2018年4月中旬。
私は、とある会社の依頼で、展示会場での通訳の仕事のためイタリアのミラノに出張に行っておりました。
丸1週間のスケジュールは終盤となり、帰国の前日というタイミングで、なんとそもそも予約していたエールフランスのフライトが、ストライキの影響でキャンセルになることが発覚!
雲行きが怪しかったため、数日前からちゃんとwebで動向をチェックしていたからよかったものの、まさか自分のフライトが影響を受けるとは思っていなかったため、愕然…。
Webでの予約変更などは埒が明かないため、仕方なく日本のエールフランスのカスタマーサービスに電話をかけ続け、10分ほど保留で待たされたのち、なんとかフライトを変更することができました。
今考えると、これがそもそもの悲劇の引き金になったようにも思います…。
というのも出発する空港がミラノのリナーテ空港(ちょっと小規模な空港)から、ミラノ最大の国際空港”マルペンサ空港”に変更になったからです。
それは「人助けを頼む」という男の依頼が始まりだった
2018年4月23日、15:35ミラノ・マルペンサ発の成田行きの飛行機に乗るため、私はカドルナ駅から12:27発の”マルペンサエクスプレス”というミラノ主要駅とマルペンサ空港を結ぶ列車に乗り、13時すぎにはマルペンサ空港に到着。
ガラガラとデカいスーツケースを引っ張りながら、アリタリア航空のチェックインカウンターへと向かいました。
チェックインカウンターには、当然多くの人が並んでいるものの、大混雑というわけでもなくほっと一安心。
ではでは、列の最後尾に並ぼうか…としたとき、1人の男性が笑顔で声をかけてきたのです(英語で)。
基本的に話しかけられたら私は丁寧に対応するほうなので
と答えると、彼はこう言いました。
僕はロンドンから来たんだけれど、友人のカトウさんのフライトがキャンセルになって困っているんです。JALに電話をしたいので、手伝ってもらえませんか?
私自身、エールフランスのストで自分のフライトがキャンセルになったこともあり、ああ、カトウさんもかわいそうなことになったんだな…と思いながらも
と聞き返すと、
と言われ、人助けのためならちょっと一肌脱いであげようか…と、お手伝いをすることにしたのです。
でも、私も当然、ここで「おかしいな…?」とは思っていました。
フライトがキャンセルになってJALに電話をしてフライトの変更をするのであれば、そんな数分で終わるわけないし私が電話することで解決できるものなのか…?
…っていうか、カトウさん本人はどこにいるんだよ?
というわけで不安を感じながらではありましたが、その男に言われるがまま、1フロア下の公衆電話のところへいざなわれる私。
日本から来たの? へ~、日本のどこ? 福島なら僕行ったことあるよ! あの原発での仕事もしたことあるんだよね~
などと、世間話もにこやかにする彼は恰幅のいい黒人で身長は190センチほどありました。
身なりはチノパンにTシャツ、その上にネルシャツみたいなのを羽織ってキャップをかぶっていたと記憶しています。
いかにも旅慣れた旅行者という風情で小綺麗だし、彼の外見からは怪しさは全くありませんでしたので、警戒しながらもいよいよ公衆電話のところへと2人でやってきたのであります…。
「公衆電話でクレジットカードを使わせてくれ」という要求が…
と彼に尋ねると、
いまちょっと荷物のところにいるから、ここにはいない
という、よくわからない返しが…。
いよいよ怪しいな、と思いながらも、私は彼とともに公衆電話のところへ。
は? 私小銭いっぱいあるから、小銭でかければいいじゃん
というと、
いやいや、僕も小銭は持っているんだけど、小銭じゃダメなんだよ。ほら、20ユーロ渡すから、クレジットカードを使わせて!
と、男は私の手に20ユーロ紙幣を1枚渡してきました。
まあ、私の目の前でクレジットカード使うんなら「ちゃんと見張っていれば大丈夫だろう」と思い、仕方なくクレジットカードを出して、公衆電話に。
1つめの公衆電話に、私がクレジットカードを入れて抜き差しするも、電話のかけ方、分からない…。
私がクレジットカードを持って受話器から通話音が聞こえるようにならないかと奮闘していると、「ちょっと見せて!」と、クレジットカードを手に取る男。
う~ん、イタリアのシステムはほんとダメだよねぇ…。ちゃんと機能しないのかよ…
などと言いながら、
じゃ、あっちの公衆電話を試してみよう! …っていうか、ほんとに協力してくれてありがとうね。あとからコーヒーでもおごるからさ…
と、私はもう1つの公衆電話へと連れて行かれることに…。
別の公衆電話は小さい液晶に文字が表示されているタイプのもので私はクレジットカードを差し込み「まずは言語をイタリア語から英語へと変えて…」と操作を続けながら画面を見てもまたもやどうしたらよいのかは分からず、当然電話をどこかにかけることもできません。
あまりにも時間がかかっているため、私は焦って
もうさすがにチェックインしないとやばいから、手伝えなかったけれど、もう行くから!
