介護保険制度は介護が必要な高齢者や一部の障がい者に対して提供される福祉サービスです。
自分がまだ若く介護には関係ないと思っていても近い将来に親の介護で利用したり、病気やケガで介護保険のお世話になったりすることもあります。
また将来自分が介護を受ける立場におかれた場合に、制度を理解していないとスムーズな手続きができないリスクも出てくるでしょう。
「内容を理解しなくては…」
「親の介護が始まる前には…」
と考えてもなかなか介護保険を勉強するきっかけにはならず、介護保険を利用する段階になってあたふたすることも珍しくありません。
そうならないようにこの記事では、介護保険を利用する準備段階である「要介護認定」「介護保険の基礎的ルール」の2点を中心に解説します。
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介護保険を利用するには要介護認定を受ける必要がある
介護保険の保険料は40歳以上の人が健康保険料と同時に支払うことが定められており、「介護を社会で支えあう」精神のもとに徴収されます。
つまり子育てが一段落した世代が介護保険料を負担することで、自分の親世代の介護支援を行う制度です。
介護保険で利用できるサービスを紹介します。
■ 支援サービス
■ 居宅サービス
■ 通所サービス
■ 短期入所サービス
■ その他のサービス(介護用品のレンタル、補助金など)
サービス内容は「介護プランの立案」から「入浴」「家事」「買い物」「デイサービス」「施設入所」「介護用品補助」…まで多岐にわたり、要介護者(介護を受ける人)や家族の負担に対して支援します。
このように介護保険は要介護者や家族にとって負担を大幅に削減させる頼もしい制度ですが、提供するにあたり不正が出ないように厳格な運用が求められます。
その一つが「要介護認定」。
介護保険を利用するためには自治体の福祉介護窓口で要介護認定の手続きを行い、いくつかの審査を得て要介護区分を確定させる必要があります。
つまり要介護認定の手続きは介護保険を利用するための入り口であり、これを上手に乗り切らなければ実際の状況にそぐわない介護サービスしか提供されません。
要介護認定を上手に乗り切るには何に注意をしたらよいのでしょうか?
要介護認定の審査を受けられる基準を覚えておこう
介護保険は40歳以上の国民が加入する制度ですが、被保険者(加入者)には2つのタイプがあります。
■ 第1号被保険者(65歳以上の人)
■ 第2号被保険者(40歳~64歳で医療保険に加入している人)
介護保険制度は被保険者を第1号と第2号に分類していますが、これは年齢により区別しています。
65歳以上の高齢者は第1号被保険者、40歳~64歳までの加入者は第2号被保険者。
介護保険は40歳になると自動的に被保険者となり自分が加入している健康保険料に加算されて請求が始まります。
また65歳以上になると年金からの天引きで徴収されることに。
介護保険の運用はこのように加入者からの保険料だけではなく、それらに加えて税金からの補助(公費)でサービスを提供しています。
それでは介護保険を利用できる加入者に制限はあるのでしょうか?
実は基本的に介護保険を利用できる人は第1号被保険者である高齢者。
さらに第1号被保険者の中でも介護が必要な人のみが利用できます。
つまり高齢者であっても介護が必要と認定されない限り、介護保険サービスを利用できません。
フルマラソンを完走するような元気な高齢者を見かけますが、このように元気な高齢者は介護保険の適用外に該当します。
それでは第2号被保険者はどうでしょうか?
