2000年から施行(開始)された「介護保険制度」ですが、私たちの中には保険の内容を理解していない人が大勢います。
介護保険は主に「65歳以上の高齢者」や「指定された疾患」により介護認定を受けた人を対象にした公的保険。
「私にはまだまだ関係ないわ…」と無関心な現役世代も多く、詳しく内容を理解する機会は少ないようです。
しかし自分の親が高齢になると介護保険はググっと身近な存在になり、あわてて勉強したり専門家にアドバイスを受けたりする羽目におちいることも珍しくありません。
また介護保険は将来的に私たち自身もお世話になる保険であり、制度をしっかり理解していないと損する可能性も出てきます。
身近だけど遠い保険…いつかはお世話になる保険…将来の安心のための保険…
愛する家族や自分の将来のために、介護保険制度で受けられるサービスを勉強してみましょう。
介護保険制度の基本理念は「社会全体での支えあい」
誰もが知っていますが日本は空前の超高齢化社会に突入しており、人口に占める高齢者の割合が大きくなっています。(平成28年9月の統計)
■ 65歳以上:27.3%(3461万人)
■ 70歳以上:19.2%(2437万人)
■ 75歳以上:13.4%(1697万人)
■ 80歳以上:8.2%(1045万人)
また男女別で見ると男性が24.3%、女性が30.1%で初めて女性の高齢者が30%を超えました。
このまま推移するともうすぐ高齢者の割合が人口の1/3となり、国による高齢化対策もますます重要になってくるでしょう。
また日本では核家族化が進んでおり、高齢者の単身&夫婦世帯が増加しています。
昔のように親と同居する生活が当たり前の社会では、家族同士で支えあうことで将来の不安はありませんでした。
しかし「認知症」「機能障害」などの介護を少ない家族だけに任せるのは大きな負担になることから、「社会全体で支えあう」このような仕組みが重要との認識が生まれています。
介護保険制度は核家族化&少子化により高齢者の割合が増えた現代日本において、社会的弱者を全体で支えあうことを目的で作られた制度です。
それではさっそく介護保険制度で、どのようなサービスが受けられるかを解説しましょう。
介護保険でどのようなサービスが受けられるか知っておこう
介護保険を細かく解説する前に、介護保険で受けられるサービスを大まかに紹介します。
将来的に家族や自分が保険を利用する際に、受けられるサービスを知らなければ利用できずに損をしてしまうこともあります。
公的保険の特徴として自分や家族が申し込まない限り、原則としてサービスを受けることはできません。
そう…おトクに介護保険を利用するには、まず適用されるサービスを知っておくことが重要なポイントです。
【支援サービス】
担当のケアマネージャーと契約して、介護プラン(ケアプラン)の作成や家族からの相談や悩みに対応してもらいます。
また介護保険の各種サービスの申し込みを代行したり、自治体や病院との橋渡しを依頼したりします。
【居宅サービス】
居宅サービスとは介護が必要な人の自宅に、ヘルパー(ホームヘルパー、介護福祉士)が訪問してさまざまな介護サービスを行うことです。
居宅サービスは「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」「その他に受けられるサービス」の4種類から必要なサービスを受けられます。
(1.)訪問サービス
■ 掃除、洗濯、食事など生活援助
■ 食事、排せつ、入浴などの身体介護
■ 入浴車による訪問入浴介護
■ 看護師による訪問看護
■ 理学療法士や作業療法士などによる訪問リハビリテーション
■ 専門家による介護の居宅療養管理指導
■ その他、生活支援
(2.)通所サービス
■ デイサービス利用(通所介護)
■ デイケアサービス利用(通所リハビリテーション)
