「私も主人ももう55歳、働けてもあと10年くらいだわ。
今の預金で老後は大丈夫かしら?」
「そうそう年金もあてにならないと聞くし、投資は怖い…
働ける間に節約して預金に励むしかないわよね」
…最近このような話をよく耳にします。
日本は長い不況から脱出の兆しが見られるにも関わらず、一般市民の間には老後の不安と金融への不信が未だに大きく残っているようです。
そこで金融に詳しくない人が信頼している銀行預金とインフレの関係について簡単に説明してみましょう。
お金って何かをまず考えてみましょう
私を含めて誰もが大好きなお金ですが、お金っていったい何なのでしょうか?
硬貨は銅や銀、アルミでできた金属です。
そして紙幣は特別な紙に印刷された印刷物。
そうお金と呼ばれる物自体には価値はありません。
昔は「金本位制」と呼ばれる制度があり、金属である金を通貨として使用し、金の価値を貨幣価値にしていました。
しかし、それは大昔のことであり、現在では「管理通貨制度」として各国の政府によって紙幣(硬貨も)が発行されており、政府の信用によって為替市場が価値を決めています。
財布の紙幣をちょっと覗いて見て下さい。
日本の紙幣には「日本銀行券」と印刷されていますよね。
そうです。日本のお金とはあくまで日本銀行が印刷した紙であり、その価値は国の信用(政府の信用)によって上下していたのです。
貴方はお金の価値が上下するって知っていますか?
それではお金の価値はどのように決められているのでしょうか?
「誰か偉い学者が決めている」「各国政府の話し合いで決めている」「いやいや国連で決めている」…
うーん、どれもはずれですね。
答えはお金の価値は国際市場で決められています。
つまり人と人の取引によって価値が決められているのです。
実際には「為替市場」と呼ばれる市場で、通貨取引を行い価値が決められることになります。
市場と言っても為替の場合、株式のように取引所がある訳ではなく、直接金融機関同士が取引を行うインターバンク市場がメインになりますので、あくまでバーチャルな市場だと思って下さい。
ニュースで「ニューヨーク外国為替市場で円高が進んでいます。」と流れたら、それはアメリカの銀行取引でドルに対して円が高くなっていることを意味しており、アメリカの通貨であるドルに対して円が高くなっていることを意味しています。
■ 円高とは:1ドルが100円だったのが、1ドルが80円になること。
簡単に説明すると1ドルで100円に交換できたのに、円高で80円にしか交換できなくなる状態。
つまり円がドルに対して値上げしたことになる。
■ 円安とは:1ドルが100円だったのが、1ドル120円になること。
簡単に説明すると1ドルで100円に交換できたのに、円安で120円に交換できるようになった状態。
つまり円がドルに対して値下げしたことになる。
このように円高、円安と為替は日々動いていますが、ここで覚えて貰いたいのは、貨幣価値は日々人間同士の取引で上下しており、一定の価値で収まることはないのが現状だと言うことです。
インフレとデフレを理解しなくては資産価値を理解できないぞ
ちょっと難しい話が続きましたが、ここからはもっと簡単に説明しますね。
経済には「インフレ経済」と「デフレ経済」と呼ばれる状態があります。
日本でも数年前までは長いデフレが続いており、景気も悪く失業率や昇給、ボーナスにも悪い影響を与えていました。
デフレ(デフレーション)とは、モノの価値が下がる経済状況で、品物の値段が下がり結果として市場経済が縮小してしまいます。
モノの値段が下がると企業の利益が減ることから、従業員の給与も下がりボーナスも少なくなり収入が減ってしまいます。
そうなると購買意欲がなくなりモノが売れなくなることから、ますますデフレが進行する結果を招くでしょう。
円高の経済状況ではデフレが起こりやすいと考えられています。
反対にインフレ(インフレーション)は、モノの価値が上がり物価が上昇する市況経済のことです。
モノの値段が上がることで企業は利益が増加して、従業員の給与アップやボーナスアップに反映されます。
給与がアップすると収入の増加により人々の購買意欲が増すことから、さらに活気のある強い経済が生まれてきます。
ただし急激なインフレは経済破綻をもたらすので、好ましくありません。
緩やかなインフレが理想だと考えられており、円安の経済状況においてはインフレが起こりやすくなります。
それでは今の日本経済はどのような状況だと思いますか?