40歳~64歳の第2号被保険者は保険料を支払うだけで、介護保険のサービスを利用できないのかと言うとそうではありません。
第2号被保険者であっても「特定疾病(老化が原因の16疾病)」が原因で、介護が必要と認められた場合には介護保険が適用されます。
【第2号被保険者が対象になる特定16疾患】
■ がん(末期、回復の見込みがないと医師が判断したもの)
■ 慢性関節リウマチ
■ 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞)
■ 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
■ パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)
■ 初老期における認知症
■ 脊椎小脳変性症
■ 多系統萎縮症
■ 糖尿病性腎症・網膜症・神経障害
■ 閉塞性動脈硬化症
■ 後縦靭帯骨化症
■ 脊柱管狭窄症
■ 骨粗鬆症による骨折
■ 早老症
■ 慢性閉塞性肺疾患
■ 両側の膝関節や股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
「介護保険は年寄りしか適用されない」
と思っている人も多いと思いますが実際には40歳であっても特定疾病を患い、介護が必要と判断されれば介護保険のサービスを利用できます。
そして介護保険が実際に適用されるか判断するのが、要介護認定と呼ばれる手続きです。
要介護認定で介護サービスの必要レベルを判定する
介護保険でサービスを利用するには必ず「要介護認定」を受けなくてはなりません。
これは第1号被保険者であっても第2号被保険者であっても同じで、要介護認定の区分により「受けられる介護サービス」に違いが出てきます。
その意味で要介護認定手続きは介護サービスを受けるための判定であり、「介護は必要」と認められればすぐに保険を利用することが可能です。
反対に要介護認定の申請を行っても、判定結果に問題が起こると「サービスを利用できない」「十分なサービスが提供されない」などのトラブルに発展するでしょう。
要介護認定は介護保険を利用する上で最も重要な手続き。
内容を理解してトラブルが起こらないように十分に準備して申請したいですね。
要介護認定における要介護認定区分とは?
要介護認定における「要介護区分」は7段階に分類されており、介護の必要度合いに対して分けられます。
【要介護区分】
■ 要支援1(介護度が一番軽い)
■ 要支援2 ⅴ
■ 要介護1 ⅴ
■ 要介護2 ⅴ
■ 要介護3 ⅴ
■ 要介護4 ⅴ
■ 要介護5(介護度が一番重い)
このように要介護認定は7種類に区分されており、一番軽い状態で「要支援1」、重い状態が「要介護5」です。
つまり要介護区分が上がると受けられるサービスも増えるので、要支援1に対して要介護5は約7倍もの介護サービスを受けることができます。
それでは区分ごとに判定される状態を見てみましょう。
【要支援1】
■ 排せつや食事に関しては自分でできるが、掃除や洗濯など身のまわりの世話で何らかの補助や介助が必要な状態
■ 立ち上がりなどの動作で支えが必要な場合
■ 片足での立位保持に支障がある場合
【要支援2】
■ 排せつや食事に関しては自分でできるが、掃除や洗濯など身のまわりの世話で何らかの補助や介助が必要な状態
■ 立ち上がりなどの動作で支え必要な場合
■ 歩行、両足での立位保持に支障が出ている場合
【要介護1】
■ 排せつや食事に関しては自分でできるが、掃除や洗濯など身のまわりの世話で何らかの補助や介助が必要な状態
■ 立ち上がりなどの動作で介助や補助が必要な場合
■ 歩行、両足での立位保持に支障が出ている場合
■ 混乱や理解力の低下が起こっている
■ 日常生活に関してはほぼ一人でできる
【要介護2】
■ 身だしなみや身の回りの世話に補助や介助が必要
■ 立ち上がりなどの動作で介助や補助が必要な場合
■ 歩行、両足での立位保持に支障が出ている場合
■ 混乱や理解力の低下が起こっている
■ 排せつや食事に関して補助や介助が必要になる
【要介護3】
■ 身だしなみや身の回りの世話がほとんどではできない
■ 立ち上がりなどの動作が介助なしではできない
■ 歩行、両足での立位保持の動作ができないことがある
■ 排せつが自分ではできない
■ いくつかの理解の低下や不安動作が見られる
【要介護4】
■ 身だしなみや身の回りの世話が全くできない
■ 立ち上がりなどの動作ができない
■ 歩行、両足での立位保持の動作が一人ではできない
■ 排せつが自分ではできない
■ たくさんの理解の低下や不安動作が見られる
【要介護5】
■ 身だしなみや身の回りの世話が全くできない
■ 立ち上がりなどの動作ができない
■ 歩行、両足での立位保持の動作が一人ではできない
■ 排せつや食事ができない
■ たくさんの理解の低下や不安動作が見られる
この区分を見てみると要支援1では排せつや食事は一人でできますが、掃除や洗濯などの日常生活において一部の補助が必要です。
しかし要介護5になると日常生活はおろか排せつや食事もできない状態で、いわゆる「寝たきり」状態と考えればイメージしやすいと思います。
このように各区分には目安がありますが、中身を見ると結構あいまいな表現も含まれていますよね。
その中で正確な判定を行うのは難しいのではないでしょうか?
どのような判定が行われているのか見てみましょう。
要介護認定の申請から決定までの流れとは
それでは実際の要介護認定はどのように実施されているのでしょうか?