(3.)短期入所サービス
■ ショートステイ(生活介護短期宿泊サービス)
■ ショートステイ(療養介護短期宿泊サービス)
(4.)その他に受けられるサービス
■ 介護に必要な福祉用具用品のレンタルサービス
■ 介護リフォームに対する補助金サービス(住宅改修補助)
■ 福祉用具購入に対する補助金サービス(入浴補助用具や排せつ補助用具)
■ その他
介護保険で受けられるサービスを大まかにまとめてみましたが、その中にはこれだけ沢山のサービスが詰まっていることが理解できますね。
その一つ一つが介護に重要なサービスなのは言うまでもありません。
またこのようなサービスが公的保険でまかなえることを知らない人も多く、利用できるのに自腹で負担していることも珍しくありません。
介護保険の適用サービスは順次拡大しており、これからもどんどんと増える可能性があります。
しっかりと適用されるサービスを理解して、家族や自分が損をしないようにしたいですね。
使えるサービスを覚えておくとイザと言う時に便利
介護保険で利用できるサービスを紹介しましたが、これだけではどのようなサービス内容なのか解りにくいですよね。
介護保険料は40歳から64歳までの人が第2号被保険者、65歳以上の人が第1号被保険者として徴収されます。
長い間支払うのですから必要な時にはドンドン利用するべき保険です。
特に介護用品はレンタルが利用できるにも関わらず、つい購入してしまい後から後悔することも…
このような事態にならないため「覚えておきたい介護保険サービス」として、介護保険でカバーされるサービスを詳しく説明します。
介護保険の利用はケアマネージャーとの契約から始まる
「ケアマネージャー」の名称を聞いたことがありますか?
若い人には馴染みがない名称ですが、正式には「介護支援専門員」の資格を持ち介護保険の支援を行う専門家を指します。
ケアマネージャーの仕事は介護が必要になった人や家族からの依頼を受けて、要介護者(介護が必要な人)に応じた介護サービスのプランを立案すること。
また要介護者の要介護認定(要介護区分:要支援1~要介護5)の手続きを代行したり、実際に介護サービスを提供する各事業者との橋渡しをしたりします。
さらにケアマネージャーは要介護者の家族の負担を少なくする目的で、日常の介護の相談やアドバイスなどの問題解決を図ることも業務の一つ。
介護保険を利用するには必ずケアマネージャーとの契約が必要ですが、人間のやることですから「気の合う」人や「気が合わない」人もいます。
せっかくケアマネージャーと契約しても、気の合わない人であれば要介護者も家族もこれからの介護生活に不安を持ってしまいますよね。
そうならないように「失敗しないケアマネージャーの探し方」を考えてみました。
まずはケアマネージャーの依頼と要介護認定までの流れを簡単に紹介します。
【ケアマネージャーと契約するまでの流れ】
1. 介護保険を利用したいと考えたら住所地の「地域包括センター」へ相談する
2. 地域包括センターが見つからない場合は自治体の介護保険担当課に問い合わせる
3. 包括センターから自宅にケアマネジャーが訪問する
4. ケアマネージャーから介護保険の仕組みや要介護認定の説明を受ける
5. 主治医の意見書を添付してケアマネージャーが要介護認定の申請手続きを行う
6. 各自治体の介護保険担当者が要介護者の状態をチェックする
7. 各自治体で介護認定審査会を開き要介護認定の等級が決定される
8. 介護保険被保険者証が自宅へ郵送される
9. ケアマネージャーとマネージメント契約を行う
10.要介護認定区分によりケアマネージャーが介護プランを立案する
11.介護保険による介護がスタート
ケアマネージャーと契約するためには各自治体の介護保険担当部署に対して、「要介護認定」の申請手続きをする必要があります。
