イザと言う時に知っておきたい!相続における法定相続人の範囲と順位についてご紹介します


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人間には寿命があり、いつかは亡くなってしまうのが運命です。
特に病気や事故がない限りは、日本人の平均寿命である男性80歳、女性87歳が寿命の目安になりますが、実際には寿命を事前に知ることは不可能でしょう。

親しい親族が亡くなるのは残された者にとってはとても悲しいこと。
特に家族が亡くなった場合には、悲しみだけでなく「喪失感」や、中には「軽いうつ症状」まで引き起こしてしまうことがあります。
しかし、現実には悲しんでばかりいられない状況があることを忘れてはいけません。
「死亡届」「年金手続き」「埋葬手続き」など、やることは山ほどありますが、家族にとって大切な手続きがあります。

そう…故人の遺産相続を開始しなくてはいけません。
イザと言う時に慌てないように遺産相続を理解することは大切なこと。
今回は遺産相続における「法定相続人」について解説します。

故人の残した資産(財産)を分配するのが遺産相続

人が亡くなると故人(亡くなった人)が残した資産を整理する必要があり、基本的には残された親族が承継(引き継ぐこと)することになります。
また遺言書などにより個人の意思が明確な場合には、親族以外の人が承継することもあります。

このように遺産相続は亡くなった故人を「被相続人」とし、承継する人を「相続人」と呼び、被相続人の資産を相続人へ分配する作業だと考えて下さい。

遺産相続で複数の相続人がいる場合、誰もが自分の優位性を主張すると、対立や揉め事が起こってしまい円滑な資産承継ができない事態を引き起こしてしまいます。
特に相続の対象になる親族は、範囲を広げすぎると資産が分割され過ぎて、残された家族の生活に支障が出てしまうこともあるでしょう。
そこで民法では「法定相続人」を定め、相続の優先順位を定め、必要以上の遺産の分散を防いでいます。

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法定相続人とは民法で定められた相続の優先順位

もし、法定相続人が規定されていなかったら、どのような事態を招く恐れがあるのでしょうか?
法定相続の規定がない架空の話ですが、Aさんの相続を例にして見てみましょう。

【法定相続人が決められていない世界での相続】
Aさんは5,000万円の資産を残したまま亡くなってしまいました。
Aさんには妻と子供が3人(孫も4人)、また兄弟(叔父)が2人に甥姪が4人います。
さらに高齢のお母さんまで健在でした。
そして各々がAさんの残した5,000万円を遺産相続として要求します。
Aさんの遺産の中には奥さんが住む自宅も含まれており、このままでは奥さんの生活が破綻してしまいます。
話合いはなかなかまとまらず、ついに身内同士の裁判へと進むのでした。

どうですか?恐ろしい話ですよね?
相続人が決められていないと、遺産に群がる親族が現れて、Aさんのように残された家族が大変な思いをすることが想定されます。
しかし、法律で法定相続人を予め規定していればこのような争いが起こる心配はありません。

法定相続人とは被相続人が残した財産を、相続人が円滑に相続するために決められた優先順位。
つまり相続できる人とできない人を法律で定めているのです。
これによって不必要な争いを避ける効果もありますね。
つまり法定相続とは、順位の高いグループに属する人が相続権を得る法律規定です。

法定相続人(1)配偶者は常に相続人になる

民法で定められている法定相続人では、「配偶者は常に相続人になる」と規定されています。
つまり、被相続人の配偶者(妻や夫)に順位はなく、常に相続人になります。

Aさんのケースでも奥さんは順位に関係なく相続人であり、遺産を相続する権利があります。
また配偶者以外に法定相続人がいないケースでは、配偶者が全ての遺産を相続することになり、その意味では一番強い権利があると言えるでしょう。
配偶者がいる相続では、配偶者と優先順位が高い順位の相続人が法定相続人になります。
反対に配偶者がいない相続では、優先順位が高い順位の相続人だけが法定相続人になれるのです。

配偶者は被相続人と生計を共にしており、遺産相続が行われないと生活ができなくなってしまう恐れが出てきます。
そこを考慮した法律になっているのですね。

法定相続人(2)子供は第1順位の法定相続人だ

配偶者は常に相続人ですが、それ以外は順位が付けられた法定相続人となります。
まず妻に次ぐ第1順位ですが、これは被相続人の子供です。子供が複数人いる場合は、全てが法定相続人であり、平等に分割するように規定されています。
Aさんのケースでは3人の子供がいることから、法定相続人は妻と子供3人の合計4人になります。

