。
消費増税の前に購入したいもの
前述した通り消費税が増税される2019年10月の前には、駆け込み需要が起きることが予想されます。
今回の増税は実質的には2%の値上げですが、それでも値上げを嫌って買い物客が大勢押し寄せ小売店は混雑するかもしれません。
そこで消費増税の前に購入した方がよいものについて考えてみましょう。
【住宅】
今回の増税は2%のアップなので影響は少ないと考えますが、住宅のように高額な商品では金額に大きな違いが出ます。
- 5,000万円の新築住宅:消費税8%=5,400万円、消費税10%=5,500万円
- 3,000万円の中古住宅:消費税8%=3,240万円、消費税10%=3,300万円
住宅の購入ではこのように2%の増税であっても数十万~数百万円の違いが出てきます。
ただし新築住宅における土地の代金は消費税の対象外なので、今回の増税には関係がありません。
「増税前に土地だけでも買わなくちゃ」…と思っている人は安心してくださいね。
増税前に不動産を購入する人が増えるのは数%であっても高額になるからですが、少し注意したいポイントがあります。
それは業者が駆け込み需要を狙って、不動産価格を高額に設定している可能性があることです。
そうなると高い価格で購入することになり、損をしてしまうことも考えられます。
また増税の後に価格が下がることも予想できるので、よく考えて購入するようにしてください。
【住宅ローン】
住宅の購入は消費増税の前と後では2%の違いが出ますが、住宅ローンの違いはどうなるのでしょう?
今回の消費増税にともない住宅ローン減税の適用年数が、10年から13年へ延長されることが決定しました。
この変更はあくまで新しい消費税率で住宅(新築、中古、リフォーム)を購入した人のみで、8%で購入した人は該当しません。
3年間の延長により消費増税分の負担は将来的に軽減されますが、先に安く購入するか?後から控除で取り戻すか?は考え方次第です。
【すまい給付金】
一定の品質がある住宅に対して給付されているすまい給付金も、これまでの上限30万円が消費増税に合わせて50万円に増額されます。
しかしすまい給付金を受け取るためには一定の条件があるので、全ての住宅には当てはまならいことを理解しましょう。
※消費増税の前に住宅を購入するべきかを考えた時に、住宅ローンを利用しない場合はトクになる可能性が高く、住宅ローンを利用する際には微妙だと思います。
特に将来的な減税効果を考えると、むしろ消費増税後に購入した方が有利になることもあります。
【自動車】
不動産と同じく高額商品である自動車を消費増税前に購入したいと考えている人は少なくありません。
200万円~300万円もする自動車なら、2%のアップで考えると4万円~6万円の値上げと同じ。
「それじゃ9月までに契約しなきゃ」
それでは遅すぎるかもしれません。
自動車が現状の消費税率なのは納車が2019年9月末までで、10月以降の納車は契約が9月以前であっても10%に増税されます。
つまり現状で半年待ちの新車ではもう間に合わない可能性があります。
自動車を購入する場合は契約ではなく納車で判断することが大切です。
ここまでは高額商品でしたが、次に一般的な商品中から私がオススメしたい事前に購入した方がよいものを紹介します。
【航空券や乗車券】
航空会社が発行する飛行機の航空券やJRの新幹線回数券を事前に購入するのがオススメです。
特に航空会社のオープンチケットで有効期間が長いものをあらかじめ購入することで、数万円の節約になり旅行代の足しとして利用できます。
【テーマパークのチケット】
ディズニーリゾートの年間パスは「2パーク年間パスポート」で大人89,000円、子供56,000円です。
家族4人で計算すると290,000円(89,000×2名、56,000円×2)になり、消費増税されることで値上げが予想されます。
29万円の2%は5,800円ですから、無視できる金額ではありませんよね。
ディズニーやUSJなどの年間パスポートを購入するなら、消費増税の前にした方がよさそうです。
消費増税の前には駆け込み需要が発生しますがそれが一段落したら需要が減り、さまざまな商品で値下がりが想定されます。
消費増税の対象の中で価格の変動が少ない商品を購入するのがおトクなポイントです。
消費増税と軽減税率