要介護認定の手続きは要介護者本人や家族でもできますが、オススメしたいのは先に地域包括センターに相談してケアマネージャーを通して申請する方法。
包括センターでは相談を受けるとそのエリア担当のケアマネージャーを自宅へ派遣して、介護保険の説明やこれからの流れを説明してくれます。
自治体の窓口では介護保険の部署であっても、実際の介護の素人なので詳しい話を聞くことはできません。
しかし介護認定の前にプロであるケアマネージャーから詳しい話を聞くことができれば、安心して要介護認定を申請できます。
また自分で申請するよりもケアマネージャーを通した方が、自治体との連携もよくなる効果も期待できます。
(*覚えておきたいサービスポイント)
介護保険のサービスを利用する場合は、先にケアマネージャーと接触して介護保険の内容やサービスを聞くことが大切です。
要介護認定の手続きもケアマネージャーを通して行った方がスムーズになることが多いと思います。
ケアマネージャーの選び方は要介護者から見た人柄と相性で
素晴らしいケアマネージャーと出会うことができたら、もう介護について心配することはありません。
しかし残念なケアマネージャーと契約してしまったら、これからも介護による問題は解決しないかもしれません。
そこで上手なケアマネージャーの探し方で注意したいのが「人柄」と「相性」。
要介護者は身体が弱っていることで介護が必要なのだから、相性が悪い人であればそれだけで負担に感じます。
またケアマネージャーも人間ですから仕事に個性が出ることもあります。
「優しい人」「厳しい人」「まじめな人」「おもしろい人」…ケアマネージャーにもさまざまな個性が見られますが、これから長く付き合う人ですから人柄を見ることも大切。
それでは失敗しないケアマネージャーのチェックポイントを紹介します。
【相性のよいケアマネージャーを見つけるチェックポイント】
1. 要介護者や家族の話をよく聞いてくれるか?(親身になってくれるか?)
2. 要介護者の身体の状態を十分に観察しているか?
3. 介護保険や介護サービスの知識が豊富か?
4. 話し方が穏やかで安心できる人か?
5. 説明する内容の話し方が高齢者でも理解できる内容か?
6. 要介護者にとって話しやすく相談しやすい人か?
7. 要介護者だけでなく家族に対しても十分な説明をしているか?
8. 契約前に十分な説明をしてくれたか?
9. 契約をせかすような行為をしなかったか?
10. 一定の施設を執拗に勧めなかったか?
11. 介護保険以外のサービスにも詳しい知識があるか?(病院や施設など)
12. 連絡が取りやすいか?
13. 守秘義務を守ってもらえるか?(守秘義務についての説明があったか?)
ケアマネージャーは介護生活が始まると長期に渡ってお世話になる存在です。
その間には嫌なことやトラブルなども起こる可能性がありますので、「信頼できる関係」を築けるかが大切なポイント。
そして気になるケアマネージャーの費用ですが、なんと全額介護保険から支払われるので、要介護者の負担は0円です。
そうタダで沢山の仕事をしてもらえる、ありがたい存在がケアマネージャーだと理解しましょう。
(*覚えておきたいサービスポイント)
素晴らしいケアマネージャーと契約するには介護認定の前にしっかり話を聞いて、信頼関係を築ける人と契約することが大切。
契約を急がないでじっくりと話しをして、ケアマネージャーの人柄を見るようにしましょう。
自宅で行う介護保険…居宅サービスの内容とは
ケアマネージャーとの契約が終わるといよいよ介護保険を利用した介護生活の始まりです。
介護保険の中から自宅で受けられる介護サービスを「居宅サービス」と言います。
居宅サービスでどのようなサービスが受けられるか確認してみましょう。
要介護者の自宅にホームヘルパーや社会福祉士が定期的に訪問して、生活支援や介護支援さらに介護管理などを行うのが居宅サービス。