判定におけるプロセスを知ることで、要介護認定を申請する際の注意点が見えてきます。
【要介護認定の流れ】
1.介護が必要と感じたら主治医に相談する(主治医がいない場合はスキップ)
2.自治体の介護保険担当課か地域包括センターに要介護認定の申請を行う。
3.主治医か自治体が指定した医師から要介護に関する意見書が提出される
4.自治体から担当者が派遣され自宅で認定調査を行う
5.自治体でコンピュータを使用した第1次判定が行われる
6.介護認定審査会を自治体で開き第2次判定を行う
7.要介護区分が決定されると申請者に「要介護認定通知」が送付される
このように要介護認定を受けるには、「医師の意見書」「自宅での認定調査」による第1次判定と「介護認定審査会」の第2次判定が必要です。
2回の判定により要介護区分が確定しますが、あくまで人間が行うものなので結果に納得できないこともあります。
特に実際の症状よりも軽い判定が出た場合には、必要な介護サービスが受けられなくなり、家族の負担が減らないことも考えられます。
そうならないために介護認定を受ける上で、上手に対応できるポイントを紹介しましょう。
医師の意見書はとても大切…だから主治医と十分に相談すること
要介護認定の申請を行うと同時に医師の意見書が必要です。
介護が必要な高齢者であれば一般的に主治医(ホームドクター)がいると思いますが、この意見書は親しい主治医に書いてもらうのがベスト。
主治医にはあらかじめ介護が必要な状況をよく説明して、詳しく意見書に書いてもらうようにしましょう。
認定審査において医師の意見書は重要な資料で、詳細に記載されていれば正しい審査結果を得ることが可能です。
また認知機能においても医師の判断が優先されるので、必ず主治医の診察を受けて状態を確認してから要介護申請を行ってください。
主治医がいない場合は自治体指定の医師に診察してもらいますが、一度の診察では正しい症状を判断するのは難しいことです。
先に主治医を探し何回か診察を受けてから、介護状態を相談することも大切なテクニックですね。
申請はケアマネージャーを通した方がスムーズ
要介護認定の申請は本人や家族が直接自治体の窓口でできますが、スムーズな手続きを目指すなら「ケアマネージャー」を通して行いましょう。
ケアマネージャーは介護保険制度における公的資格である「介護支援専門員」を保有する介護の専門家。
介護保険ではケアマネージャーが立案したケアプランを元にサービスが提供されることから、要介護認定が下りると必ず契約しなくてはなりません。
しかしケアマネージャーは要介護認定が下りる前の段階から相談できる存在で、特に要介護認定の申請を代行してもらうことも可能です。
特に初めての申請では介護保険制度の内容も理解していないので、ケアマネージャーから説明を受けることで受けられるサービスが把握できます。
また医師や自治体の担当者とも面識があることが多く、スムーズな申請が可能です。
要介護認定申請でケアマネージャーを通すメリットをいくつか紹介しましょう。
■ 介護保険制度の仕組みと適用状況を教えてもらえる
■ 申請を行う上での注意ポイントを教えてもらえる
■ 主治医と意見書の内容を調整してもらえる
■ 申請の手続きに不備が出ない
■ 自治体の担当者に状態を説明してもらえる
■ 判定審査の進捗状況を自治体に確認してもらえる
■ その他
上記のようにケアマネージャーを通すことでたくさんのメリットが生まれます。
特に医師に意見書を書いてもらう際に、内容の調整をしてもらい記載にもれがないかを確認してもらうことも有効ですね。
また判定の進捗を自治体の担当者に確認してもらうこともできます。
要介護認定を受ける前にケアマネージャーに相談するには、自治体の地域包括センターに連絡してください。
【ケアマネージャーを介した要介護認定申請の流れ】
1.地域包括センターに連絡してケアマネージャーとの相談を依頼
2.ケアマネージャーが訪問して介護保険や介護サービスについての説明を受ける
3.主治医へ介護認定申請の意見書を依頼
4.ケアマネージャーから自治体へ要介護認定の申請を行う
5.訪問認定調査の注意点や立ち合いを依頼する
6.認定調査の立ち合いをしてもらう
7.判定状況を定期的に確認してもらう
8.判定結果が出るとケアマネージャーと契約しケアプランを立案してもらう
9.介護サービスの利用を開始する
要介護認定の申請にケアマネージャーは必要ありませんが、できるだけ通して行った方がスムーズに判定が出ます。
ここはテクニックとして覚えておきたいポイントですね。
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ココが今回のポイント!認定調査で失敗しないコツとは?