実は今の日本はデフレ経済を脱却して、緩やかなインフレ経済に向かうための転換期にあると思って下さい。
日銀の2%インフレターゲットの意味を知っていますか?
デフレの時代。
テレビで輸入品が安く買える特番をよくやっていました。
中には「輸入品大好き主婦」出てきて「デフレ最高っ!」と叫んでいましたが、実はそれは見せかけであって、デフレはあまり好ましいものではありません。
確かに1ドル120円が80円になると、今まで120円で購入していた輸入品が、80円で購入できます。
例えば1枚240円の輸入チョコレートが160円で買えるようになったら、「デフレ最高っ!」って思ってしまうかもしれません。
しかし、日本の輸出品では反対の現象が起こり、海外では日本製品は値上げをしなくては利益が出なくなります。
そしてモノが売れずにそのツケは社員の収入ダウンに現れます。
さらに競争するために無理な値下げや、原価割れで商品を輸出することにもなるのです。
「デフレ最高っ!」な主婦も輸入品を安く買っているつもりでも、旦那さんの会社の利益が減少し、給与やボーナスが下がっていては、全く意味がなかったのですね。
そこで安倍内閣誕生と共に始まったのが経済改革。
新たに日銀総裁に就任した黒田総裁と共に「2%のインフレターゲット」を実現するために様々な政策を行ったのです。
そしてこの「2%のインフレターゲット」が節約預金にとって大きな問題となりました。
なんとなく「政府が景気を良くしているのだな?」とか「まあ自分には関係ないか」などと思っているかもしれませんが、これが貴方の預金を減らす原因になるとしたら、そんなにのんびりしていられますか?
「2%のインフレターゲット」とは安倍内閣の目玉政策の一つで、毎年2%のインフレを実現させるように誘導する政策です。
簡単に解説すると「毎年2%の物価上昇を目指そうぜ!」と言うこと。
現在はこの目標は未だ達成できていませんが、国や政府、日銀は毎年2%の物価上昇を政策の目標として実行していたのです。
2%のインフレが実現すると何が起こる世界になるのか?
それでは政府や日銀が行っている2%のインフレターゲットが実現した世界はどうなるのでしょうか?
私は単なるFP(ファイナンシャルプランナー)で、経済学者ではありません。
さまざまな経済学者の意見もありますが、個人的な見解としては良い経済状況になると思っています。
まず物価が毎年2%上がる意味は、今年100万円で買えた車が、来年は102万円でないと買えなくなります。
2%物価が上昇するのですから当たり前ですよね。
また1,000円の靴が1,020円になるかもしれません。
そうなると10年では20%の値上げ、20年では40%もモノの値段が上がる世界になります。
ただし給与も同じく上昇することが考えられ、毎年2%以上の昇給やボーナスアップによりインフレに対する負担は感じないかもしれません。
これは楽観的な予測かもしれませんが、例えば日本の大卒初任給は1973年には62,300円ですが、2012年には201,800円です。
つまりモノの価値の上昇と連動して、給与も上昇することを歴史が証明しています。
私の子供の頃(昭和40年代)は10円もあれば、色々なお菓子がかえましたが、今では「〇〇〇棒」くらいしか買えませんよね。
緩やかなインフレは収入を増やし、経済を拡大させる働きがあります。
このような未来が日本に来るのでしょうか?