今回の消費増税に合わせて低所得者に対する対応として、消費税の「軽減税率制度」が実施されます。
軽減税率とは消費税がかかる品物の一部を増税せずに、8%のまま据え置く制度。
軽減措置の対象は以下の2種類です。
- 食品表示法に規定する飲食料品(酒税法に規定する酒類を除く)で外食は含まない
- 定期購読契約が提携された週2回以上発行されている新聞
つまりお酒を除く飲食品と毎日配達される新聞は増税されずに、税率が8%のままに据え置かれます。
- スーパーで購入する食品(野菜、果物、肉、魚、お菓子、牛乳等)
- コンビニで購入する食品(炭酸飲料、フレッシュジュース、ミネラルウォーター等)
- 毎日配達される新聞
- その他
ここで注意したいのが「酒類」や「外食」は食品であっても軽減税率には該当しないこと。
酒類は判断がしやすいのですが、外食は幅が広いので少し分かりにくいかもしれません。
軽減税率が適用されない外食とはどのような形態なのかを詳しく見てみましょう。
外食の定義はあいまいかも
外食の定義は「提供する場所」「サービスの提供」などの状況から、軽減税率が判断されます。
例えばテーブルや椅子、カウンターを使用した飲食提供は外食であり、軽減税率は適用されません。
またピザや出前などのケータリングは、あくまで飲食料品を運ぶだけなので軽減税率の対象です。
さらに学校の給食や有料老人ホームは、料理の提供やケータリングを含みますが軽減税率に含まれます。
これだけでは本当に分かりにくく、軽減税率の規定もあいまいに感じてしまいます。
それでは政府が提供している広報で出されている例を見てみましょう。
【ハンバーガーショップの買い物】
店内で飲食するために購入したハンバーガーやポテト、ドリンクは飲食サービスがともなうので、消費税率は10%
ただし自宅や職場で食べるためにテイクアウトしたハンバーガーは外食にはあたらず、軽減税率が適用されるので8%の消費税です。
【コンビニでの買い物】
コンビニでお弁当やおにぎり、サンドイッチを購入した場合は、軽減税率が適用されることから8%の消費増税。
ただしコンビニに併設されたイートインスペースでの飲食が目的であれば、消費税は10%が適用されます。
【パーティーでのケータリング】
パーティー用にケータリング業者が出張して食事や飲み物を提供した場合は、軽減税率が適用されずに10%の消費税です。
ただしパーティーのケータリングでも単に料理を運ぶことが目的であれば、8%の軽減税率の対象です。
【出前】
中華店、そば店、ピザ店などの出前は、飲食料を届ける行為なのでサービスは提供されません。
単なる出前であれば軽減税率が適用され消費税は8%です。
外食の判断は線引きが難しく、あいまいな印象を受けます。
例えばコンビニで持ち帰り前提で購入したおにぎりを、気が変わってイートインスペースで食べることもあるでしょう。
しかしこのケースでは軽減税率が適用されて、8%の消費税で済みます。
まさかお店の人が見はっていて注意することもできないでしょうから、やはり無理がありそうな制度ですね。
一体商品と軽減税率
一体商品とはお菓子のおまけとしておもちゃが同封されていたり、グラスとジュースがセットされていたりする商品のこと。
つまり食料品と食料品以外の商品が混在している商品で、原則としてこれらは軽減税率の対象ではありません。
ただし販売価格が1万円以下でかつ軽減税率の対象品が2/3を占める場合は、全体が軽減税率の対象です。
例えば500円のお菓子でおまけのおもちゃが100円相当だった場合は軽減税率の対象です。
子供の大好きなおもちゃ付きのお菓子もこれなら大丈夫ですね。
軽減税率で起こるトラブル
このように食料品や新聞は軽減税率により増税されることはありませんが、無理やり線引きしたことで増税当初は混乱が予想されます。
【コンビニのイートインスペース問題】
コンビニで食品を購入してイートインスペースで食べることが多くなりました。
コンビニ企業もイートインをこれからのビジネスチャンスとして注目しており、新しくオープンする店舗には積極的に導入しているようです。
しかしこのイートインスペースで食べると消費税が10%、駐車場の車で食べると8%になるのが今回の増税。
それでは8%の消費税で購入したものをイートインスペースで食べたら問題になるのでしょうか?(やはり怒られるのでしょうか?)