要介護認定の申請で最も重要なポイントが、自治体の担当者が自宅で行う「認定調査」。
せっかくケアマネージャーを通して上手に申請を行っても、認定調査で実際の状態を説明できないと必要な要介護区分が認定されません。
その意味でも認定調査は最も重要な調査であり、必要な要介護認定を受けるには失敗することができないものです。
認定調査の結果から実施される第1次判定は、人ではなくコンピュータを利用します。
これは「1分間タイムスタディ・データ」と呼ばれる、介護サービスを受けている高齢者3,500人を調査したデータ。
介護老人福祉施設や介護療養型医療施設で実際に高齢者が受けている介護サービスを数値化したものです。
つまり認定調査で聞き取りを行った内容をコンピュータに入力することで、自動的に「1分間タイムスタディ・データ」の中から最も近い高齢者のデータを探し出します。
そしてそのデータを元に申請者に必要な「要介護等認定基準時間」が推定されることになります。
少し難しいのですが簡単に説明しますと、「認定調査の結果から申請者によく似た要介護者を見つけて、必要な介護時間をコンピュータが予想する」システムです。
【認定調査で行われるチェック項目】
■ 身体機能:身体にどのような不自由が出ているのか?
■ 生活機能:日常生活にどの程度支障が出ているのか?
■ 認知機能:認知症が発症しているか?
■ 精神・行動障害:徘徊などの症状がでているか?
■ 社会生活のへの適応:社会生活を送る上で介助が必要になっているか?
■ 特別な医療:一定の病気で介助が必要になっているか?
認定調査ではこのような各項目から合計74項目がチェックされ、実際に足を動かしてもらったり、歩いてもらったりして確認を行います。
多方面のチェックを行いコンピュータで判断することで、人間の主観を排除した公平な判定ができるのが利点。
しかし全く問題がない訳ではありません。
調査担当者が認定調査で実際の状況と違うようにチェックシートに記載したらどうなるのでしょうか?
そのような状況ではコンピュータの判定にも狂いが生じ、申請者に必要な介護サービスは提供されない可能性があります。
そうなれば申請者本人も家族も困ってしまいますね。
そこで重要なコツが「認定調査での立ち会い」です。
認定調査ではケアマネージャーや家族が立ち会うようにする
認定調査では自治体の調査担当者が直接申請者の自宅に来て決められた項目をチェックします。
チェックは主に介護サービスを利用したい申請者への聞き取りであり、それをチェックシートへ記載する流れで進みます。
しかしこのチェックシートは簡単に説明すると「できる」「できない」で分かれており、「頑張ればできる」「かろうじてできる」などの記載がありません。
つまり身体の自由が利かずに「なんとか時間をかけたらできる」ことも、チェックシートでは単に「できる」と記載されます。
例えば「寝返りを一人でできますか?」との質問に、「身体が痛いのでゆっくり時間をかけてやっています」と答えたらチェックシートでは「できる」と書かれますよね。
この例の申請者は果たして寝返りが「できるのか?」「できないのか?」と考えた時、寝返りに5分もかかっていたらできないと判断してもよいと思います。
しかし現実的には5分かかろうが10分かかろうが、「時間をかけたらできる」と答えてしまったら調査の上では「寝返りができる人」です。
認定調査では微妙な言い回しが配慮されておらず、高齢者の説明不足が生じた場合に低く認定されてしまう危険性があります。
そこで認定調査を受ける時には必ず立ち合い者を同席させることが重要なポイント。
立ち会い者は普段の状況を知っている家族でもよいし、ケアマネージャーでも大丈夫です。
特にケアマネージャーと事前に打ち合わせを行えば、申請者の普段の様子を理解してもらい調査担当者に質問の都度アドバイスをしてもらえます。
そうすることで実際にはできないことが「できる」になることがなく、必要な介護が受けられるようになるでしょう。
認知症状が出ている時には必ず立ち会い者が必要な理由
認知症の認定調査は特に難しく、正確な状態を調査担当者に理解してもらえないこと少なくありません。
認知症のチェックは簡単な質問を行い、その結果の内容をチェックシートへ記載する方法で行われます。
認知症のチェックで行われている内容は以下の通り。
1.年齢を教えてください
2.今日は何年の何月何日ですか?