居宅サービスは要介護者が自宅で生活できるための支援が目的で、細かい部分に対して介護を提供することも可能です。
具体的な居宅サービスを見てみましょう。
【生活支援】
買い物、料理、掃除、洗濯、入浴補助など日常生活に必要な業務を代行します。
例えば毎週3日間定期的に訪問し、掃除、洗濯、入浴補助をやってもらうと、周りの家族には時間的な余裕が生まれます。
生活支援は要介護者だけでなく、家族の負担を減らす効果があるサービスです。
生活支援は介護サービスの中でも「お手伝いさん」的な意味合いがありますが、日常生活に支障が出るとその家庭は崩壊してしまうかもしれません。
長い介護生活の基礎である家庭を守るために生活支援があると考えてください。
(*覚えておきたいサービスポイント)
介護保険の目的は要介護者が自立して生活できるように支援することも含まれています。
買い物や掃除などは公的保険の対象外だと思うかもしれませんが、少しでも長く自宅で生活するには大切な項目ばかりです。
【生活介護】
一人で食事ができない場合には食事の補助を行い、また排せつに問題がある場合は生活介護でカバーされています。
要介護者や家族が日常の生活で大きな負担を背負い込まないように配慮されたサービスです。
(*覚えておきたいサービスポイント)
食事の補助や排せつは要介護者だけでなく、家族にとっても大きな負担です。
家族だけで全てを背負うと「介護疲れ」になり、共倒れしてしまう危険性も出てくることから生活介護を利用して家族の負担を減らすのも大切な支援だと考えられます。
【訪問入浴介護】
街で時々見かけると思いますがハイエースなどのバン型自動車にお風呂を設置しているのが「移動式浴槽」。
訪問入浴では移動式浴槽を要介護者のベッド近くに設置して、自宅で入浴できることから人目を気にすることはありません。
(*覚えておきたいサービスポイント)
補助があっても自宅のお風呂に入れない場合、訪問入浴介護を利用します。
移動式浴槽は約2畳のスペースがあれば設置できるので、簡単にベッド横で入浴することが可能。
始めて利用する際にはビックリしますが、便利なサービスなので覚えておきましょう。
【訪問看護】
医師の指示がある場合には、看護師が定期的に訪問して医療処置や医療機器の管理を行います。
また長期間寝たきりの要介護者がいる場合には、ベッドによる床ずれ防止や処置を行う必要があります。
(*覚えておきたいサービスポイント)
主治医から訪問看護の指示が出ている場合に利用できるサービス。
ただし訪問看護は介護保険だけでなく後期高齢者医療制度でも利用できるので、ケアマネージャーや医師、看護師と十分に話し合いを行いましょう。
【訪問リハビリテーション】
要介護者の自宅へ理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが訪問して、医師の指示に従い必要なリハビリを行います。
(*覚えておきたいサービスポイント)
訪問リハビリテーションは要介護者の状態が比較的安定(固定状態)しているケースに利用されます。
つまり現在の状態よりも介護度が上がらないように、簡単な機能運動やマッサージなどで身体を動かし関節や筋肉の機能不全を予防します。
【居宅療養管理指導】
医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士などが要介護者の自宅を訪問して、介護に関する管理指導を行います。
(*覚えておきたいサービスポイント)
特に要介護者は口くう内のトラブルが多く出ることから、定期的に歯科医師や歯科衛生士に口くう内の確認をしてもらうことは重要なポイント。
歯周病の悪化や虫歯が多い場合には、すぐに対応してもらいましょう。
通いで介護サービスを受ける通所サービスとは?