また店員の負担も大変で全ての顧客に対して、持ち帰るかを聞いて課税を判断しなくてはなりません。
現状でも答えがでていない「コンビニのイートインスペース問題」ですが、お店によって対応に違いが出ることから大きなトラブルへと発展することも考えられます。
【ファストフードの店内飲食問題】
これもコンビニと同様ですが、店内で食べることを前提にするなら消費税は10%、持ち帰りなら軽減税率の8%です。
しかし持ち帰るつもりで購入しても気が変わったり、友達に会って一緒に食べたりすることもあります。
コンビニ同様ファストフード店でも購入した時点の意思で消費税が決まるので、その後の気持ちの変化をとがめるのは難しいと思います。
それでもまじめな店舗では顧客に注意してトラブルに発展する可能性があります。
【トラブルの原因を考える】
軽減税率の導入で起こるトラブルを紹介しましたが、このようなトラブルが起こる原因を考えてみましょう。
分かりやすくファストフードを例にして考えます。
まずはファストフードの飲食スペースは有料なのか?無料なのか?どちらでしょう。
一般的には商品を購入した人が無料で利用できるスペースだと考えられますが、今回の軽減税率はあくまで消費税の税率の違いであって商品の価格は関係ありません。
つまり消費税は納税するために一時的にファストフード会社が預かっているお金であり、売り上げとは別の管理です。
そうなると軽減税率が「適用されないハンバーガー」でも、「適用されるハンバーガー」でも会社から見ると値段も変わらず利益率も同じ。
つまりどちらの商品であっても同じ利益が出るので、両方とも飲食スペースを利用する権利があると私は考えています。
あくまで違うのは税金である消費税なので、持ち帰りで購入したものを店内で食べても文句を言えるのは税務署の職員だけではないでしょうか?
【あくまで脱税しているのはファストフード会社ではなく顧客であり、ファストフード店の店員が目くじらを立てる必要はない】
つまり店頭で持ち帰りとして購入した商品を店内で食べることによりファストフード会社に損害を与えることはなく、あくまで軽い脱税にあたる行為と考えるのが妥当です。
そのことからファストフード店やコンビニは、目くじらを立てないで穏やかに見守ってほしいですね。
軽減税率のデメリット
このように低所得者対策として導入が決まっている軽減税率ですが、実際のところ公平な制度なのでしょうか?
世間の反応を見ると「これでは金持ちが得をする制度だ」などの声も聞かれます。
しかし低所得者や年金生活者の中には、食費が高くなることで生活が破綻する人もいます。
軽減税率のメリットは生活必需品である飲食料品に対して増税しないことで、低所得者対策として導入する意味は高いと考えられます。
しかし…軽減税率は金持ち優遇であって生活困窮者にとっては、意味のない制度だと考える人もいまだに大勢いるようです。
この問題を考えるには軽減税率のメリットではなくデメリットを理解することが必要です。
【デメリット1】税収が少なり将来的にさらに増税の可能性
食料品の増税をやめることはその分、税収が少なくなることを意味しています。
社会福祉にかかる費用が増している状況で消費のメインである飲食料品を増税しないことは、税収が足りなくなる要因となり更なる増税の可能性を残します。
【デメリット2】お金持ちが有利になる
例えば毎月の給与が20万円の世帯と80万円の世帯で、利用できる飲食料品の費用には大きな違いがあります。
家計調査では低所得者と高額所得者では、飲食料品の購入(食費)が倍近く違うことが分かっています。
牛肉で考えるとオーストラリア産と国産黒毛和牛では価格が数倍も違うことから、高額な商品を購入した方が減税効果を受けられるでしょう。
そうなるとお金持ちの方が減税効果は高く、優遇されている制度と言われても仕方がありません。
【デメリット3】企業の手間がかかる
スーパーやコンビニの多くでは食料品以外に酒類や日用雑貨を販売しており、軽減税率の対象と対象でない商品が混在しています。
そのために店舗の管理作業が増加することが予想されており、今までの画一的な商品管理でシステムは対応できません。
このため企業では新たなシステムを導入したり、新規スタッフを募集したりする必要がありコストが発生します。
そしてその増えたコストが最終的に商品の価格に転化され、物価上昇を招く可能性が出てきます。