預金の利子の本当の必要性を考えてみましょう
銀行にお金を預けると利子が付きますが、これを「儲け」と考えている人が大勢います。
特に高金利の定期預金などは別ですが、普通預金に付く利子まで同じに考えてしまうのは大きな間違いです。
現在の日本は低金利時代を迎えており、都市銀行では普通預金で0.001%、ネット銀行でも0.02%程度の金利しかつきません。
1億円を都市銀行に預けても、1年に1,000円しか利子が付かない計算です。(税込で約880円トホホ)
実は日本経済の問題はここに隠されています。
今の日本では普通預金や低金利の定期預金に大切なお金を預けていると、気が付かない間にインフレの進行により価値が減ってしまう恐れがあります。
実は預金における利子とはインフレによる資産の減少を抑えることが目的の一つなのです。
「節約して預金に励むしかないわよね」と話していたお母さん。
ここからが本題ですからよく話を聞いて下さいね。
額面と価値は違う…現在の預金金利ではインフレに勝てない
諸説ありますが、私は普通預金の金利は儲けではなく、あくまでインフレのダメージから資産を守るためにあると考えています。
つまり、インフレが2%進んだとします。
先ほどの例で昨年100万円だった車は、値上がりをして102万円になっていました。
100万円をタンスにしまっていると100万円しかないので、さらに2万円を足す必要があります。
しかし、金利が2%の預金に預けていると金利がついて102万円(税金は無視)になるので、お金を足す必要はありません。
つまり金利とはインフレ率に対して同じであれば、預金に悪影響を与えず価値を下がらせない効果があります。
しかし、現在の日本では低金利政策を実行していることから、インフレ政策が先行しており、預金金利は低く抑えられたままと言ってよいでしょう。
ここまで話すともうお解かりでしょう。
大切なお金を低金利で預けていると、インフレが先行して毎年預金の額面は変わりませんが、紙幣価値は下がってしまいます。
本来のインフレ経済ではインフレ率と同等か、定期預金ではそれ以上の金利を付けなくてはいけません。
しかし、現在の日本では金融危機を乗り切るために、銀行や企業の体力作りを先行してアンバランスな金融政策を行っていたのですね。
「節約して預金に励んでもインフレが進むことで毎年預金の価値が下がってしまう」
…これが今の日本の状況だと理解しましょう。
日本の現状は果たしてインフレ経済になっているのだろうか?
実は日本政府や日銀が政策としている「緩やかなインフレターゲット政策」は、未だに実現されていません。
黒田総裁も様々な政策を実行していますが、なかなか目論見通りにはいかないようです。
経済が「インフレであるか?」「デフレであるか?」を見極める方法の一つとして、「消費者物価指数」を比較する方法があり、一定のモノの価格変動を比較するのです。
日銀の政策委員の見通しを紹介しましょう。
■ 2017年:+0.5%~+1.3%の物価上昇(平均+1.1%の上昇)
■ 2018年:+0.8%~+1.6%の物価上昇(平均+1.5%の上昇)
■ 2019年:+1.4%~+2.5%の物価上昇(平均+2.3%の上昇、消費税引上げの影響除く)
実は消費者物価指数は2013年から2014年には上昇しましたが、2015年、2016年は0%ベースに下がっています。
そこで日銀としては上記の計画の元に、インフレを促進させる狙いがあるようです。
2019年には消費税の増税が予定されており、予定通り増税された場合には諸費者物価指数も平均+1.8%程度になると予想されています。
それでも着々とインフレ経済が近づいているのは間違いないでしょう。
それに備える対策方法を見つけることもまた重要な節約と言えるのはないでしょうか?
2%のインフレターゲットであれば2%以上の金利運用が必要
上記の通り、現状ではまだインフレ率が2%に達していません。
しかし、政府、日銀としてはその目標を達成するために今年も様々な政策を行うでしょう。そうなると低金利で抑えられた預金の価値は、どんどんと少なくなってしまいます。
せっかく節約して預金しても0.001%の普通預金では、2%のインフレ率に勝てるはずがありません。
本来であれば2%のインフレ率であれば、銀行預金も同等以上の預金金利がなくては預金者に負担を与える経済になってしまいます。
その状況が現在の日本経済だと思って下さい。
「どこかに2%の金利が付く定期預金がありませんか?」
…時々聞かれる話ですが、日本にはそんな預金はありません。(期間限定キャンペーンを除く)
そうなると銀行の預金では大切なお金の価値を守ることは難しいと判断せざるを得ないようです。
このアンバランスな経済の中、重要なのがインフレ率に負けない利率で大切な資産を運用すること。
「投資は怖い…」そんなこと言っていられない状況が既に始まっていたのです。
預金の安全神話はこの際忘れてみませんか?
「とりあえず銀行に預けておけば安心だ」「銀行も潰れる時代だからタンス預金に」などと考えている貴方。
そのまま放置すると毎年2%程度価値が下がってしまうかもしれませんよ。
特に日本では「銀行安全説」がありますが、低金利時代では銀行は儲かりますが、預金者が儲かることはありません。
預金の安全神話はこの際忘れてしまいましょう。
日本ではお金の額面価格が減らなければ、お金が少なくなっていないと考えている人が大勢います。
しかし本当のお金の価値は額面価格ではなく、「その額面価格で何が買えるか?」との価値が大切だったのです。
「普通預金にお金を預けると価値が年々減ってしまう」この危険性を十分に理解して下さいね。
「銀行預金が一番安全よ」
…本当にそう思えますか?