と、クレジットカードを手に取り、その場を後にすることに。
そのときも例の男は怒るでもなくニコニコして
と笑顔で挨拶してくれましたが、私は挨拶もそこそこにチェックインカウンターへと向かうことにしたのでした。
「カトウさん、ごめんよ。手伝えなくて…」と、少し申し訳ないな…と思いながら。
でも、そこで私が手にしていたクレジットカードは、もはや自分のものではなかったのです…!
それに気づいたのは…なんとこの日から5日後のことでした…(涙)。
見た目は全く同じだが、別人のカードが手元に…!
クレジットカードをすり替えられたことに、なぜ気づかなかったのか?
「そんなのありえないじゃん!」って思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私がマヌケもマヌケ、と思われても仕方がないと思います…。
でも、すり替えられたことに気づいたとき、私は「こんなん、気づくわけないやん…」と唖然とするしかありませんでした。
色も見た目も…要するに、全く同じ種類のクレジットカードで、番号と名義が違うものが財布から出てきたのですから…!
私は結局、公衆電話のところで男と別れたあとチェックインをすませてスムーズに搭乗口まで進み、空港でのおみやげの購入も現金で済ませてクレジットカードは全く使わないまま過ごしていたのです。
たまたま帰国から4日後(イタリア出国した日からは5日後)の土曜日、インターネットでショッピングをしようとしたところ「このクレジットカードは現在使用できません」という通知が…。
セキュリティコードの入力でも間違ったのかしら…? と思って、財布からクレジットカードを取り出して見たところ…。
あれ…、なんかこのカード、前とは雰囲気が変わったな…。こんなに黒ずんでたっけ…? ん???
よくよく見たら、クレジットカードの16桁の番号も、名前も自分のものじゃない…。
裏にひっくり返してみれば、署名欄はきれいにこすり取られたかたちでなくなっている…!
その瞬間、私の全身から血の気が引いて顔が青ざめるのを感じました…。
しかも、盗んだやつは絶対にあの公衆電話に私を連れて行った男でしかありません!
それ以外に、ここ数週間の間にクレジットカードは財布から出した覚えてないんですから!
当然、即クレジットカード会社に電話です。
「自分のクレジットカードがすり替えた形で盗まれ、見た目は同じだけれど全く知らない第三者のクレジットカードが手元にある」ということを伝え、そこでようやくクレジットカードの利用停止という措置になったわけですが、電話をしながらweb明細で自分のカードの利用状況を確認したところ…
ガンガンに使われてますよ…。
しかも、身に覚えのない利用が、70万円、超えてるっ…!
電話口で対応してくれている女性の方も「クレジットカード、盗難されてから今までに利用されているようですね…」とポツっと一言…。
「ええ、私もいま、web明細見て仰天しているところです…」としか言えません。
クレジットカードが盗まれたことに気づいて、クレジットカード会社に連絡したのは土曜日のこと。
盗難での使用や補償等の話については、平日の日中でないと対応できないとのことで、また改めて連絡をしてもらうことになりました。
ただ、私はこのとき、身に覚えのない決済は盗難されて使われたことになるわけで、当然クレジットカード会社がすべて補償してくれると、高を括っていたのです。
まさかの「補償はできません」宣言
そして、週明け。
クレジットカード会社に、この不正利用について改めて説明し、web明細にも計上されている金額については、明らかに私ではない第三者の利用であり、盗難による補償をしてほしいと伝えました。
しかし、返ってきた返答は、耳を疑うものでした。
残念ながら、こちらの利用分については、弊社では補償できかねます
クレジットカードが別人のものにすり替わっていたのを見つけたとき以上に、全身から血の気が…というか、生気が…、いや、魂が抜けていくのが感じられました!