要介護者の状態が安定していて外出が可能な場合には、居宅サービスではなく通所サービスを利用します。
通所サービスを利用すると要介護者はもちろん、家族にも一定の自由時間を作ることが可能で介護保険の中でも人気のサービスです。
通所サービスには以下の2種類があります。
■ 通所介護(デイサービス)
■ 通所リハビリテーション(デイケア)
よく「デイサービス」と「デイケア」の違いが判らない人がいますが、大まかには介護が「サービス」、リハビリが「ケア」だと覚えておきましょう。
【通所介護】
要介護者が日中に送迎バスを利用して、専門施設で日常生活の支援を受けるのが通所介護です。
一般的にはデイサービスと呼ばれていますが、内容は入浴、食事だけでなくレクリエーションを利用した簡単なリハビリを行うこともあります。
利用時間は朝から夕方までが多く、その時間帯は家族も介護から解放されるので自由に過ごせます。
(*覚えておきたいサービスポイント)
デイサービスを利用することで家族の負担を大きく減少させる効果が期待できます。
要介護者だけでなく家族のためにも積極的に利用したい介護サービスが通所介護です。
【通所リハビリテーション】
デイサービスと同時に行うことも多いのですが、通いでリハビリを行うのが通所リハビリテーション(デイケア)。
デイケアは送迎車で医療機関(病院)や介護老人保健施設へ通い、医師が指示したリハビリを専門スタッフから受けます。
また食事、入浴など生活介護サービスも同時に提供されます。
(*覚えておきたいサービスポイント)
医療機関が運営する施設でリハビリを受けるのがデイケア。
症状が安定している要介護者に対して行われるサービスで、症状が悪化しないことがデイケアぼ目的です。
通所サービスを利用することで家族は介護生活から一定時間解放されます。
近年問題となっている「介護疲れ」による事件を起こさないためにも、積極的に利用して家族の負担を少なくする工夫が大切ですね。
大切な用事がある時に利用したい短期入所サービス
自宅に要介護者がいる場合、介護する家族はなかなか留守にできません。
しかし大切な用事や急な仕事が入った場合、どうしても出かけなくてはならないこともありますよね。
そのような事情がある場合に要介護者を短期間預かってもらうのが「短期入所サービス」。
短期入所サービスには以下の2種類があります。
■ 短期入所生活介護
■ 短期入所療養介護
【短期入所生活介護、短期入所療養介護】
普段は自宅で介護生活をおくっている要介護者を短期間だけ専門施設へ入所させるサービス。
一般的には「ショートステイ」と呼ばれており、「介護老人福祉施設」や「介護老人保健施設」「病院」に短期間入所することです。
生活介護を目的に入所するのが「短期入所生活介護」で、療養を目的にするのが「短期入所療養介護」ですが、要介護者の状況によりどちらを選択します。
(*覚えておきたいサービスポイント)
介護を行っている家族に用事ができた場合に便利なサービスですが、それだけでなく介護の負担を少なくする目的でも利用できます。
定期的に介護休みを取ることも介護疲れを起こさない秘訣なので、上手に短期入所サービスを利用しましょう。
その他に介護保険で受けられるサービスを一挙紹介
介護保険制度では主に介護に必要なサービスを提供していますが、中にはサービスではなく介護に必要な費用を補助するものもあります。
■ 福祉用具用品のレンタルサービス
■ 介護リフォームに対する補助金サービス
■ 福祉用具購入に対する補助金サービス
【福祉用具用品のレンタルサービス】
介護生活に入るとまず必要なのが「介護ベッド」や「車いす」。
特に電動で動く介護ベッドは要介護者だけでなく、介護を行う家族にとっても肉体的負担を減らすことができます。
介護ベッドは「高さ」「背もたれの角度」「足の角度」などを自由に調整できるので、要介護者の食事や排せつの際にとても便利な介護用品。
また長い介護生活で起こる床ずれを予防する効果も期待できます。
このような介護ベッドを自費で購入すると高額な負担が必要ですが、介護保険でレンタルすると毎月数千円のレンタル料を支払うだけで利用することが可能に。
また介護用の「移動式テーブル」「ベッド柵」「車いす」「床ずれ予防ベッドマット」なども、同時に介護保険で安価にレンタルできます。
(*覚えておきたいサービスポイント)
介護用品の中でも高額なものは、基本的にレンタルを利用しましょう。
レンタルはケアマネージャーが業者を紹介してくれるので、一緒に必要なものを決めて申し込むのがよいでしょう。