つまり軽減税率で2%消費税が安くなっても、商品の価格が3%上がれば結局は消費者の負担が増加する結果になるでしょう。
【デメリット4】トラブルを誘発する
前述したファストフード店の店内飲食トラブルのような問題があちこちで発生するかもしれません。
またスーパーでは商品ごとの税率の付け替えミスにより、顧客とのトラブルをさらに誘発するでしょう。
特に軽減税率開始直後はお店の従業員も軽減税率の対象商品を理解していないこともあるので、このようなトラブルが日本中で起こることが想定されます。
軽減税率で発生するデメリットを紹介しました。
個人的な意見として近い将来に軽減税率は廃止されて、全ての品目で消費税が10%になると思っています。
国民も増税が必要なら他の税を新設するのではなく、軽減税率を廃止する方を選択するでしょう。
軽減税率はあくまで消費税10%導入時の世論を抑えるカンフル剤であり、最終的には廃止を計画されていると考えることが無難です。
キャッシュレス・消費者還元事業
「キャッシュレス・消費者還元事業」は2019年10月から始まる消費増税にともない、景気対策として9か月間のみ実施される制度。
これは消費増税による購買意欲の低下を防ぐことを目的とした国のポイント制度で、キャッシュレスで購入した商品に対して5%のポイントを還元する内容です。
キャッシュレスの対象は「クレジットカード」「電子マネー」「決済代行」などキャッシュレスサービスが利用が予定されており、それらで決済することにより購入代金の5%がポイント還元されます。
原則ポイントは1ポイントが1円として利用できるので、実質的には消費税が10%から5%に引き下げられたと考えてください。
また軽減税率が適用されている飲食品についての取り扱いは決定していませんが、他の商品と同じくポイント還元が適用されると見られています。
ただし車や住宅などの高額商品は、控除などの対策で既に減税されていることから、ポイントの対象にはならない予定です。
キャッシュレス・消費者還元事業についてはこれから制度が確定するので、ニュースに注目してキャッシュレス化の準備を始めてくださいね。
クレジットカードを使った決済もキャッシュレスのひとつですが、もっと手軽に支払いができるスマホ決済のほうがお得に買い物をすることができます。
特に使い勝手が良いといわれているのが「PayPay(ペイペイ)」
店舗数も多くキャンペーンも定期的に開催しているので、お得に買い物ができますよ。
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これからの消費税
日本の消費税に該当する税金は他の国にも存在しており、「VAT(付加価値税)」と呼ばれています。
海外旅行でお土産を買うとレシートの最後に「VAT」と項目があるのですが、これが日本の消費税と同じ税金。
ここで各国のVATを見てみましょう。
- スウェーデン:25%(VAT)、12%(軽減税率)
- フィンランド:24%(VAT)、14%(軽減税率)
- ギリシャ:24%(VAT)、13%(軽減税率)
- オーストリア:20%(VAT)、10%(軽減税率)
- フランス:20%(VAT)、5.5%(軽減税率)
- イギリス:20%(VAT)、なし(軽減税率)
- ドイツ:19%(VAT)、7%(軽減税率)
- その他
これを見てみると日本の消費税は増税後でも10%と低い印象を受けます。
ただし税金の比較はあくまで全ての項目を比較する必要があるので、消費税とVATの比較だけで日本が低いとは言えません。
ヨーロッパの中には課税をVAT中心にして、他の税金を抑えたり年金や保険制度を無料にしたりしている国もあります。
日本では所得税が最高45%もあり年金、公的保険は別途徴収され総合すると税負担は少ない国ではありません。
このような税環境の中、最近では高齢化や少子化が進んでいることから、社会福祉を求める声が高く公共サービスの幅も広がっています。
しかし社会福祉を充実するには資金が必要ですから、国は税収を上げなくてはならないでしょう。
そして日本のいつかは消費税が25%の国になるかもしれません。
「充実した福祉環境の中で30,000円のジャケットを買うのに37,500円を支払う」ことと「福祉を一定程度に抑えて30,000円のジャケットを買うのに33,000円を支払う」
そういったことが考えられます。
税金は生活していく上で切っても切り離せないものなので、今後の動向もしっかりと見守りたいですね。