さらに、クレジットカード会社の担当はこう続けます。
といいますのも、これらの利用は暗証番号を使って決済されているんですね。ですので、会員規約にもあるとおり、暗証番号の入力を伴う取引についての損害は、補償の対象外になるんです
と、かなりあっさりと言われ、私はもう呆然とするしかありませんでした…。
いや、盗難されて、不正に使われているわけですよ? 私自身がこのカードが使われた日時に現地にいないことは証明できますし、それってちょっと納得がいかないんですけど…
と言っても、
いえ、とにかく暗証番号による取引となりますので、それについては補償ができないんです
の一点張り…。
とりあえず「これはこのまま同じ押し問答をしてもダメだな」と思い、ちょっとまた改めてご連絡させていただきますと電話を切ることにしました。
こうして、私の先が見えない、暗くて長い闘い(…というか、あがき)が幕を開けることになったのでした…。
そんな、クレジットカード会社との交渉の全貌をお話しする前に、いろいろと明らかになる衝撃の真実についてお話しさせてください。
6時間の間に126万円も使っていた…
まずは金額について。
クレジットカード会社担当者と話していくなかで、「不承認となったものもいくつかありまして…」というような話が出ました。
つまり、web明細で確認できるものについてはクレジットカード会社が承認したものであり、それ以外にもミラノでどうやら散々使われているらしいことが判明します。
その情報は私も見たい、と、ミラノでカードを使われた分のすべての明細をクレジットカード会社から書面として送ってもらうことにしました。
利用された日時は、ほとんどがすり替えられた直後の4月23日21時台から4月24日2時台の間…。
「え? でもミラノですり替えられたの、13時半頃でしょ? だったらそれから何時間も経ってから使われてるじゃん…」と思われた方、いえいえ、違うんです。
この書面の時間は「日本時間」なんです。
現在、日本とイタリアとの時差は7時間で、イタリアの時間は、日本の時間からマイナス7時間となっています。
つまり、この書面での21時というのは、ミラノの時間では同日14時になるわけです。
店名は伏せておきますが、すべての店の情報についてクレジットカード会社は把握しているようなのですが、カードホルダーの私には店名だけしか知らされていません。
ただ、複数の店名に「DUOMO MILANO」(ミラノの中心部で観光地でもある大聖堂『ドゥオーモ』のことだと思われる)などという支店名的なものが入っているので、あの男は、私からクレジットカードを盗ったらすぐに、ミラノ市街地に戻って、そこでガンガン買い物しまくった、ということになります。
この男、常習犯であることは間違いないようでクレジットカードを盗んだ直後から利用限度額いっぱいになるまでとにかく使っていました。
金額の大きいものには使えないということがわかれば、1万円に満たないものや数百円という利用をちょこちょことやっています。
1店舗だけ店名明かしますが、マクドナルドでも使ってくれています…(苦笑)。
っていうか、マクドナルドで1,717円(ユーロに換算して約13ユーロ)って…どんだけ食ってるんだよ!
もはや、彼の普段使いのカードと化した私のクレジットカード…。
私がカードを盗難されたと届けたのは4月28日なのですが、この明細では4月30日の使用も確認ができるわけで、まだ私が届けていなければ少額のものについては使い続けられていたことも考えられます。
さて…、この明細の金額を承認・不承認のものを関係なくすべて合計すると、1,429,475円…。
不承認になったものも多いのですが、承認となったものについては、730,234円…。
これを、私がすべてお支払いしないといけないというわけです。
あの、恰幅のいい、人の親切心につけこんできた男のために…!
深まる疑問と謎…
ところで、私のカードはどのタイミングですり替えられたのか。
それについては私もいまだにわからないままなのですが…。
男が「ちょっと見せて!」と言ってカードを手に取り、かつ、もう1つの公衆電話に向かう間にすり替えた…としか考えられません。
しかも、見た目はほとんど変わらないカードを手渡された私が気づかなかったのも、無理はないと思いませんか…?
でも、なぜに暗証番号が分かったのだろうか…?
当然ですが、暗証番号は誕生日などから推察できるようなものでもなければ、ましてや「1234」とか「1111、9999」みたいな番号でもありません。
クレジットカードのどこかに小さく書いていたとか、メモで書いていたものを持っていたとか、そういうこともないんです…。
もしかして、あの公衆電話の液晶をいじっていたときに、PINコードを要求されるような画面になって、私が押したのか…?そして、それを男は見ていたのか…?
時間のことがあって、めちゃくちゃ焦っていたこともあり、私の記憶にはもはやない…。
でも、さらに恐るべき事実が分かり、私はさらなる戦慄を覚えると同時に自分だけが被害者ではなかったということが明らかになるのです!
同一犯の仕業?知人の知人もカードをすり替えられていた!