あわてて自費購入すると損することもありますので、介護保険で安価にレンタルできることを覚えておいてください。
【介護リフォームに対する補助金サービス】
介護が始まると何かと自宅に不便を感じます。
今まで快適だった我が家が急に住みづらく感じたり、不便に感じたりするようになると介護にも支障が出てくるでしょう。
また自宅が不便だと要介護者の行動にも制限が出てしまい、自分でできることも家族の手を借りないとできないことも出てきます。
そのような問題を解決するのが「介護リフォームに対する補助金サービス」。
これは介護に関する住宅改修(リフォーム)に対して、介護保険から一定の費用を補助するサービスです。
リフォーム対象は「手すり」「スロープ」「バリアフリー」「トイレ工事(洋式トイレへの改修)」「風呂場の改修」などで、最大20万円までが補助されます。
(*覚えておきたいサービスポイント)
介護リフォームに対する補助金サービスは、かかった費用の1割~3割が自己負担分として要介護者が支払わなくてはなりません。
また最大で20万円までが限度額であることから、例えば1割負担で19万円の工事を行った場合には約17万円が補助され、40万円の工事では約20万円が補助されます。
手すりやスロープを取り付ける場合には、介護保険が利用できることを忘れないようにしてください。
さらに介護リフォームに対する補助金サービスは介護区分が上がることで再度利用することが可能です。
1回利用すると終わりではなく介護状態が上がることでまたリセットされるので、ここもぜひ覚えておきたいポイントですね。
【福祉用具購入に対する補助金サービス(特定福祉用販売)】
排せつや入浴に必要な福祉用具を購入する際に補助金を受けられるサービス。
補助金の対象になる具体的な商品を紹介します。
■ 腰掛け便座
■ 自動排せつ処理装置の交換部品
■ 入浴補助具(介護用いす、浴槽手すり、浴槽内いす、入浴台、入浴用介護ベルトなど)
■ 簡易浴槽
■ 移動用リフトの部品
■ その他
福祉用具購入に対する補助金サービスでは1年間に10万円までが補助金として支給されます。
購入金額の1割~3割が自己負担になるので、ケアマネージャーと相談して自治体へ申請しましょう。
(*覚えておきたいサービスポイント)
日常生活で要介護者が利用する用品の中でもレンタルにそぐわない用具については、介護保険で購入費用を補助してもらえます。
特に排せつや入浴などの用品はレンタルで返却することもできないので、購入が前提になるでしょう。
毎年10万円まで利用できるので計画を立てて申請することが大切です。
介護に関する用具は年々と進歩しており、種類も数えきれないくらいあります。
レンタルの車いすを選ぶにも大変な量なので、レンタル業者の意見も聞いてチョイスしたいですね。
全ての商品が介護保険の適用とはなりませんが、購入する前に必ずケアマネージャーと相談して負担の少ない方法で購入できるようにしたいですね。
DIYで介護リフォーム!自分でできる住まいづくりはこちら
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施設に入所して介護を受けるサービスが施設介護サービス
家族での介護が難しくなったり、家族がいなく独居状態で生活ができなくなったりした場合には、要介護区分により施設に入所して介護を受けるサービスがあります。
民間にも「サービス付き高齢者住宅」や「民間グループホーム」などがありますが、介護保険制度では3種類の施設により「施設介護サービス」を提供しています。
■ 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
■ 介護老人保健施設
■ 介護療養型医療施設
これらの施設を運用するのは自治体、医療機関、社会福祉法人など公的な意味合いが高い団体に限られており、建設にあたっては補助金や税金の優遇措置があります。
またこのような優遇措置を取られていることから、入所費用は民間と比較して安価に設定されており人気も高く現在数が足りない状態です。
それでは各施設の違いを確認しましょう。
【介護老人福祉施設】
原則として要介護区分が要介護3以上から入所できる介護老人福祉施設は、特別養護老人ホーム(特養)のネーミングで有名です。
安価な費用で入所できることから人気で、食事、排せつ、入浴など日常生活に関する全てを介護してもらえます。
基本的に著しい障害があり、なおかつ自宅での介護ができない場合に介護を目的に入所する施設だと理解しましょう。