3.何曜日ですか?
4.ここはどこですか?
5.私が話す3つの言葉を言ってみてください。そしてまた後で聞きますね
6.5つの品物を見せますので覚えて答えてください?
7.その他
これらの質問は本来の認知症であればできない内容ですが、「隠れ認知症」になると話が変わります。
隠れ認知症とは日常生活では認知症の症状が出ていますが、他人や医師の前では一見して正常と思わせる人です。
つまり家族から見ると認知症なのですが、いざ検査を受けるとシャキッとしてしまう厄介な認知症だと思ってください。
【認知症の初期症状】
■ 同じ話を何回もくりかえす。
■ 約束を忘れる
■ トイレットペーパーなど同じ物を大量に購入する
■ 忘れ物が多くなる
■ 料理の味が一定しない
■ 会話が理解できなくなる
■ 危険なことを平気でする
■ 趣味が変わる(なくなる)
■ 他人との付き合いをさけるようになる
■ 小さいことですぐに怒るようになる
■ その他
このような症状が出たら認知症の初期症状の可能性が高くなりますが、隠れ認知症の人は他人や医師の前ではシャキッとする特徴があります。
そうなると認定調査上の確認では「正常」と判断されてしまい、要介護認定も軽い区分で認定されます。
そこでそうならないように認知症においても立ち合いが重要。
ケアマネージャーや家族が立ち会い普段の様子を調査担当者に説明し、さらに主治医にもお願いして「隠れ認知症の疑い」があると意見書に記載してもらいます。
それだけで認知症と判断されることはありませんが、注意深い調査を行ってくれるでしょう。
認定調査においての立ち合いは正確な結果を得るために、必ず行うようにしてください。
要介護認定区分ごとに受けられる限度額と利用者負担割合
認定調査も無事に終わると、結果が届くのを待つしかありません。
コンピュータでの第1次判定、介護認定審査会(第2次判定)をへて、約1ヵ月後には自宅へ要介護認定通知が送られてきます。
そこで初めて申請者の要介護区分が判明し、受けられる介護サービスも見えてくるでしょう。
要介護区分ごとに受けられるサービスは1ヵ月単位の支給額で表しており、その9割~7割が介護保険で支給されます。
つまり支給額の1割~3割は自己負担になり、負担割合は収入、年金の額などにより決められることに。
【要介護区分と支給限度額】
■ 要支援1:50,030円(自己負担5,030円~15,009円)
■ 要支援2:104,730円(自己負担10,473円~31,419円)
■ 要介護1:166,920円(自己負担16,692円~50,076円)
■ 要介護2:196,160円(自己負担19,616円~58,848円)
■ 要介護3:269,310円(自己負担26,931円~80,793円)
■ 要介護4:308,060円(自己負担30,806円~92,418円)
■ 要介護5:360,650円(自己負担36,065円~108,195円)
このように要支援1では月額50,030円の介護サービスが利用でき、要介護5では約7倍の360,650円までの利用が可能です。
また自己負担額も要支援1の1割負担で5,030円ですが、要介護5の3割負担では108,195円もの支払いをする必要があります。
ここで気になる自己負担額(利用者負担割合)の基準を見てみましょう。
【介護保険における利用者負担割合】
■ 年金収入等 340万円以上(夫婦で463万円以上):3割負担
■ 年金収入等 280万円以上(夫婦で346万円以上):2割負担
■ 年金収入等 280万円未満:1割負担
このように年金や収入が多い人は3割負担、少ない人は1割負担に設定されています。
利用者負担割合は2018年に改正されており、それまでは1割と2割だった内容に3割が追加されました。
リタイヤ世代であっても一定の収入がある人には負担を求める内容になったことが解りますね。
要介護区分ごとに受けられる介護サービスの利用の目安とは?