クレジットカードを盗まれて使い込まれたことを、とある友人に話して相談していたときのこと。
あ、そういやさぁ、私の友達も同じタイミングでミラノに行ってたんやけど、確かFacebookに、クレジットカード盗まれて、使い込まれた!って投稿してたと思うんやけど…
という、まさかの情報をGET。
これが実際の投稿のキャプチャ画像です(ご本人の了承をいただいて、掲載させていただきます)。
要約すると、
■ ミラノ中央駅で、マルペンサエクスプレス(空港行の列車)に乗る前で急いでいるところをロックオンされる
■ 自分も列車のチケットを買いたいが現金が使えないので、クレジットカードを使わせてくれと、20ユーロ紙幣を渡される
■ クレジットカードで購入することを試すが、何度やっても、どのカードを試しても買えない
■ 買えないところ「ちょっとカード見せて」とカードを男に手に取られ、ここで同じ色、同じカード会社のカードだが別人のものにすり替えられた
ということになります。
「これ、どう考えても同一人物じゃないのか…」と思ってしまいますよね!
この手口で荒稼ぎをしている人間が複数いて、グループが存在している(日本の特殊詐欺でも同じようなことですよね…)可能性もありますが、あまりにもタイムリーで手口が一緒なので同様の被害にあった男性にコンタクトを取って情報をお互いに共有することにしました。
すると声をかけてきて、クレジットカードを盗んでいった男の特徴は、私のものとほぼ一致。
身長180~190cmぐらい、体重90kg前後で、太っているというよりは体格が良くて「デカい」という印象。
白Tシャツにジーンズがチノパン、ネルシャツ羽織ってキャップをかぶった、清潔感のある旅行者風…。
かつ投稿には書かれていなかったのですが、実際には「マルペンサ空港で、知り合いのタナカさんが…」みたいなこともこの男が言っていたということで、たぶん同一犯だろうという確信が深まる一方です。
この男性の場合、ミラノ中央駅からマルペンサ空港に行き、そこでお土産を買おうとクレジットカードを出したところ、「あれ、暗証番号が違う? んなわけないやん!」とカードを見たら「自分のカードじゃない…!」ということに気づいたので、発見がすり替えから1時間後と早かったのですが…、それでもなんとすでに20万円ほど使われていたとのこと…。
気がついてすぐに、カード会社に連絡をし、使用を止めることはできたものの、警察に届け出をすることは時間の都合であきらめたそうです…。
確かに…、大金はたいてフライト変更することもできないし、仕事の都合なども考えたらそのまま日本へ帰国する…という判断になってしまいますよね…。
同様の手口は2年ほど前からミラノで確認
在ミラノ日本国総領事館のwebサイトを見ると、実はこういった手口は2年以上前から確認されているということのようです…。
ミラノ中央駅でもそうですし、私の場合は公衆電話で、かつカードのすり替えでしたが、マルペンサ空港でもチケットを買ってほしいと誘導し、クレジットカードをスキミングした上で不正利用された、ということもあったようです…。
⇒在ミラノ日本国際総領事館ページ(1)はこちら
⇒在ミラノ日本国際総領事館ページ(2)はこちら
どちらも犯人像の特徴は、私たちをカモにした男と合致します。
黒人男性、身長180cmぐらい、大柄で旅行者風、身なりは整っている…。
すべて同一犯だとしたら、この男、2年以上ウハウハなわけですね。
かつ、2年以上もこの手口で食べているのだとしたら、すり替えの技術も向上するのは間違いありません…悔しいですけれど…。
とにかく巧妙すぎる手口!
私の翌日に同じ被害に遭った男性の目撃談によると「その男はパンパンに膨らんだ財布を持っていた」ということです。
私が思うに、この財布の中には札束がうなるほど入っているのではなく、今までにすり替えていった数々のクレジットカードがたくさん入っているんだと思います。
先に挙げた、在ミラノ日本領事館からの情報でもわかるように2年以上に及ぶ犯行からゲットしたクレジットカードはきっと数知れず…。
ターゲットの人間が持っているクレジットカードと同じものを出してすり替えるのは、もうお手の物となっているんでしょうね…。
でも、何が一番巧妙って「ターゲットにされる人間がイタリア出国前で急いでいる人間」というところです。
つまり、この男がカードを盗んでガンガン使っても被害に遭った人はイタリアから離れて日本に戻っている…。
イタリアの警察に即座に被害届を出されるということは確率として非常に低いわけです(警察への被害届は本人が出さないといけない)。
私も実際ミラノまで再度行って被害届出そうかとも思いましたが、往復するだけでも最低十数万円はかかるだろうし、すでに73万円、なけなしの貯金が吹っ飛ぶことになっている状況。
これでは流石にミラノへ再び飛ぶ覚悟はできませんでした…。
ということは、彼がターゲットにしているのは、きっと律儀で親切な日本人がメインで、ヨーロッパの国の人などはそもそも相手にしていないはずです。
EU圏内の人間であれば、盗難がバレた場合に被害届をすぐに出される=足がつく可能性も高いですし「そもそもヨーロッパの人たちはこんな手口に引っかからないんじゃないだろうか…」と、私は推察しています。
でも、この男が私のクレジットカードを利用した日時と場所は分かっているわけですから、すべての監視カメラの映像などを確認してもらい、ミラノ中央駅やマルペンサ空港で張り込みをすることで、この男を捕まえられることは夢物語ではないように思うんですよね…。
ただ、私1人の力ではミラノ警察も動いてくれそうにないので、同じような被害に遭っている方がいるのであれば(しかも、みんな泣き寝入りしてしまったのであれば)、みんなで協力してどうにかしたい…! と思ったりもしているのです!