(*覚えておきたいサービスポイント)
介護老人福祉施設は全国で多くの人が入所待ちの状態で、数は数万人~数十万人とも言われています。
個室、ユニット個室、大部屋などの形態がありますが、介護保険で1日800円~1,000円以下の費用で入所できるのが人気の秘密。
入所させたいと思っても数年間は待たないと、空きが出ないことを覚悟しましょう。
【介護老人保健施設】
介護老人保健施設は高齢者が病院での治療を終えて退院した場合に、リハビリ目的で入所する施設です。
つまり自宅へ戻ることを前提にした施設なので、介護老人福祉施設のように終身的に入所することは想定されていません。
介護老人保健施設では理学療養士や作業療養士のリハビリがメインで、最低週に2回程度行うことが規定されています。
入所できる要介護区分は要介護1からで、医学的な管理の元に在宅介護を目指します。
(*覚えておきたいサービスポイント)
介護老人保健施設は老人ホームの意味合いではなく、入院による体力低下や機能障害を改善して自宅で生活できるようにするのが目的。
要介護1から入所できるので入院後にすぐに自宅に帰るのではなく、しっかりリハビリを行ってから帰る方が家族の負担も少なくて済むでしょう。
【介護療養型医療施設】
病院での治療も終わり症状もある程度固定しているが、引き続き治療や療養が必要な場合に入所するのが介護療養型医療施設です。
介護療養型医療施設は医療施設なので、病院や診療所が運営しており長期間の療養を受けることができます。
(*覚えておきたいサービスポイント)
介護療養型医療施設は病院に併設されていることもあり、一見して病院なのか施設なのか区別ができないこともあります。
あくまで要介護者であり医師から「病気による継続した療養が必要」と判断された人が入所できる施設です。
つまり介護療養型医療施設は症状が完全に固定した人は入所できない施設です。
有料老人ホームについてはこちらのページも合わせてどうぞ
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住み慣れた地域で生活したい…地域密着型サービスで支援
入所サービスを利用すると施設の都合で遠方への引越しをしなくてはならない場合もあります。
しかし高齢者の中には生まれ育った地元から離れたくなく、一生住み続けたいとの希望を持つ人も少なくありません。
住み慣れた地域でずっと生活したい…そのような希望をかなえる介護サービスが「地域密着型サービス」です。
介護保険では比較的新しい制度ですが、主なサービス内容は以下の項目。
■ 小規模多機能型居宅介護
■ 看護小規模多機能型居宅介護
■ 定期巡回、随時対応型訪問介護(看護)
■ 夜間対応型訪問介護
■ 地域密着型通所介護
■ 認知症対応型通所介護
■ 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
■ 地域密着型特定施設入居者生活介護
■ 地域密着型介護老人福祉施設
■ その他
地域密着型サービスで利用する施設の特徴は、施設規模が小さくアットホームであること。
「小規模多機能型居宅介護」も小規模なデイサービスだと思うと理解しやすく、自宅にいるような感覚でサービスを受けることができます。
また要介護者が必要な時に対応してもらえる「随時対応型訪問介護(看護)」や、夜間に対応してもらえる「夜間対応型訪問介護」では自宅にケアコールを設置するなど一人暮らしでも安心できる工夫があります。
また地域密着型サービスは認知症に対するサービスも充実しており、「認知症対応型通所介護」では認知症高齢者に対して食事や入浴、機能訓練を行います。
さらに認知症が進行すると「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」への入所も可能です。
グループホームとは認知症を発症した高齢者が5人から9人程度で共同生活をおくる施設で、認知症の進行を進めないように家事を分担して行うことが特徴。
またレクリエーションを利用したリハビリで、脳に刺激を与える工夫を取り入れる施設もあります。
(*覚えておきたいサービスポイント)
地域密着型サービスには多くのサービスがあります。
解説したように認知症に対する支援も多く、利用する施設が小規模でアットホームなのが特徴です。
注意点としては地域密着サービスを利用するには各施設のケアマネージャーと契約する必要があり、ケアマネージャーの交代が必要になるケースがあります。
いろいろ使える介護保険だけど全てを使うことは難しい?