要介護認定決定通知が届いたらケアマネージャーと契約して、これからの介護プランを作成してもらいます。
介護保険では各区分で利用上限額が決められているので、おのずと利用できる介護サービスも限定されます。
各区分で利用できる介護サービスの目安をまとめてみました。
【要介護区分ごとに利用できる介護サービス】
■ 要支援1
・ 毎週1回程度の訪問型サービス(ホームヘルパーサービスなど)
・ 毎週1回程度のデイサービス
・ 毎月2回の施設短期入所サービス
■ 要支援2
・ 毎週2回程度の訪問型サービス(ホームヘルパーサービスなど)
・ 毎週2回程度のデイサービス
・ 毎月2回の施設短期入所サービス
■ 要介護1
・ 毎週3回程度の訪問介護
・ 毎週1回程度の訪問看護
・ 毎週2回のデイサービス
・ 3ヵ月に1週間程度の施設短期入所サービス
・ 福祉用具レンタルサービス(歩行補助つえなど)
■ 要介護2
・ 毎週3回程度の訪問介護
・ 毎週1回程度の訪問看護
・ 毎週3回のデイサービス
・ 2ヵ月に1週間程度の施設短期入所サービス
・ 福祉用具レンタルサービス(徘徊関知装置など)
■ 要介護3
・ 毎週2回程度の訪問介護
・ 毎日1回の夜間の巡回型訪問看護
・ 毎週1回程度の訪問看護
・ 毎週3回のデイサービス
・ 2ヵ月に1週間程度の施設短期入所サービス
・ 福祉用具レンタル(車いす、介護ベッドなど)
■ 要介護4
・ 毎週6回程度の訪問介護
・ 毎日1回の夜間の巡回型訪問看護
・ 毎週2回程度の訪問看護
・ 毎週1回のデイサービス
・ 2ヵ月に1週間程度の施設短期入所サービス
・ 福祉用具レンタル(車いす、介護ベッドなど)
■ 要介護5
・ 毎週5回程度の訪問介護
・ 毎日2回の朝、夜間の巡回型訪問看護
・ 毎週2回程度の訪問看護
・ 毎週1回のデイサービス
・ 1ヵ月に1週間程度の施設短期入所サービス
・ 福祉用具レンタル(車いす、介護ベッドなど)
ここに書かれているのはあくまで要介護区分の上限まで利用した場合のサービスであり、全てが利用できる訳ではないことを理解してください。
これらの中から必要なサービスをケアマネージャーと相談して、ケアプランを作成し介護保険サービスとして利用します。
介護保険で入居できる施設入所サービスとは?
介護保険では自宅でサービスを行う「居宅(訪問)サービス」や施設に通う「通所サービス」、施設に短期間入所する「短期入所サービス」が提供されます。
しかし中には自宅で介護ができない事情がある人もいることから、福祉施設に入居して介護を行う「施設サービス」も介護保険で提供されます。
施設サービスは以下の公的施設に入居して介護を受けるサービス。
【施設サービスの対象施設と入所条件】
■ 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):要介護3~要介護5(*注)
■ 介護老人保健施設:要介護1~要介護5
■ 介護療養型医療施設:要介護1~要介護5
(*注)特別な事情がある場合は要介護1~要介護2でも入所が可能。
これらの施設は全て民間と比べて安価に入所できることから人気であり、特に介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は入所待ちが1年~5年もあるほどの人気ぶり。
これを見ると要支援では区分に関係なく、施設サービスの利用ができないことが確認できますね。
また要介護であっても要介護1や要介護2では介護老人福祉施設に入所することはできず、別の民間施設を検討するしか方法はありません。
また保健施設や医療施設は原則的に病気における療養や治療の継続が条件なので、一般的な介護施設として利用できません。
そうなると民間の老人施設に入居して、介護保険の要介護区分が上がるのを待つしか方法がなくなります。
特に施設サービスでは要支援と要介護の間に大きな差が出てくるので、要介護認定を受ける場合には十分な注意が必要です。
有料老人ホームにかかる入居費用についてはこちらのページをどうぞ
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要介護認定に不服がある場合はどうしたらいいの?