法定相続は原則として配偶者と1つの順位のグループにしか認められないので、配偶者が生きている場合は、配偶者と子供、配偶者が既に亡くなっているケースでは子供だけが法定相続人になります。

配偶者の法定相続の権利は遺産の1/2で、子供は全員で1/2です。
すなわちAさんのケースでは奥さんが2,500万円、子供が1人当たり1/6(1/2÷3)ですから833万円になります。

法定相続人(3)なんと親も法定相続人になれる

子供は第1順位の法定相続人ですが、第2順位は被相続人の親です。
被相続人が高齢で亡くなった場合には、親は既に他界していることが多いでしょうが、若くして亡くなった場合には親が健在な場合が多く見られます。

あくまで親は第2順位なので、被相続人に子供がいる場合には、相続することはできません。
被相続人に子供がいないケースのみ法定相続人となるのです。

それではAさんのケースではどうでしょうか?
Aさんには奥さんと子供がいるので、お母さんが健在であっても法定相続人になることはできません。
もし、Aさんに子供がいなかったと仮定した場合では、配偶者である奥さんが2/3、親であるお母さんが1/3の遺産相続をする権利が認められているので、奥さんは3,333万円、お母さんは1666万円を相続できます。
お父さんも生きていた場合には1/3をさらに2等分するので、1/6(1/3÷2)ずつ相続することになるでしょう。

法定相続人(4)第3順位は兄弟姉妹に権利が及ぶ

被相続人に子供がおらず、また両親も既に他界している場合には、第3順位の法定相続人として兄弟姉妹が規定されています。
兄弟姉妹の権利は平等になっており、生存する人数により平等に頭割りで計算されます。

Aさんのケースで子供と親がいないと仮定すると、兄弟(叔父)が2人いますので、この2名が法定相続人になります。
権利は配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4と規定されているので、配偶者は3,750万円、叔父は一人1/8(1/4÷2名)になり、625万円が相続できることになります。

法定相続は4つの集団での順位だと考えれば解りやすい

このように法定相続は「妻」「子供」「親」「兄弟姉妹」と4つのグループが存在しています。
妻は常に相続人ですから順位はありません。しかし、他のグループでは順位が高いグループにしか、相続の権利はないのですね。

被相続人に対して自分がどのグループに属するかを事前に知ることは大切なこと。
法律を理解して自分の立場を理解するようにしましょう。

法定相続人の権利を代襲する代襲相続人とは?

本来、法定相続人である子供が亡くなっている場合、その子供の相続権は無くなってしまうのでしょうか?
実は法律では「代襲相続」が認められており、法定相続人の権利を亡くなった子供の子(孫)が引継ぐことができます。

Aさんのケースでは子供が3人いますが、その中の長男が事故で亡くなっていたとします。
長男には2人の子供がおり、被相続人のAさんにとっては孫です。このケースでは孫が代襲相続人として、他の子供と同じ権利を持つことになります。

先程も説明した通り、Aさんのケースでは奥さんが1/2、子供が3人で1人1/6の相続が認められます。
長男が亡くなっているので、その中の1/6は長男の子供(孫2人)に代襲相続され、それぞれ1/12(1/6÷2)が法定相続分になります。
もちろん孫が1人の場合は、子供と同じく1/6を相続できます。
お父さんの権利を兄弟で受け継ぐと考えたら解りやすいですね。

代襲相続のややこしい部分を解説しましょう

上で紹介した例は比較的解りやすいのですが、代襲相続にはちょっと複雑なケースもありますので、簡単に説明します。

【被相続人の子供も孫も亡くなっている場合】
被相続人が亡くなった時点で子供や孫も亡くなっているケースでは、ひ孫が代襲相続人なることができます。
これは直系卑属(ちょっけいひぞく)の場合は、再代襲、再々代襲が認められており、法定相続人になれるからです。

直系卑属とは「被相続人からみて直系の関係にある血族のこと」であり、子供、孫、ひ孫…を指します。
あくまで血縁関係が必要なので、子供や孫、ひ孫の嫁は直系卑属には該当しません。

【兄弟姉妹が亡くなっていた場合】
例えば被相続人に子供がなく両親も亡くなっている場合では、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になります。
Aさんのケースで子供と母親がいないと仮定すると、兄弟姉妹である叔父が妻と共に法定相続人になりますが、その中の叔父の一人が既に亡くなっているとします。
このケースでは叔父の子供である甥姪が代襲相続の対象になります。

権利は叔父の権利を代襲するので、甥姪が2人いたら1/16(1/8÷2)となり312万円を相続することができます。

このように兄弟姉妹が法定相続人になった場合には、その子供である甥や姪が代襲相続人になることができます。
しかし注意点があります。直系卑属ではない甥や姪の代襲は1代に限られており、甥や姪が亡くなっている場合では、その子供に代襲相続権はありません。
兄弟姉妹の法定相続の代襲相続はあくまで1代に限った措置だと覚えておきましょうね。

えっ!ジイちゃんやバアちゃんまで相続人になれるの?