なんなら「この極悪人を実際にとっちめるまでをルポする」というような企画をテレビ局に持ち込んででも、「この男をとっちめることができないだろうか…」と夢想したりもしています…。
ほんまに、お金と時間が許すならば私個人的にまたミラノへ行って、「マルペンサ空港に向かう焦った旅人になりすましてヤツが登場するのを待って引っかかる…」という潜入捜査やりたいんですけれど!
クレジットカード会社との交渉の全貌をお見せします
というわけで、ここまではクレジットカードを盗んでいった犯人が「どれだけ常習犯で甘い汁を吸ってきているか…」を詳しく説明しました。
が、先にも述べた通り、暗証番号で決済をしているために「クレジットカード会社は補償ができない」と告げられてしまった私。
どうにかこうにか、補償をしてもらえないのか方法を探ることに…。
だって、私だって被害者なのに泣き寝入りだけはしたくない!あがく!私はあがいてみせるぞ!
…と、クレジットカード会社にいろいろと尋ねてみることにしました。
何度かにわたってクレジットカード会社の担当者と長い長い電話を繰り返しましたが、その内容をほとんどすべて、そのままお見せいたします(文言や言い回しは簡略にしております)。
※Qは私の質問、Aはクレジットカード会社の回答です。
Q.決済の情報を教えてほしい、間違った暗証番号を入力した可能性は?
A. 暗証番号は一度も間違って入力されていない。
Q. 正しい暗証番号を使っていたのなら、カード情報をスキャンして使われるという可能性はないのか?
A.クレジットカードから暗証番号を読み取るということは技術的に不可能。
Q.それではなぜ正しい暗証番号を使って決済ができたのか?
暗証番号の入力は私の過失であることは証明できないのでは?
A.証明はできなくても、決済に暗証番号を使ったということは、カードホルダーに過失があるという認識になる。
Q.過失であることを証明できないのに、その責任を私が負うことになるのはなぜ?
A. 証明はできなくても、決済に暗証番号を使ったということは、カードホルダーに過失があるという認識になる。
Q.カードの規約がすべてであることは分かるが、少なくとも犯罪に巻き込まれてたということが事実であるため、も調査等してもらうことはできないのか?
A. 今回の場合、現地警察から要請などがあれば協力はするが、クレジットカード会社主導で調査は行わない。
Q. 本人が現地におらず、本人の使用ではないことが証明できるにもかかわらず、カードホルダーである私の責任とすることは、カード会社の理念に適合しているのか?
A.とにかく暗証番号で決済されているので、第三者が使用していようが、それはカードホルダーが支払いの責任を負うという規約のとおり。
Q. 利用限度額は70万円に設定されているにもかかわらず、それを超えた額の請求となるのはなぜ?
A.限度額を超えても、本人の利用であれば請求をし、カードホルダーが支払いの責を負う。規約にもそう明記されている。
Q. ミラノで不正利用された分の明細を時間軸で辿っていったときに、店舗R(画像1のNo.13)で使用する前に63万数千円の利用合計額になっており、店舗Rの7万いくらをたすと、70万円の利用限度額を超えたことになる。私が承認となっている利用分全額の支払いの責を負うということになったとしても、私としては、63万数千円の分から以降の不正利用分については、支払いたくはないのだが…。
A. 利用限度額を超えても、本人の使用であれば請求をすることになる。今回は暗証番号での決済になるため、本人の使用とみなしている。
Q. 利用限度額設定がそもそも無視されていることになり納得できない。
A.あまりにも利用限度額を超える使用があった場合は、カード会社に連絡がくることになり、使用ができないということもある、今回の場合も、限度額を超えてから、大きい額の決済分については不承認となっている。