いかがでしたか?
介護保険で利用できるサービスを感じてもらえたと思います。
公的保険である介護保険制度は要介護者に対して、多方面での支援ができる素晴らしい制度だと思います。
しかしこれら全てのサービスが利用できるとは限らないことも覚えておきましょう。
今回の記事でも出てきた「要介護認定」における「要介護度区分」は、要介護者の状態を分類したものです。
【要介護区分】
■ 要支援1
■ 要支援2
■ 要介護1
■ 要介護2
■ 要介護3
■ 要介護4
■ 要介護5
このように要介護区分は要支援1~要介護5まで7段階に分けられており、要介護5が一番症状の重い状態。
介護保険制度ではこの要介護区分ごとに利用できる限度額が設定されており、それを超えると保険が適用されず超過分は自費で支払わなくてはなりません。
つまり介護区分が軽度であれば使える上限も少なく、介護サービスも限定されることに。
また全ての介護区分で自費負担が1割~3割必要で、例えば要介護1では約165,800円の限度額に対して自己負担額は16,580円です。(自己負担1割の場合)
つまり要介護区分が増えると使える限度額は上げりますが、同時に自己負担額も増えることに。
例えばデイサービスで利用する場合は、要支援1では週1回、要介護1で週3回が受けられるサービスの上限に該当します。
【要支援限度額と自己負担額】
■ 要支援1:限度額50,030円(自己負担額5,003円)
■ 要支援2:限度額104,730円(自己負担額10,473円)
【要支援限度額と自己負担額】
■ 要介護1:限度額166,920円(自己負担額16,692円)
■ 要介護2:限度額196,160円(自己負担額19,616円)
■ 要介護3:限度額269,310円(自己負担額26,931円)
■ 要介護4:限度額308,060円(自己負担額30,806円)
■ 要介護5:限度額360,650円(自己負担額36,065円)
(*1割負担の場合)
このように要介護区分が上がると使える介護保険サービスも増えますが、毎月支払う自己負担額も高くなります。
要支援1では限度額が約5万円ですが、自己負担額も約5千円で済みます。
しかし要介護5では約36万円の限度額に対して、自己負担額として3.6万円を毎月支払わなくてはなりません。
また2割負担や3割負担の人はその2倍~3倍が自己負担です。
この要介護区分と費用についてはまたの機会に詳しく紹介したいと思います。
人任せにすると損をすることもあるので注意しよう
この記事を読んで介護保険制度の凄さが解ったと思います。
日本では国民皆保険制度を導入しており、世界でも高い評価を得ています。
介護保険制度も「大丈夫かな?」と思えるくらいに充実した保険なので、これを利用しない手はありません。
ただし制度をよく理解していないと勘違いをしたり、利用できるのに利用しなかったりするトラブルが出てきます。
もちろんケアマネージャーに相談することも重要ですが、その前にどのようなサービスが受けられるかを家族で勉強することも大切。
また介護保険とは別に各自治体で高齢者や要介護者に対して、各種サービスを行っていることがありますのでこれも要チェックですね。
■ 安否確認
■ お弁当宅配サービス
■ ヘルパー派遣
■ 外出支援(病院などの付き添い)
■ タクシー券(交通補助)
■ その他
これら介護保険制度でカバーしていないサービスを、自治体によっては独自サービスとして提供しています。
各自治体でサービス内容に違いがありますので、ケアマネージャーか自治体の福祉担当者に問い合わせて利用できるものを探しましょう。
介護保険も自治体のサービスも申請しないと利用できないので、積極的に問い合わせて適用されるサービスを見つけることが大切です。
社会の支えあいである介護保険…おトクに利用して上手な介護を始めませんか?