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節約と投資…どちらが現在の日本で有利なのか考えてみよう
一生懸命節約をして毎月5,000円を定期預金に預けているとします。
年間で6万円ですが、金利は数円にもなりません。
その間にインフレが進むと、少ない金利を超えて翌年には6万円の価値さえ無くなってしまうかもしれません。
それでも普通預金だと悪くても価値の減少は2%までに抑えることができます。
反対に投資ではどうでしょう。
近年活況の株式市場ですが、日経平均が1万円を下回っていたのが信じられないくらい回復して、2万3千円程度になっています(2018年1月現在)。
しかし、投資はあくまで元本が補償されない商品が多く、2%どころ資産が半減してしまう可能性も少なくありません。
しかし、上場株式の中には配当だけで3%を超える企業も少なくなく、中には4%以上の配当を出す大手企業(日産など)もあります。
株式投資が怖い人は投資信託や債券投資があります。
投資信託はプロの投資会社が集めたお金で様々な企業に投資を行い、利益を分配する商品で特に金融知識がなくても任せることができます。
ただし、元本保証ではないので投資信託商品によっては元本が大きく減る可能性もあります。
債券投資は国や企業が発行する債券を購入して、金利を受け取り満期に元本が償還される商品ですが、日本では「個人向け国債」が有名です。
また社債と呼ばれる企業が発行する債権を購入して、金利を受け取る方法もあります。
携帯電話で有名な「ソフトバンク」は定期的に社債を発行しており、金利は2.03%程度に設定されています。
償還が7年後なので、7年先までソフトバンクが倒産しないと考えている人には良い選択かもしれません。
債権の中には外国の債権や、外国通貨立ての債権がありますが、これらは為替の影響を受けるので初心者は購入しない方が無難でしょう。
投資アレルギーから脱出しなくてはいけない
日本人はお金の話をすると「いやらしい」「汚い」「品がない」など嫌われてしまう傾向があります。
でも私を含めて皆さんお金が大好きですよね。
そこで大切なのが情報を得る努力を行うことです。
節約には努力が必要なのと同じく、投資にも情報取集の努力が必要です。
きっと探してみると近くに、「投資歴〇〇年」と言わんばかりの知人がいることでしょう。
そのような人は損をしたり、得をしたり様々な経験を持っています。色々と話を聞いて自分に合った安全な投資を教えて貰うことも大切です。
まずは投資アレルギーから脱出することを目的に情報を集めてみては如何でしょうか?
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お金って結局は日本銀行券であることを忘れてはいけない
投資を極端に嫌う人がいます。
まるで博打のように嫌うのですが、実は銀行預金も投資と何ら変わりません。
銀行に投資をして銀行が集まったお金で様々な金融商品に分散します。
また住宅ローンとして別の人へ貸し出すこともあるでしょう。それらの行為は全て投資と変わりがないのです。
私の友人に個人向け国債を勧めた時に、「日本国債は将来日本が破綻したら価値がなくなるから現金で持っておくよ」と言われました。
面白い話ですよね。
もともと現金は日本銀行券であり、日本政府の信用によって価値が決められています。
つまり国が破綻したら日本国債も日本銀行券(紙幣:お金)も破綻してしまいます。
あくまでお金は紙切れである日本銀行券。
国の信用が傾けば全てが傾くのだと言うことです。
だからこそ過剰に恐れる必要など全くありません。
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節約を無駄にしないように今できることを考える
日本では節約は美徳であり、節約することで将来の不安を払拭させることもできます。
しかし、せっかく節約して貯めたお金も、現在の金融政策環境では無駄になってしまう可能性が否定できません。
日本の現状は歪んだ金融政策上にあることを理解して、節約を無駄にしないように投資を考えることも重要だと思います。
預金価値が毎年2%も減ってしまうなんて…本当に恐ろしいですよね。
それでも貴方は「節約=預金」と言い切れますか?
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