Q. 利用限度額を超えて、大きい額の支払いについては不承認になっているようだが、数百円や数千円単位のものは承認になっているのも納得いかない。
A. 利用限度額を超えても、少額の利用については、カード会員の利便性を考え、承認がおりるようになっている。
Q. 規約には「暗証番号の管理について、会員に故意または過失がないと当社が認めた場合はこの限りではない」という文言があるが、御社に認めてもらうためにはどういうことが必要か?
A.それについては当社から答えることはできかねる。
悔しいことに、クレジットカードの決済が暗証番号で行われているということが分かった瞬間、クレジットカード会社としては、カード会員である私には協力することはおろか、同情することすらしてくれません。
とにかく「規約がすべて」ということになるのです。
ちなみに、クレジットカード会社によって対応は多少異なるかとは思いますが、とにかく「暗証番号での決済」についての第三者の利用は、どこのクレジット会社でも補償をしてくれることはまずない、と考えておいた方がよさそうです。
今回私が交渉しているクレジットカード会社は、誰でもその名前を知っているレベルの最大手と言ってもよい会社なのですが、大手でしっかりした会社でこの対応なのですから、たぶんどの会社でも同様の対応をされることになるのかと…(担当者レベルで物言いがより柔らかいか、機械的か、ぐらいの違いはあるかもしれませんが)。
反対に、いわゆる大手ではないクレジットカード会社であればどういう対応になったのか、というのも気になるところではありますが…。
地元(日本)の警察、消費者センターやクレジットカード協会、そして弁護士にも連絡
ちなみに「私のクレジットカードは盗まれたうえで不正に利用された…」つまり犯罪に巻き込まれたというわけですから、警察にも届けるのが筋です。
というわけで、まずは地元の最寄りの警察に電話してみました。
事情を説明すると、「う~ん、ちょっと実際に被害に遭ったのはイタリアということですから…こちらの警察で被害届を受理するというのは、難しいですね…」と速攻でお断りされてしまいました…。
とある筋からの情報では今回のようなケースの場合、日本でも被害届を受理することが不可能というわけではないんですね。
でも、「被害届を受理したら、少なくとも捜査はしないといけない…でも、こんなケースの捜査、田舎の警察だったら無理だろう…」ということで、断られてしまったんじゃないのかなと思います。
かつ、警察によっては受理してくれるところもあるかもしれませんので、まずは日本の警察にも相談はしてみることは大事だと思います。
さらに、クレジットカード会社の冷たい対応に涙しながらも、藁をもすがる気持ちで最寄りの消費者センターにも電話をしてみました。
そうしたら「『JCCA 日本クレジットカード協会』に電話してみたらどうでしょうか? 」と言われ、さらに電話を…。
日本クレジットカード協会にも事情を説明すると、彼らの口から出てきたのも「ああ…暗証番号を使われたということなんですか…」と同情がいっぱい感じられる声で、申し訳なさそうに「規約で暗証番号を使った決済については補償の対象外…っていう文言がある通りで、第三者の利用でも暗証番号の決済となると、これはかなり難しいんですよ…」と言われてしまいました。
やっぱり…。
「なら、弁護士にもダメもとで相談してみるか!」と考え、『弁護士ドットコム』というサイトを発見し、まとめて見積り(無料)に相談をアップ。
すると、1人の弁護士さんからアプローチがあり、メールでやりとりしながら相談することにしました(メールでの相談も無料とのことで、ありがたいかぎりでした)。
人生初!弁護士さんに依頼する
裁判で争うというのではなく、裁判外交渉というかたちで弁護士がクレジットカード会社と交渉を行うということ。それで折り合いがつかなければ、訴訟という方法もとることができる
という回答をくれた担当の弁護士さん。
そもそもの見積もりとしては、着手金として15万円に成功報酬として支払額の減額分の20%という提示があったのですが、この条件でお願いしても「結局私がすべて不正利用分の支払いをしないといけない…っ」てなったときは、クレジットカードの不正利用分73万円にプラスして、弁護士さんに着手金15万円も支払わないといけない…。
と思い、単刀直入に弁護士さんに「このケースで、私に勝算はあるんでしょうか?」と尋ねてみることにしました。
すると、弁護士さんからも正直なご意見が…。
正直に言うと、どのような手口でクレジットカードがすり替えられたのか、いつどこでそのクレジットカードが使われたのか、などの事実が仮に裁判で認められたとしても、過失が否定されることはかなり難しいと思います
とのこと…。
そうですよね…、誰も目撃者もいないわけですし「私が暗証番号を知られるような行為は絶対にしていない!」ということを「どうやって立証するんですか???」という話になりますよね…。
しかも裁判まで持ち込むとなると、それには膨大な時間もお金もかかるわけです…。
訴訟まで持ち込むのはそもそも現実的じゃない。
「じゃあ、弁護士さんにお願いするのも頼み損になるならあきらめようか…」と思ったとき、この弁護士さんからある意味アメリカンなオファーが!