両親は第2順位の相続権を持っているので、第1順位である子供がいれば相続人にはなれないことはもう理解して貰ったと思います。
またAさんのケースで子供がいなかった場合では、法定相続人は奥さんとお母さんになることは説明しました。
それではそのケースでお母さんは亡くなっていますが、祖母が生きている場合はどうなるでしょうか?

整理してみるとAさんには奥さんはいますが、子供はいません。
両親はすでに他界していますが、祖母が元気に暮らしています。
兄弟は上記の通りです。
この場合、驚くことに両親の法定相続権が祖母に移ります。
これは正確には代襲相続とは言いませんが、祖母祖父も両親と同じく第2順位グループに属していることから起きる現象。
また考えづらいのですが、曾祖父母も第2順位グループなので、祖父母が亡くなっているケースでは曾祖父母が法定相続人になります。

ちょっと話がややこしくなってきましたが、皆さんついてきてくださいね。

養子の法定相続の考え方は実子と同じ

何らかの事情で養子を迎えている人は少なくないでしょう。
中には実子と養子がいて、相続で争っていることも珍しくありません。
しかし、民法では実子も養子も養子縁組を行った日から嫡出子となり立場は同じになります。
ところで皆さんは養子にも種類があるのをご存じでしたか?

【普通養子】
普通養子は一般的に多く利用されている制度で、養子縁組を行っても実親との親子関係は継続します。つまり養子になっても養親と実親両方の繋がりが維持されるのです。
つまり相続では養親だけでなく、実親の法定相続人の権利も持ち、両方の遺産相続を受けることができます。

【特別養子】
特別養子は養子縁組が成立することで、実親との親子関係は無くなります。
つまり養親のみが法律上の親となり、実子と同じ扱いを受けます。
ですから実親が亡くなっても、法定相続人の権利はありません。
あくまで法律上の親である養親のみ権利が生じることになります。

このように養子には2種類の制度がありますが、法定相続人としての差はありません。
養子だからと言って不利益は起こらないのですね。

養子に関して民法と相続税法の見妙なずれがある

相続においてややこしいことの一つに、「民法」の規定と「相続税法」の規定に微妙な考え方の違いがあります。
民法では実子であっても養子であっても、扱いは平等であり法定相続に関しても差別はありません。
しかし相続税法では全ての養子を認めてしまうと、相続税の基礎控除の不正が起こることから、養子の人数に規制を行っています。

■ 被相続人に実子がいる場合:養子は1名まで基礎控除対象
■ 被相続人に実子がいない場合:養子は2名まで基礎控除対象

この話はあくまで相続税を計算する時の基礎控除を算出する際に使うもので、法定相続人としての養子の権利を侵害するものではありません。
例えば相続税を払いたくないお金持ちが、手当たり次第に養子縁組を行い、納税逃れをしないための規定です。

あくまでここでは、民法と相続税法に考え方の違いがあることを認識すれば結構です。

相続放棄をすると代襲相続は認められない

例えば被相続人の遺産を何らかの事情で相続したくない場合があります。
特に被相続人に多額の借金がある場合には、安易に相続してしまうと、相続人がその借金まで相続しなくてはいけません。

そこで法定相続人が相続を放棄することを「相続放棄」と言います。
相続放棄で勘違いしやすいのが、その手順であり単に遺産を受け取らなければ相続放棄になると考えていたら、それは大きな間違いです。
遺産を受け取らなくても何もしなければ「単純承認」として、法定相続人になってしまい、被相続人に借金があれば支払う義務が生じるでしょう。

そこで相続放棄を行う手順が大切なのですが、これがは「相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申し出ること」とされています。
つまり、被相続人が亡くなったことを知った日から、3ヶ月以内に届け出を行うことが必要条件です。

また相続放棄を行うと相続放棄を行った人の子供への代襲相続は認められなくなります。
Aさんのケースでは子供が3人いますが、全ての子供が相続放棄を行うと第1順位の法定相続人がいなくなり、また代襲相続は発生しないので、相続権は第2順位のお母さんへ移ります。