せっかく要介護認定を申請しても、結果が思うようにならないことがあります。
申請者や家族としては要介護だと思っていても、結果は要支援…これでは考えていた介護サービスが受けらません。
またケアマネージャーの説明で同じような状態の人が、要介護であったなら「なぜ?」と考えてしまうのも仕方がないことでしょう。
そこで要介護認定で不服がある場合の対応を考えてみます。
【要介護認定で不服がある場合の対応】
■ 自治体の介護保険課で認定結果の理由を聞き不服がある場合は相談する
■ 内容に不服がある場合は都道府県の介護審査委員会へ審査請求を行う
■ 自治体に対して区分変更の申請を行う
まず重要なのはどのような審査で要介護区分が決定されたかを確認することです。
自治体によっては詳細を教えてくれないこともありますので、そのような場合はケアマネ―ジャーを通して確認するのも方法。
さらに都道府県ごとに設置している「介護審査委員会」に審査請求を行い、再度初めからやり直す方法もあります。
しかしこのような手続きには時間がかかることから、最も簡単なのは「区分変更」の申請を自治体へ提出すること。
要介護申請は介護度が上がることで審査をやり直すので、自由に区分変更の申請を出すことができます。
つまり結果に不服がある場合は、即座に区分変更手続きを行うことで再審査が可能です。
ただし勝手に行うと印象が悪いので、あくまで自治体の担当者やケアマネージャーと相談して行うようにしてください。
認知症の要介護認定は医師の意見書が最も重要
要介護認定で最もトラブルが起こるのが認知症に関する区分判定。
一見して正常に見える申請者に認知症の症状があっても、短時間の認定調査では判断できません。
特に先ほど説明した隠れ認知症の状態では、それを証明することさえ難しい作業です。
そこで覚えてほしいのが「医師が作成する意見書」の重要性。
認知症の専門医を一定期間受診することで、隠れ認知症であっても医師は見抜くことができます。
その上で正確な意見書を作成してもらえば、要介護認定もまた正確な判断ができるでしょう。
また認定調査で自宅へ来た調査員に「医師からの意見書で認知症の症状が詳しく記載されています」と告げることで、認知症のチェック項目に意見書の内容を加味することも可能です。
要介護認定の担当者は医療の専門家ではないため、医師の意見書に左右されやすい特徴があります。
また介護認定審査会でも主治医の意見書を重要視するのは同じです。
つまり主治医に詳細な意見書を作成してもらうことで、不服のない正しい要介護認定を受けることができます。
要介護認定の更新で要介護区分が変更されることも
要介護認定が決定し介護生活がスタートしましたが、介護保険には期限があることを忘れてはなりません。
【要介護認定の有効期間】
■ 新規申請の場合:原則6ヵ月(自治体の判断で3ヵ月~12ヵ月に変更可能)
■ 更新申請の場合:原則12ヵ月(自治体の判断で3ヵ月~36ヵ月に変更可能)
■ 区分変更申請の場合:原則6ヵ月(自治体の判断で3ヵ月~12ヵ月に変更可能)
このように新規で要介護認定を受けた場合は原則6ヵ月が有効期間で、期限前に更新手続きを行う必要があります。
ただし自治体の判断で有効期限を変えることも可能なので、ケアマネージャーに居住地の有効期限を確認することが大切。
また更新申請を行った場合や区分変更を行った場合でも有効期限が各々規定されているので、確認するようにしたいですね。
介護保険の更新は「医師の意見書」や「認定調査」「第1次、第2次判定」など新規申請と同じ流れで行われます。
つまり更新することで要介護区分が上がったり下がったりすることもあり、下がった場合には今まで受けていた介護サービスが提供できなくなる事態も出てきます。
更新の場合も新規申請と同様に立ち合いなどの工夫をして、正確な判定を得られるようにしたいですね。
要介護認定の有効期限は最大24ヵ月まででしたが、2018年4月から自治体の負担を減らす目的で更新に限り最大36ヵ月に延長できます。
ただしあくまで自治体ごとの判断なので確認してください。
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要介護認定は介護保険サービスの入り口…だから失敗しない
介護保険サービスを利用するには必ず要介護認定を受けなくてはならず、思った結果が出なかった場合には落胆だけでなくサービスが受けられない可能性があります。
そうならないようにするには要介護認定の仕組みを理解して準備することが最も重要。
さらに医師やケアマネージャーとの打ち合わせ、事前の根回しが大切です。
特に医師が作成する意見書は最も重要なポジションなので、いい加減に依頼するのではなく状態をしっかり理解してくれる人にお願いしましょう。
そのためには2人~3人程度の医師から選ぶのも方法ですね。
根回し…とは言いたくないのですが人間が判定する介護認定ですから、やはり十分な準備を行ってから申請した方が無難です。
正しい介護保険の認定を受けることができるように、まずは制度と判定方法をしっかり勉強してください。