着手金はゼロで、成功報酬を50%というたちでもよろしければ、裁判外交渉をさせていただきます。望み薄というのが正直なところですが、できれば支払額を半額にすることができれば…と思っています。減額ができなければ、一切費用はいただきません
とのこと。
私だけの交渉では、もはやクレジットカード会社とのやりとりは無意味…と思っていたときのことだったので、どっちみちこのまま泣き寝入りしても73万円の出費は確定しているんだから、その額を少しでも減らすことができる可能性が1%でもあるんだったらお願いしようかな、とこの弁護士さんに望みを託すことにしました。
弁護士さんの作戦とは…?
そこで再度、私ももう一度、クレジットカードの規約をチェックしました。
確かに、規約の第8条のマーカー部分には「暗証番号が使用されたときは、会員(クレジットカード名義人)が一切の債務についての支払いの責を負う」と明言されています。
うう…苦しい…。
でも、一筋の光が見えたように思えたのは、次の規約内の文言。
第14条の(6)に、「暗証番号の管理について、会員に故意または過失がないと当社が認めた場合はこの限りではありません」と書いてある!
じゃあ、ここを証明するしかない! …でも、証明する方法がない…。
私が連れて行かれた公衆電話の周囲には、その当時、他には人っ子一人おりませんでした…。
つまり、目撃者は皆無。
なので、私自身の証言しか、検討材料はないということです…。
ここでかなり厳しいな…というのは感じました…。
でも反対に、私に過失があったということは、クレジットカード会社でも証明できない、ということになるわけですよね…!
弁護士さんも同様に考えているようで、「暗証番号の管理について過失はなかった」という主張に絞るべきだということになり、クレジットカード会社に通知書を送ることになりました。
ただ、私としては暗証番号をクレジットカードから抜きとることは技術的に無理だ、というクレジットカード会社の論点に
どんなスーパーハッカーが関わっても、本当に100%絶対無理ですって言えるんですか???
なんてことも言いたかったりしたんですが、弁護士さんとすると
あまりにも荒唐無稽な論点を持ち出すと心証がよくないので…
ということを言われてしまいました。
ただ、私自身が弁護士さんの申し出にどうしても首を縦に振ることができなかったのが、
公衆電話で実際に暗証番号を入力した、ということも認めたうえで、通知書を作りませんか?
ということでした。
「入力してしまったけれど、それは相手の巧妙な手口によるものであるから、過失はない」という主張の方が可能性はあるというのが弁護士さんの考え方です。
でも、私自身、暗証番号を入力したかどうかも本当に記憶に残っていないし、入力したことを認める文言を通知書に書いてしまうと、私自身の過失を認めることになるように思ったので、それだけは「暗証番号を入力したか否かについての記憶は定かではありません」という記載にとどめることにしました。
私個人的には
利用限度額を超えても使用されていて、ミラノでの不正利用分と自分がそもそも利用している分と合わせて82万円の支払い請求がきていることに納得がいかないんですけど!
ということも相談したら、
クレジットカードの限度額の定めは、クレジットカード会社のために設定されるものであり、カード規約の内容からこれをメインとして争うことは難しいように思います
との弁護士さんからの返答…。
結局文面は、
■ マルペンサ空港にて面識のない外国人男性から、クレジットカードを使用させてほしいという申し出に応じることにし、公衆電話にクレジットカードを差し入れ、利用させた
■ 電話機に暗証番号を入力したか否かについての記憶は定かではないが、男に暗証番号を教えたり、カード自体に暗証番号を記載などはしていなかった
■ 男が一旦カードを手にして、こちらに返却した際に、別のカードにすり替えたものと疑われる
■ この盗難被害に気づいたのはイタリア出国後だったため、イタリアで被害申告をすることは不可能だった
■ 犯人の巧妙な犯行手口によりカードがすり替えられ、かつ暗証番号が漏洩していることから、直ちに通知人(私)による暗証番号の管理に過失があったということはできない
■ 加えて、通知人は4月23日に日本へ帰国しているにも関わらず、それ以降も同カードがイタリア国内で利用されていること、その利用について多数回にわたり不承認となっていることからすると、同カードの利用は犯罪に利用されたものであることは明らか
■ 以上から、4月23日から30日までの間に利用された計73万0234円の利用については、クレジットカード会社会員規約第14条1項で定める盗難による補償を求める
というような内容にまとめていただきました。
あくまでも、今回の交渉で過失の有無を判断するのはクレジットカード会社になるのでカード会社と敵対するのではなく、あくまでも「補償をお願いします…」というスタンスでいくというのがポイント。
荒唐無稽な主張や個人的かつ感情的な言い分は排除して、簡潔にお願いしたわけであります。