相続の承認にも種類がありますので、またの機会に説明しますね。

あくまで相続は法定相続人の話し合いで決めることができる

法定相続人の規定では妻と子供がいる場合「妻が1/2」とか「子供が全員で1/2」と規定されていますが、実はこれはあくまで法定相続人を確定させるのが主目的で相続する遺産の額は話合いで決めることができます。
もちろん話し合いがこじれた場合では、規定通りに分配する必要がありますが、話合いで妻が2/3、子供達が1/3になっても全く問題はありません。

法定相続人の規定はあくまで相続人を規定することと、話合いがまとまらなかった場合の相続割合を規定している法律だと理解した方が良いでしょう。

遺言書がある場合の法定相続人の立場

基本的に相続は法定相続で行われることが多いのですが、近年では終活ブームもあり遺言書を用意しているケースも少なくありません。
中には遺産の一部を寄付したり、海外ではペットの犬に数億円を残したりするケースもあります。

そこで大事なのが遺言書と法定相続の力関係。
実は遺言書の内容の方が、法定相続よりも優先され、遺言書の内容に沿って相続を行わなくてはいけません。

Aさんのケースで、亡くなった後に机から遺言書が見つかってそれが適法に作られていたとします。
中身は「相続は奥さんに全ての財産を相続させる」と記載されていました。
このケースでは遺言書通りに奥さんへ全ての相続が行われますが、それでは代1順位の子供達があまりにも可哀そうなので「遺留分」が法律で認められています。
遺留分は遺言書であっても侵害できない法定相続人の権利であり、最低限の遺産相続権だと思って下さい。
詳しい説明は別の機会に行いますが、法定相続人は遺言書があっても最低限の相続権はあると覚えておいて下さいね。

法定相続人から排除させることはできるのか?

いままで説明したとおり法定相続人は民法で定められた権利です。
しかし、「いくら次男でもあの親不孝者には一銭も財産を渡したくない…(怒)」などの感情を持つことがありますよね。
しかし何もしないと次男は法定相続人となり、親が亡くなった後には規定通りの相続金を受け取ることができます。
また遺言書を書いても遺留分が残ることから、「一銭も渡したくない…」との希望を叶えることはできません。

法定相続人の権利を抹消するには家庭裁判所から「法定相続人の排除」の許可を受けることが必要です。申立てにより法定相続人から排除させられる条件をいくつか紹介しましょう。

■ 法定相続人から虐待を受けていた場合
■ 法定相続人が著しい非行を行っていた場合
■ 法定相続人が被相続人に重大な屈辱を与えていた場合
■ 法定相続人が犯罪を行い、有罪判決を受けていた場合
■ 法定相続人が無断で被相続人の財産を侵害した場合
■ 法定相続人の借金を被相続人が肩代わりした場合
■ 法定相続人(配偶者)の不貞行為
■ その他

このような条件に当てはまる法定相続人には、相続なんてさせたくないですよね?
私もそう思います。
反対にこのような行為を行っている人は、将来被相続人から法定相続人の権利を排除される可能性がありますので、心を入れ替えてみるのも如何でしょうか?

排除の手続きは「亡くなる前に被相続人が行う」「遺言書に詳しく記載して、亡くなった後に遺言執行者(弁護士など)が行う」などの方法があります。
どちらにしても法定相続権の排除は簡単に行われるものではなく、家庭裁判所も慎重に審議を行います。
特に被相続人が亡くなった後には、裁判官も法定相続人の意見しか聞くことができないので、どうしても排除を行いたい場合には生前に手続きを行うことをオススメします。

法定相続人を理解することで無用なトラブルを避ける

法定相続人を確定するのは簡単なようで難しいケースもあります。
特に代襲相続などが関係すると複雑になり、遺産相続の手続きが長期化する原因にもなります。
さらに遺言書が出てくると血族以外の第三者が関係してくる可能性もあり、どんどんと面倒くさい状況へ陥ってしまうでしょう。
法定相続人の関係性を普段から理解して、イザと言う時に慌てないように誰が法定相続人に該当するのか把握することが重要ですね。

“あとは相続人から排除されないように親孝行は忘れずに!”

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この記事を書いた人
moose

moose

会社経営を経て夢のセミリタイヤを45歳で実現し、のんびりするはずが性格なのかファイナンシャルプランナーとして独立するはめに(泣)…成人した子供よりもポメ2匹を溺愛しています。のんびり書きたいライターです。
さがす