この通知書を弁護士さんからクレジットカード会社の担当者に郵送し、数日後にカード会社の担当者から連絡があり、「確かに通知書は受け取りました。この件について社内で協議するのですが、少しお時間をいただくことになりますので、一旦海外利用分についての支払は保留とさせていただきます」という回答となりました。
まだ、現時点では支払い期日が延びたことになっているだけで、今後どうなるかはまだ分かりません…。
でも、少しでも補償してもらえることを祈りながら、この原稿を書いている状況です。
スキミングされた友人の体験談
別の友人もイタリアでクレジットカード被害にあっていました。
彼女の場合は手元に自分のクレジットカードはちゃんとあるにも関わらず「半年間ぐらいにわたって合計100万円ほど使い込まれていた」ということ。
どこかのお店で渡したクレジットカードを「何かしらの方法で情報を読み取られ、取得されたクレジットカード情報が不正に利用されていた…つまりスキミング被害に遭った」ということだったらしいのですが…。
今になって思い返しても「それがどこのお店で情報を盗られたか」というのは分からないそうです。
さらに被害額が大きくなったのは、そのクレジットカードが普段全く使わないレベルのカードだったらしく帰国後もずっと明細を確認しないままの状態で放置されていたのが理由。
いざ、確定申告の段階で書類を揃えようとなったとき「クレジットカードの明細に全く身に覚えのない利用が上がってきている…!」ということに気づき、すぐにクレジットカード会社に連絡をしてカードを止めたそうです。
ところが…!不正利用であることは証明されたものの、なんと補償の範囲となるのはそのカード会社への連絡からさかのぼること2カ月分のみ…。
この条件についても、どのクレジットカードの規約にも明記されているのですが、カードを止めてから約2カ月前までのものしか補償してもらえません。
彼女は結局、補償の対象外となった不正利用分について、約50万円の支払いをしなければならなくなったそうです…。
冷静かつ冷酷になれ
今回、実際に自分がこういったクレジットカードの盗難・詐欺の被害に遭い、身近な友人たちも同様に被害に遭ったことが分かったことで「どこでも誰でも、こういった被害に遭う可能性はある」ということは身をもって体感しました。
不正利用された70数万円について、まだあがいている途中ではありますが「結果的には私が支払わなければならないであろう」という覚悟もできています(あきらめの境地、のようなものですが)。
70数万円は決して小さい額ではありませんし、もともと貯金などほぼ皆無の私が本当に今までコツコツと貯めてきていたなけなしの貯金がほぼすべて吹っ飛ぶ(お恥ずかしい話ではありますが…)レベルの出費です。
「70数万円あったら貧乏海外旅行に2回か、下手したら3回行けるやないか…」などと考えだしたらもっと悲しくなってきます…。
でも、悔しいですけれど「高い授業料と思って支払うしかないな」と思っています。
「拉致監禁されて、ボコボコにされた挙句に身ぐるみはがされてどこかに売られて臓器まできれいに売買されました…」というような凄惨な犯罪に巻き込まれなかっただけでもまだよかった、という風に考えて「命は助かってよかったなぁ、また家族に会えてよかったなぁ」と思うようにしています。
悔しいのは、私も私の翌日に同様の被害に遭った男性も「英語がしゃべれることが仇となってしまったこと」、そして「親切心につけこんだ詐欺被害にあったこと」です。
いわゆる“ジプシー系”の人間が「イタリアの主要な駅のチケット売り場で小銭稼ぎをするような形で数ユーロとか十数ユーロをだまし取る」というようなことは聞いたこともありましたが、私の場合は身なりも小ぎれいでフレンドリー、英語も流ちょうにしゃべる男でしたから「犯罪者は見た目では判断できない」ということも身をもって痛感しました。
ここ最近日本でも「オレオレ詐欺」が巧妙化して劇場型と言われるような架空請求詐欺や還付金等詐欺などの特殊詐欺も横行していますし、とにかく冷静になることがまず大切です。
さらに、海外に行ったときはスパイ映画やサスペンス映画のキャッチコピーではありませんが「もう誰も信用できない」ということを念頭に置いておかないといけません。
正直言って、人助けを頼んでくる人をむげに断る…なんていうことは、人間としてもってのほかの行為だと思います…。
でも、それぐらいの冷酷さを持ち合わせていれば、私も今回のような被害には遭うことはなかったはずなのです。
「日常生活で不親切になれ」というわけではありませんが、「怪しいな…」と思うようなときには冷静というよりは冷酷になることが自分の身を守る一番の方法となることは間違いありません。
冷静であれ、そしてときには冷酷であれ!
世の中には、本当に多種多様な犯罪者や詐欺師が存在することは、まぎれもない事実なのですから…。
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